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暗がりに響く嘆き声

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暗がりに響く嘆き声
暗がりに響く嘆き声 暗がりに響く嘆き声

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 ツァンダ支部『極東新大陸研究所』
 ロシアのウラジオストックにある『極東新大陸研究所』の支部の1つであり、地球とパラミタとでの環境の違いに伴う実験結果の変動を見るために作られた施設だとのこと。

 雨で水汚れたコンクリート壁とガラスで構成された二棟シンメトリーのその外観は病院に似て、手入れのされていない伸びっぱなしの庭と、壁に這っている蔦が廃屋独特の不気味さを醸し出している。

 オオ、オオ、と風が吹くと曇ったガラスがカタカタと鳴る。宛ら建物が泣いているかのような錯覚。

 不気味がって近隣住民がここへと来たがらないのもよく分かる。例えここが、程近い蒼空学園の生徒たちに『話題のホラースポット』として認識されていようともだ。面白半分で玄関の前に立てても、中へと入る勇気は別物。無謀と無知がそうさせるだろう。

 しかし、そうではなくともここに入る“必要性”がある者たちはそうではない。彼らは純粋に恐怖へと打ち勝つための勇気で、この不気味な屋内へ立ち入る。

 目的は二つ――、
眠れない近隣住民の安らかなる睡眠の為に。
ここのどこかに眠る危険性の排除の為に。

 彼らはエントランスを潜り、中へと踏み入れる。

 そして、暗がりへ。
 ようこそ、嘆きの廃屋に。