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カノン大戦

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第19章 カノン、告白される

「ふう。ここは?」
 意識を取り戻したカノンは、砂浜に横たえられていた身体を起こした。
「あっ、想い出しました! 私は、汚らわしい男に乱暴されて!!」
 カノンは、いっきにテンションを上げて、攻撃態勢で周囲を見まわした。
 すると、少し離れた場所に横たわっている国頭武尊(くにがみ・たける)の姿が目に入った。
「ああ、もう死んじゃったみたいですね。安心しましたよ。アハハハハハ!!」
 血まみれの国頭をみてホッとしたカノンは、一転して愉快げな笑い声をあげ始めた。
「アハハハハハハ! 作戦成功ですね!!! みんな、よくやってくれました!!!! 最高のバトルでしたよ!!!!」
 笑いながら、カノンは砂浜を裸足で駆けて、入り江の方へ向かっていく。
「あっ、カノン、待ってくれ!」
 平等院鳳凰堂レオ(びょうどういんほうおうどう・れお)が、慌ててその後を追う。

「おい、国頭の容態が急変したぞ。さっきまで息が続いてたんだが、今度こそ死にそうだ!!」
 生徒たちは、胸から血をしぶかせている国頭の周囲で、顔をみあわせた。
「おそらく、カノンのパンツを握ることでパンツエネルギーを得て、辛うじて生命をつなげていたんだな。パンツがなくなったから、パンツエネルギーも尽きているんだ!!」
 誰かの言葉に、全員がうなずく。
 肉体が崩壊してもパンツエネルギーで生きることができるとは、国頭恐るべし、であった。
 だが、その国頭も、生命が尽きようとしている。
 もはや治療しようにも間に合わず、国頭は、そのまま絶命するかと思えた。
 そのとき。
「あの、よかったらこれ、差し上げますよっ」
 周囲の生徒が驚いたことに、何と久遠乃リーナ(くおんの・りーな)が自ら脱ぎ捨てたパンツを、国頭の顔に被せたのだ!!
「こ、これは! う、うお、エネルギーが!! 身体が回復するぞ!!」
 国頭は、久遠乃のパンツからエネルギーを得て、瀕死の状態から体力を回復させることに成功しつつあった。
「ありがとう。でも、なぜだ?」
「あなたのおかげで今回カノンが死の運命から逃れることができたのは事実ですからっ。でも、勘違いしないで下さいねっ。今回だけの特別なご褒美ですからっ!」
 久遠乃はそういって、予備のパンツを履き始めた。
「そうか。理由は何であれ、助かった!」
 国頭はもらったパンツに顔をこすりつけ、匂いを吸い込んで、さらに、シミはないかと探し始める。
 胸の傷はすっかり治りつつあった。
「あんまりじろじろみないで下さいねっ。まっ、いいでしょう。久遠のリーナ、今回も絶望を断ち切りましたっ!!! 国頭さんの絶望でしたけどっ」
 久遠乃は、ニッコリ微笑んだ。
「まずは生命拾いしたぜ。南め、次に会ったらどうしてやろうか! それにしても、あの車椅子の男、俺がこうなるのを知ってたんじゃないか? だから、あれだけの力を持っているくせに、カノンに助太刀しようとしなかったんだ。助かると知っているわけだからな。ったく、それなら、もう少しわかりやすく警告してくれれば、俺も心の準備ができたってのに」
 国頭は、南と、そして、車椅子の強化人間にすさまじい呪詛の言葉を並べるのだった。
 車椅子に乗っていた海人としては、国頭は「1度痛い目をみないとわからない」という思惑があったようだが、どうやら、痛い目にあっても全くわからないようである。

「カノン、待ってくれ! はあはあ」
 レオは、入り江を見渡す丘の上で、やっとカノンに追いついた。
「アハハハハハ! あっ、レオ!! いろいろいいましたけど、今回は大成功でしたから、全て水に流しましょう!!!」
 カノンは、レオの手を取り、にっこり微笑んでいった。
 どきんと、レオの胸が高鳴る。
「カノン、聞いてくれ!!」
 レオは、カノンの手を力強くつかんだ。
「えっ?」
「全部水に流してくれるのは嬉しいけど、でも、僕の気持ちまで流さないで欲しいんだ!! カノン、はっきりいうけど、君は、かわいい!! 僕は、君が大好きなんだ!! だから、つきあって欲しい、カノン!!
 レオは、ついに告白した。
「か、かわいい? 私が?」
 カノンは、またしてもどくんと胸が弾んで、熱くなるのを覚えた。
 カノンがレオに、山葉涼司とは違った魅力を感じたのは事実だった。
「カノン、お願いだ、僕の気持ちを!!」
 レオは、カノンに顔を近づけて詰め寄る。
「ちょ、ちょっと待って、待って下さい!!」
 カノンは、顔を真っ赤にしていった。
「レオ、あなたの気持ちはわかりました! でも、その答えは、もう少し待ってもらえませんか? あなたも、『私の涼司くん』も、私にとっては大事な存在です。でも、どちらか選べといわれたら!」
 カノンは、頭を抱えてしまった。
「ああ、御免。気持ちを受け入れてくれただけでも嬉しいよ。もちろん、答えは後でもいい。いくらでも待つから、カノン!」
 レオは、カノンを抱きしめた。
「あっ、ああ!!」
 カノンは、男性に抱きしめられて、素直に嬉しいと感じている自分を知って、驚く。
「でも、わがままかもしれないけど、最終的にはどっちか決めて欲しいんだ。僕は、どんな答えでも、受け入れていくから!」
 レオはいった。
「うん。わかりました。もう少し、もう少し時間をくれれば、答えを出します! だから、いまは」
 カノンは、複雑な心境だった。
 涼司一筋だった自分の中に、レオが強引に割り込んできた。
 だが、そのレオを、拒否できない自分がいる。
 涼司とレオ。
 カノンは、2人の間で揺れ動く心に悩むこととなったのである。
「いまは?」
 レオは、促した。
「レオと、こうしてただ、抱き合っていたいです!! そして、笑っていたいです!!」
 カノンは、レオを思いきり抱きしめて、そして、微笑んだ。
 カノンには珍しく、健康的な笑いだった。

「まっ、ハッピーエンドかな」
 丘の上で抱き合っているカノンとレオの姿を遠目に眺めながら、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)がいった。
「ルカ、お前も無事だったのか?」
 周囲の生徒が驚いていう。
「もちろん、無事だよ。あのとき、弾丸は1発も機体に当たらなかったんだ。フラワシを使って、押し寄せる弾丸の軌道をぎりぎりでそらしたのと、天才的な回避動作のおかげでね」
 ルカルカは、傍らのダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)に目をやりながらいった。
「まったく、あの回避は骨が折れたぞ。もっとも、苦労した甲斐はあったがな」
 ダリルはいった。
「ルカ、じゃ、お前、撃墜されたフリを?」
「そうだよ。でも、あのおかげで、カノンが一瞬でも変わることができたんだ。隊員のことを顧みなかったカノンがね!!」
 ルカルカは、笑っていった。
「コリマ校長には、今回の件で報酬を請求してもいいくらいだな」
 ダリルが淡々という。
「すげー、すげーよ、ルカ!!」
 生徒たちは歓声をあげた。
「ところで、天空寺はどうする? 絶望して海底に沈んじゃった可能性もあるけど」
 誰かがいった。
「引き上げてあげようよ。多分、死んではいないから」
 ルカルカの言葉に、全員がうなずく。
「妥当だ。コリマ校長も、彼を失うことは望んでいないはずだ」
 ダリルも同意。
「じゃ、みんな、これから、天空寺の【アモン】を引き上げるため、もう1度海中に潜ろう!! 大丈夫、気合で潜航すれば何とかなるさ!!」
 ルカルカは笑って、自機に向かって駆け出していく。
 早く、カノンが無事だったと伝えてあげたい。
 その想いで、ルカルカは急いでいた。
「おう、待ってろよ、天空寺!!」
 他の生徒も、みな、歓声をあげながらそれぞれの機体へと走っていくのだった。
 カノンは、今回の作戦を見事に成功させただけではなく、隊員たちとの交流の中で、人間的に少し成長することもできたのである。
「カノン、生きていたのはとりあえずよかったです。今後も、私があなたを倒すまで死ぬことは許しませんから!」
 白滝奏音(しらたき・かのん)もまた、カノンの無事に安堵しながら、海中への探索に参加するべく走っていく。
 いろいろあったが、「撫子小隊」の隊員たちは心をひとつにしてがんばったのである!

(みんな、よくやってくれた。それじゃ、これは、僕が破壊するとしよう)
 強化人間 海人(きょうかにんげん・かいと)は、車椅子に乗った姿で、砂浜に放置されたウォーマインドの付近に現れると、一心に念を凝らした。
(奴の手にこれを渡すわけにはいかない。砕けるのは僕しかいないから!)
「ぎゃ、ぎゃああ!」
 海人の恐るべき力によって、ウォーマインドはその表面にひびを走らせ、ついに、粉微塵に砕けて、マイナスエネルギーをまき散らしながら消えてしまった。

 そして、後日。
 眠りについた南鮪(みなみ・まぐろ)国頭武尊(くにがみ・たける)の夢の中に、大理石の彫像のような立派な姿の男性が現れた。
「お前は?」
 南と国頭の問いに、その男性は答える。
「我は、パラミタの愛欲の神、パンツァー・イタチューン。パラミタで起きる愛の行為の全てを司るものだ。先の闘いでのおぬしたちの活躍、しかとみせてもらった。ここに、おぬしたちを、パラミタパンツ四天王と認め、それぞれ、『パンツ愛の電動者』、『パンツ力の狂戦士』の称号を与えよう」
「俺たちがパンツ四天王に!? ありがたいぜ!! で、パンツ四天王って、何をやるんだ?」
 2人の問いに、パンツァーは首を振った。
「別に。何も義務はないが、まあ、ときがくれば、使命を伝えることもあるだろう。そのときまで、さらばだ!」
 そして、パンツァーは姿を消した。
 なお、パンツァーによると、パンツ四天王の残り2人が誰であるかは、まだ秘密とであるという。

 ここまで読めば、みなさんはおわかりだろう。
 コリマ校長のいう、運命を変える「不確定要素」とは、今回の場合、超能力でも仲間でもなく、何とパンツにほかならなかったのである。

担当マスターより

▼担当マスター

いたちゆうじ

▼マスターコメント

 今回は、いつも以上に気合の入ったアクションが多く、文章が長めになってしまいました。
 カノン祭りとして企画された本シナリオですが、NPC登録記念ということで、強化人間海人も登場しています。
 今回、ゴーストイコン八将軍を撃墜した生徒にはそれぞれ「ゴーストイコン八将軍撃墜」の称号を与えたいと思います。
 なお、本シナリオは、私が以前発表した『泥魔みれのケダモノたち』というシナリオと直接の関連がありますので、併せてお読み頂ければ理解が一層深まると思います。

 私は今後、4月下旬のころまでマスターシナリオはお休みする予定ですが、その間も、お任せボイスセットなどは依頼があれば担当する予定です。
 また、忘れられないように、マスターの個人ページも設定してみようかなと思ってるので、興味がある方はご覧下さい。

 復活した際に『蒼空のフロンティア』がどんな風になっているか想像もつきませんが、その際もこれまでどおりいろんなシナリオを発表していきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、今回のシナリオに参加頂いたみなさん、ありがとうございました。