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モンスターの婚活!?

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モンスターの婚活!?
モンスターの婚活!? モンスターの婚活!?

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 そして決着はついた。
 武装したパラ実生10人、および、同じくパラ実生として協力していたリリィ・クロウは生きたままロープで捕らえられ、用心棒として彼らに雇われていた辿楼院刹那はいつの間にか姿を消してしまっていた。
 その刹那と3対1で戦っていたにもかかわらず、目的を果たせなかった霧雨透乃、緋柱陽子、月美芽美の3人は非常に欲求不満であった。
「あ〜、ムカつく〜! 結局あの子、いつの間にか逃げたし! こっちは地味にやられてもう散々よ!」
 その言葉を聞いたパラ実生は心で感謝の言葉を述べた。先生、報酬は払えませんでしたが、マジありがとうございます……!
 透乃たちに目立った被害は無かったが、体のあちこちにダガーや刀による裂傷を負わされていた。ひたすら殺すことに夢中になっていた彼女たちはついに刹那の動きを捉えきることができなかったのである。
「ホントにムカついてしょうがないわ! こうなったら、ちょっと気分は乗らないけどこいつらぶっ殺してやる!」
 捕縛されたパラ実生たちに私刑を宣告してやると息巻く透乃だったが、そんな彼女を止める者がいた。
「まあまあちょっと待ちいな。ここれ殺す必要なんてどこにもあらへんで?」
 透乃の腕を掴み止めたのは大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)である。
「こいつらには利用価値があるんや。むしろこんなことで無駄にしとうない」
「うるさいなぁ! 私は殺したいだけなんだよ!」
 泰輔の手を振り払い、目の前のモヒカン男に炎の拳を叩きつけようとする透乃だが、今度はそこに雷の嵐が落ちてくる。それで動きを止められたかと思うと、透乃は前方から強化型光条兵器の槍を、後方から改造エアガンを突きつけられていた。
「透乃ちゃん!」
「懲らしめるだけでも気の毒に思う人もいるんです。あなたのような方に好き勝手されるのはもっと我慢なりません」
「使えるものは何でも利用しないとね。利用できるものを無駄に廃棄処分させるわけにはいかないんだよ」
 陽子の叫びに静かに答えたのはレイチェル・ロートランド(れいちぇる・ろーとらんと)フランツ・シューベルト(ふらんつ・しゅーべると)、先ほどサンダーブラストを発動させたのは讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)であった。先ほどは3対1で透乃の方が勝っていたが、今度は4対1――陽子や芽美を入れても4対3で、こちらの方が分が悪い。透乃はしぶしぶ拳を下ろすことにした。
「そう、そんでええんや」
 透乃が拳を収めるのを見届けると、泰輔がパラ実生に向かう。
「さて、ここからは僕らのターンや。単刀直入に言うわ。君らにはハルピュイアの繁殖に協力してもらう」
 これはすでに出ていたことだが、この泰輔も「今の人質と交換でパラ実生を差し出す」と考えていたのである。良からぬことを企んでいるパラ実生だが、ハルピュイアと「なさぬ仲」にしてしまえば、多少の更生が見込めるのではないかと彼は思っているのだ。
 それを聞いたパラ実生の内、数人は驚愕し、数人は青ざめ、また数人は逆に喜んだ。
「な、なにいいいッ!?」
「ち、ちょっと待て! それじゃあ俺ら、搾り取られちゃうってこと!?」
「む、むしろ歓迎デス!!」
 この考えには彼のパートナーたち――特に顕仁は大賛成であった。
「素晴らしい考えだ。パラ実生も、それが妻ともなればむげにハルピュイアたちを悪しざまには扱えまい。逢瀬の後に恋心が芽生えることもあるでな」
「じ、冗談じゃない! いくらなんでも俺は嫌だぞ! 誰がモンスターとヤるかよ!」
 後に待ち受けているであろう自分にやってくる恐怖を想像したパラ実生の1人が、ロープの戒めを自ら解き放ち、即座に逃走を図ろうとする。
「おおっと、お前の好きにさせるわけにはいかないんだぜ?」
「おぶうっ!?」
 だがそんなパラ実生の眼前に木の棒が突き出された。いや、厳密にはそれは木の棒ではなく、三連回転式火縄銃の銃床部分であった。三船 敬一(みふね・けいいち)が得意とする銃式格闘術の餌食となったパラ実生はその場でまたしても捕らえられることとなった。
「残念だったな、俺も今の話に賛成なんだ。これならお前ら以外、誰も損しないからな」
 捕まっている人は返してもらえるし、ハルピュイアたちは繁殖に困らない程度の雄の子種を入手でき、しかもパラ実生もこれに懲りて密猟などしなくなるだろう。一石二鳥どころか一石三鳥だ。
「さて、今度はこのことをハルピュイアたちに知らせるのと、こいつらを連れて行くってとこだな」
「これだけの人数がおるんやし、運ぶのは問題あらへんやろ。ただ誰がハルピュイアに言うかやけど……」
 敬一と泰輔が悩んでいると、全く別の人間から声がかかった。
「その話だが、俺たちに任せてくれないか」
「……あ、あっ! ま、まさか、二代目総長どの!?」
 やって来た人間の姿を見てパラ実生のリーダーが驚嘆の声を上げる。そこにいたのはパラ実二代目総長の夢野久と、そのパートナーの佐野豊実であった。
「こいつらの不始末は、俺の不始末でもある。ひとつのけじめとして、その案に乗らせてほしい」
「え、ええんかいな。普通やったらここで『自分の顔を立てると思って許してくれ』とか言いそうなもんやけど……」
「どの道『罰』は必要だと思ってたんでね。君らがこいつらを殺さずに捕まえてくれて、むしろ嬉しいと思ってるくらいなんだ」
 パラ実総長とそのパートナーにそう言われては、泰輔にも敬一にも断る理由は無い。パラ実生たちも観念したのか、深くため息をついた。
「……あなたがたは、なぜモンスターなどをかばうのです」
 同じくロープで捕まっていたリリィが久を睨みつけ、激昂した。
「友人を、パートナーを攫われて……。悪いのはどう考えたって向こうじゃありませんか!」
 半泣き状態のリリィに久が確認する。
「おまえ、パートナーがハルピュイアに捕まったのか?」
「そうです! ずっと連絡つかないし、間違いなく攫われたんです!」
「……そのパートナーの特徴は?」
「はい?」
「だからおまえのパートナーの特徴を言えって言ったんだ。電話で確認してやるから早く教えろ」
「……えっとですね」
 言われるままにリリィは自分のパートナーの特徴を教えた。そしてこの後、彼女は驚愕する。
「い、いない……?」
「ああ、おまえの言うパートナーの特徴に合致するのはいないそうだ。捕まっているのはほとんど地球人で、後は英霊が1人いるくらいで……、他にはいないという話だ」
「え、それじゃあ、どうして連絡がつかないんですか……?」
「……携帯が電池切れとか?」
「…………」
 そもそもリリィは「パートナーと連絡がつかない」「もしかして攫われた? いやそうに違いない」と思い込んでこの行動に出た。だが現実は、彼女のパートナーは影も形も見当たらないのだという。
「わ、わたくしの、勘違い……?」
 何も知らないハルピュイアに説教した恥ずかしさと、またしても思い込みで行動してしまった後悔のあまり、彼女の顔は血の気を失い、そしてそのままリリィは気絶した……。

「え、それってどういうこと……?」
 パラ実生を捕縛し、騒動が落ち着いたところでハルピュイアの方から瑛菜に提案がなされた。
「ダカラ、私タチト歌デ勝負シテ、ソレニ勝ッタラアノ雄タチヲ返シテアゲルッテ言ッテンノヨ」
「……マジで?」
「コンナ時ニ嘘ツイタッテショウガナイデショ?」
「ちょっと待って。もしこれであたしらが負けたらどうなるんだ?」
「ソリャモチロン、アノ雄タチハ返サナイッテコトニナルワネ。繁殖ガ済ンダラ返スケド……」
 パラ実生の襲撃から守ったこと、襲ってきたパラ実生を献上することに加え、ジェンド・レイノートがかまっていたハルピュイアの少女からの報告により、彼女たちは譲歩することに決めたのである。
 そしてその申し出は瑛菜にとっても非常にありがたいものだった。最初から彼女はハルピュイアと歌で勝負すると決めていたのだ。自分の目的も達せられる上に、勝負に勝てば人質交換が行われるのだ。瑛菜に勝負を受けない理由は無かった。
「ある意味責任重大、ってわけか……。OK、わかった。その勝負、受けるよ!」
 その時だった。
「ヒャッハァ〜! おめでとう瑛菜! というわけで……」
 聞き覚えのあるかけ声と共に、南鮪がスパイクバイクのエンジンを始動させる。
「機材の調達とかもあるだろうから、俺がひとまず送り迎えしてやんぜ、ヒャッハァ〜!」
 かなり無理矢理な理由付けだがそんなことはどうでもいい。鮪は最初からこの瞬間を狙っていたのだ。
 まず瑛菜に協力する姿勢を見せ、強引についていく。その後は事が落ち着くまでじっと耐える。いきなり歌勝負をするなら「P−KO」を持ち出してハッパをかけるつもりだった。パラ実生との戦闘なら、わざと味方を火炎放射器で誤射するつもりだった。「ハーピー――本当はハルピュイアだが――と合コンさせとけばいいじゃないか」と同類連中に恩を売るつもりでもいた。だがもうそんなことはどうでもいい。チャンスが来た以上、鮪が耐える理由はもう無かった。
 そのままバイクを運転し、瑛菜を誘拐しようと突撃する。
 だがこの大事な場面で、鮪の前に邪魔者が2人立ちはだかったのだ。
「おおっと、そうはお兄さんが許さないもんね!」
「やめろっ! てめえを麗しき乙女たちに近づけさせるわけにはいかねえぜ!」
 鮪を妨害すべく飛び出してきたのは、いつの間にかロープから脱出していたクド・ストレイフと天空寺鬼羅の2人だった。
「あーっはっはっは! 大丈夫だ、てめぇらみんなオレが受け止めてやるぜ!! さぁ! オレの胸に飛び込んでくるんだ! 愛しき乙女たち!!」
 言いながら両手を広げ「乙女」たちを待ち構える鬼羅。
(ふふっ、キマッた! これで争いもなくなり女の子にモテモテ……一石二鳥とはこのことだ!! そしてハーレムエンド……う〜む悪くねぇ、悪くねぇーぞぉおおお!!!)
 だが思い出していただきたい。彼らは冒頭で「イルミンスールの女子寮の風呂をのぞこうとして」どうなったのかを。
 そう、クドはパンツ1枚のみ、鬼羅は全裸である。
「キャーーーーー!」
「変態! 変態がいるわ!! しかも2人も!」
 こういう反応が返ってくるのも当然といえば当然である。
「……クドくん、なんかオレ、ものすごく悲しいんだが大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない。ここでその汚名を返上すればいいだけのことさぁ!」
 言いながらクドはパンツの中に隠してあった拳銃を二丁取り出し、構えた。
「なに!? パンツの中に『三丁』も銃を隠していただと!?」
「俺の股間のマグナムも臨戦態勢――」
「やかましいッ! 汚え男は消毒だー!」
「ぎょえええええぇぇぇ!?」
 目の前で繰り広げられる全裸の変態コンビによる漫才に、鮪はついに我慢がならなくなり、持っていた火炎放射器の炎を全力で浴びせかけた。その後、クドと鬼羅の2人はその場にいた女子全員に袋叩きの刑を受け、さらに重症となったのであった。
「さて、変な邪魔が入ったがもう大丈夫だ! さあ瑛菜! 今度こそ俺と繁殖してもらうぜ〜!」
 気を取り直して再びバイクを動かそうとする鮪だったが、さらに強力な「邪魔」が真上からやって来た。
「必☆殺! ダブル本気狩る(マジカル)ステッキ!」
「ハントッ!?」
 突然、鮪の頭に2本の棒が直撃し、彼はそのまま意識を「狩り」取られてしまった。
 空からやって来たのは、魔法少女にしてアイドルの騎沙良 詩穂(きさら・しほ)。その両手に構えた2本のマジカルステッキが鮪の脳天にめり込み、瑛菜の窮地を救ったというわけである。
「いやあ、危ないところでした☆ 瑛菜ちゃん、大丈夫でしたか?」
「あ、あ〜、うん、まあ……。大丈夫だったよ?」
「それは良かったです♪ 何しろ今の瑛菜ちゃんの格好って、凄くアブナいんですもの☆ 警戒しておいて正解でした」
「…………」
 言われて瑛菜は自分の姿を見直す。なるほど、これは確かに危険だ。思えばシナリオガイドの時点でハルピュイアの攻撃を受けて、全身傷だらけになり服もボロボロになっていた。そしてそのままずっとその状態で動いていたのだ。
 そしてもっと驚きなのは、瑛菜のその状態に言及したのが詩穂だけだったのである。
「……後で代わりの服、調達しなきゃ……」
 今頃になって恥ずかしさがやって来る瑛菜であった。
「さて、今から歌の勝負、ということですが――」
 詩穂が全員を見渡し、「告知」を行った。
「勝負のための場を用意したいのですが、多分機材運びなどで時間がかかると思います。ですから皆さんにはそれまで、ハルピュイアの方々と交流を深めていていただきたいと思います☆」