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狙われた村

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狙われた村

リアクション

 東班の班長となったヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は、キャラと共に、若葉分校の番長である竜司と分校生達と合流をし、状況の確認をし合った。
「協力お願いです」
 ぺこりと頭を下げてお願いするヴァーナーに、竜司は「もちろんだぜェ」と頷いて、分校生達に声をかけていく。
「てめぇら、ここで頑張れば後で村の女や百合園の女たちに「あーん」ってドーナツ食べさせて貰えるかもしんねぇぞ」
 竜司のその言葉に、暴れていた分校生達から「おー!」と声が上がっていく。
 分校生と竜司の手により、既に十数名の盗賊が捕らえられていた。
「怪我した人は、入り口に戻るです。手当てするですよ!」
 ヴァーナーは分校生達にそう声をかけた後で、白百合団員達に指示を出していく。
「村の人たちに、ひなんしてもらうです。倒れている人たちは運ぶです。わるい人はやっつけるです」
 ヴァーナーの指示に返事をして、白百合団員達は分校生達と協力して救助活動に動く。
「庭で倒れている人がいますわ」
 空飛ぶ箒で上空から村の状況を確認していたセツカ・グラフトン(せつか・ぐらふとん)が、声を上げる。
「助けるです!」
 すぐにセツカが導く方へと、ヴァーナーと班員達は向かっていく。
「塀の裏に盗賊がいるですわ!」
 ディテクトエビルで、感じ取った場所をセツカが指差す。
「とうこうしてくださいです!」
「くっ……」
 白百合団員達に追い詰められた盗賊は、ナイフを放ってきた。
 ナイフはヴァーナーの腕に傷をつけた。
「こうげきやめてくださいです」
 痛みを我慢しながら、ヴァーナーはシーリングランスで盗賊の技を封じる。
 即座に白百合団員達が飛びかかって、縄で縛っていく。
「しっかりするですわ」
 セツカが倒れている村人を清浄化で解毒する。
 盗賊は分校生達に任せ、村人を白百合団員達が抱えて運んでいく。
「な、何が起こってるんだ……っ」
 近くの家から、弱弱しい声が響いてきた。
 家の中には、苦しげな表情の青年の姿があった。
「盗賊の襲撃ですわ。ご家族と一緒に、東の村の入口へ逃げるのですわ!」
「眠る薬まいているようです。大きく吸い込まないよう注意するです!」
 セツカ、ヴァーナーの説明を受け、青年は家の中の家族に声をかけていく。
 白百合団員はヴァーナーの指示の元、その家族をサポートしていく。

〇     〇     〇


「――何。この甘い匂い……なんか眠気」
 パートナー達と遊びにきていた高務 野々(たかつかさ・のの)は、宿を出た途端、軽い眠気に襲われた。
「……あたしだけじゃない。何らかの異変ですね」
 同じくエルシア・リュシュベル(えるしあ・りゅしゅべる)も眠気を感じており、周囲を見回してみる――と、倒れている村人の姿が目に映った。
「メイドが人前で無様に寝るなど――はしたない!」
 野々は大声を上げて、気合で抵抗していく。
「野々……はしたないとか言ってる場合ではないでしょう」
 エルシアは少し呆れ顔だ。
「いまさら眠気なぞほとんど感じぬのに……ああ、魔術の類か、薬かのう……まあ、我慢できぬほどのモノではないのう」
 英霊のアリエノール・ダキテーヌ(ありえのーる・だきてーぬ)はそう分析した。
「……なんだか、ぽわぽわするよ? ん……ドーナツ……くぅ」
「ニクス!」
 ハーフフェアリーの子供である、ニクス・スティーリア(にくす・すてぃーりあ)が倒れ掛かる。
 急ぎ彼女を野々が抱きとめた。
「とにかく宿の中に戻りましょう」
 ニクスを抱き上げて、野々は宿の中へと戻る。エルシア、アリエノールも彼女に続いて宿の中に入った。
 宿は静まり返っている……従業員も客も眠ってしまっているようだ。
「エルシア、毒が含まれているかもしれません」
「ええ、ニクスにですね」
 エルシアはニクスにキュアポイゾンをかける。
「私も診ます」
 野々はナーシングでニクスを癒す。しかし外から入り込んでくる薬かなにかの影響があるため、癒してもあまり効果がないということに気付く。
(かぁさまの匂いがする……暖かい)
 心配をよそに、ニクスは目を閉じたままふわりと笑みを浮かべていた。
「既に周囲は危険なようですね」
 禁猟区でエルシアが感じ取る。
「エルシア。私が出ます。背中は預けます」
 野々はそう言い、ニクスをアリエノールに預ける。
「ニクスとエルシアを頼みますね」
「ニクスには耐えられんようじゃな……相判った。ニクスは任せるが良い」
 アリエノールがニクスを受け取る。
「わらわの力、心おきなく使うといい」
「ん、おねぇちゃん……頑張って、ね……」
 アリエノールの腕の中で、朦朧としながらもニクスは野々を妖精のチアリングで送り出す。
 野々は頷いて、宿の外へと飛び出していく。
「ちょっとま……理不尽な! もう! ……祝福を!」
 そう言いながら、エルシアは野々を追ってパワーブレスをかける。

 倒れている村人も気になるが、軍人でも白百合団員でもない、遊びに来ただけの野々には自分の後ろにいる者達を守るだけで精一杯だ。
 いや、それさえもできるかどうか。
「私では時間稼ぎで手一杯ですが。精々あがきましょう。至れり尽くせりな家族のために!」
 デッキブラシを手に、野々は宿屋の前に立ちふさがる。
(無いものねだりですが、早く誰か来て下さい……!)
 願う野々の前に、姿を現したのは――残念ながら、盗賊だった。
「掃除、しますよ……っ!」
 剣を抜き、いきなり飛びかかってきた盗賊に、野々はデッキブラシを叩き込む。
 刃は野々の服を切り、ブラシは盗賊の肩を打った。
「百合園生ですわ!」
 そこに女性の声が響いた。空飛ぶ箒で飛んでいたセツカだ。
「わるいことやめてくださいです!」
 すぐに、ヴァーナーと白百合団員達が駆けつける。
 ほっとて、気が抜けかかった野々、盗賊の一撃を腕に浴びてしまう。
「血で玄関が汚れてしまいます!」
 すぐに野々は、ドンと、盗賊の腹をブラシて思い切り突いて飛ばした。
「大丈夫ですか? 良くがんばったです」
 ヴァーナーが野々をメジャーヒールで癒す。
「私は大丈夫です。宿の中にパートナー達が……」
 言った途端、野々は強い眠気に襲われた。
 しかし、パートナー達と合流し、救護班の元に避難するまで、強く意思を持ち意識を保ち続けたのだった。

「早く、こちらです!」
 百合園女学院の非常勤講師であるオルレアーヌ・ジゼル・オンズロー(おるれあーぬじぜる・おんずろー)は、事態を察知し、裏口から宿の主人や宿泊客を納屋に避難させていた。
 入った途端、主人や客達は眠りに落ちてしまう。
「何か使えそうなものは……」
 オルレアーヌは納屋の中にあった、竹箒を手に取る。
「草刈用の鎌がありますわ」
「鉈や工具もあります」
 パートナーのティルレア・ワグナス(てぃるれあ・わぐなす)と、久坂 玄瑞(くさか・げんずい)も武器になりそうなものをそれぞれ手にとっていく。
「目的は、村人自身に危害を与えることではなく、盗みでしょうから、わたくし達も寝た振りをすべきかもしれませんね」
 小声で言い、玄瑞はティータイムの能力で体力の温存に努めながら、神経を研ぎ澄ませる。
 ハーフフェアリーのティルレアは、高窓の方に飛び、外を伺う。
「こっちに来ますわ」
 ティルレアの小声の報告に、無言で頷いて、オルレアーヌは箒を構え、ドアの側に立つ。
「あ……っ、意識を失っている女の子を抱えていますわ」
 その言葉を聞いたオルレアーヌは急遽納屋から飛び出した。
「無茶です」
 寝たふりをしていた玄瑞が飛び起きて、彼女の後に続く。
「待ってください。その子ではなく私を連れて行ってください。寝ている子を運ぶより簡単でしょう?」
 オルレアーヌが子供を運び出そうとする盗賊に向かっていく。
「なんだ? いいぜ、お前も連れてってやる!」
 女の子を下ろし、盗賊の男は棍棒を手にオルレアーヌに襲い掛かってくる。
「私もいますわよ〜! 彼女より珍しいですわよ」
 窓から飛び出したティルレアが男の視界に入るよう飛びまわる。
「させません!」
 男が気をとられた隙に、飛び出た玄瑞がチェインスマイトで薙ぎ払う。
「大丈夫、峰打ちですよ」
 ナタで鋭い一撃を浴びせたが、急所は外してあった。
「こっちにも誰かいるぞー!」
「おおー。助けに来てやたぜ、若葉分校のモンだ」
「礼はたんまりいただくぜ〜、お嬢さん方」
 そこに、不良達があくびをしながら駆け寄ってくる。……敵ではないようだ。
「若葉分校生の方々、ですか。講師をされているというムッシュー・ゼスタとお会いしてみたいものです」
 オルレアーヌは、ふうと息をつく。途端、気が抜けたこともあり眠気に襲われる。
「助かったようですね」
「無事で良かったですわ」
 急ぎ玄瑞とティルレアが駆け寄って、彼女を支えた。

「賊の噂は聞いてましたが、まさか自分が巻き込まれるとは……」
 志方 綾乃(しかた・あやの)は、パートナーの天衣 無縫(てんい・むほう)と共に、ドーナツ店で出来立てのドーナツを購入したところだった。
 窓が開いていたため、流れ込んだ薬により店主や客達は既に眠ってしまっている。
 眠気を堪えつつ、窓から外の様子を伺っていた。
「薬を散布して村ごと略奪……のようですね。しかも、この薬には微量ながら毒性もあるみたいです。ウチのシマで勝手を働くとか、いい度胸じゃないですか」
 分析を終えた綾乃はドアの方へ向かっていく。
「ちょっと、綾乃ちゃん? そんな装備で一人で戦うつもり!?」
「……犠牲を最小限に抑えます」
 無縫にそう答えて、綾乃は店から飛び出した。
「綾乃ちゃん……! ボクも行くよ。まだ役に立てないかもだけれど」
 無縫は綾乃の後を追って、慎重に店を出る。
 足手まといになってしまう可能性があるため、綾乃とは少し距離を置き、背後を守ろうとする。
 綾乃も敵に飛びかかっていったりはしない。
 隠行の術で姿を隠し、敵に見付からないよう村の中を巡り、薬の発生源を探していく。
 探し始めて数分後、大きな消火器のような噴射機を背負った男を発見する。
 綾乃は側面から近づいて、アウタナの戦輪で攻撃。頭を打ち気絶させる。
「なんだ!?」
 散布をしていた男の他に、もう1人男が側にいた。
「眠っててね!」
 他に敵がいないことを確認し、無縫が飛び出しランスで男の背を突いた。
 即座に綾乃が氷術を発動し、男の足を凍らせる。
「ぐ……っ」
「この人達どうしよう。ボクらを探して、村を虱潰しに破壊されたりしたらマズいよね」
 言いながら無縫は、意識のある男の口を塞ぐ。
「金目のものがなさそうな、物置にでも入れておきましょう。散布している賊はこの1人ではなさそうですから、構っていられませんし」
 綾乃は拳を叩き込んで、意識のあった男を眠らせる。
 そして2人で男達を近くの物置へと運ぶ。
「……どなたかが、村に訪れたようですね、盗賊側ではないようです」
 遠くに若葉分校生の姿が見えた。
 綾乃はほっと息をつき、この辺りで散布していた者と機器を押さえた旨、説明に向かう。

「何だこの眠気はー!」
 ドーナツ作りの体験を行い、出来上がった沢山のドーナツを食べようとしていた御剣 紫音(みつるぎ・しおん)とパートナー達にも、眠気が襲い掛かっていた。
 頭を振ったり、会話をして眠気を払っていた紫音達だが、様子がおかしいと気付いていく。
「村の方々、倒れとる?」
 ドーナツを食べようと口を開けた状態で、綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)が首を傾げた。
 突然倒れたというより、皆ゆっくり眠りに落ちていったので机につっぷして昼寝でもしているのだろうかと思っていたのだけれど……。
「どうやらそのようじゃな!」
 アルス・ノトリア(あるす・のとりあ)が立ち上がる。遠くに、武器を携えた者達の姿が見えた。
「ならず者のようじゃ。我が主、弱き者を護りましょうぞ」
 アストレイア・ロストチャイルド(あすとれいあ・ろすとちゃいるど)が、眠気を振り払う紫音の肩をポンと叩く。
「盗賊か!? 許すまじ」
 紫音は、机を叩いて立ち上がる。
「我、魔鎧となりて我が主を護らん」
 アストレイアは魔鎧へと姿を変え、紫音の体を覆う。
「番長、こっちにもいるぞー!」
「お宝はなさそうだけどね〜。金で出来たドーナツとかないかしら」
 魅世瑠ヴェルチェら、若葉分校生達が駆けて来る。
「パラ実生か?」
「百合園の制服を着た人もいますぇ」
 紫音と共に、盗賊の下へ走りながら風花が言った。
「挟み撃ちじゃな」
 アルスが、盗賊に向けてバニッシュを放つ。
「わらわの楽しみを邪魔するとは許さんのじゃ」
「ぐっ、斬り倒せ!」
 光の攻撃を受けた盗賊達が一瞬怯む。そして軽く周囲を見回した後、数の少ない紫音達の方へと飛びかかってくる。
「盗賊ども、退かぬならお前らに恐怖を叩き込んでやる」
 紫音は、龍騎士のコピスを両手で振り上げた。
 盗賊達は、巨大なその剣に驚き、紫音を避けようとする。
「村人を襲うなんて許しませんぇ」
 村人に近づいた盗賊を、風花が奪魂のカーマインを撃って倒す。
「我が主、攻撃は防いでみせようぞ!」
「ああ!」
 アストレイアを纏った紫音は、武器を持つ盗賊の下へと跳び、剣を叩き下ろして倒す。
 盗賊が突き出した剣が胸を掠めたが、大してダメージを受けなかった。
「おーし、捕らえるぞ!」
「あらあら、しょうがないわねぇ」
 魅世瑠が盗賊をふんじばっていくが、共に駆けつけた若葉分校生達は薬の影響でふらふら状態だった。
 ヴェルチェは優しくベシベシッと叩いて起こしてあげるのだった。
「入り口で、白百合団が救護活動をしていますぅ」
 伝令をしているキャラ(伽羅)が、紫音達に簡単に状況を説明する。
「それじゃ、倒れている村人優先で運ぶぞ!」
「了解どす」
「そうじゃの」
 紫音の言葉にそう返事をして、風花とアルスは倒れている村人を担いでいく。
 その先に、盗賊がまた数人姿を現す。
「まだいるようだな」
「我が主、お供しますぞ」
「ああ、いくぞ!」
 紫音はアストレイアと共に盗賊の下に走るのだった。