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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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第7章 2時間目・質問&回答@説明タイム

「(パラミタにもエクソシストっているんだね。僕も修行してみようかな)」
 スペルブックの授業を受けるべく、ミミ・マリー(みみ・まりー)が教室に入る。
「なんでエクソシストになりたいんだ?」
「え…うん。ちょっと興味があるんだよね。魔法学校の生徒以外の人もたくさんいるし、僕が受けても別に妙じゃないよ?」
「そりゃそうだけどな…」
 参加する理由は本当に、それだけなのだろうかと思いながらも、瀬島 壮太(せじま・そうた)は隣の席に座る。



「…むー、葛葉ちゃん。何でこんな所に連れてきたの?…ハツネ、祓魔師になるつもりないし、つまんないの」
 斎藤 ハツネ(さいとう・はつね)は頬を膨らませ、一刻も早く帰りたい!という態度を取る。
「たった1時間のことですから、我慢してください、ハツネちゃん。清明まで、他の生徒に睨まれてしまいますよ」
 今にも暴れ出しそうな少女に天神山 葛葉(てんじんやま・くずは)が優しく声をかける。
「…清明が悲しむのは、いやなの…」
 すでに数人の生徒からの冷ややか眼差しに気づき、清明のために我慢する。
「きゃー!魔道具の権威、ラスコット先生ですね!天神山清明と言います!これから、末長くよろしくなのです!!」
 教室へ向かう講師を見つけ、未来の彼に師事している天神山 清明(てんじんやま・せいめい)はキラキラと瞳を輝かせる。
「権威っていうのは大げさじゃないか?校長たちと共同開発だからね」
「…未来の渋カッコいい先生も素敵ですが、若い姿の先生も中々…あっ、こっちの話です」
「おや、僕等を裏切った輩が何をしてるかと思えば…。ふん、祓魔師の講師とは大層な御身分ですね、ラスコットさん」
「別に協力したつもりはないし?後、“裏切る”っていう言葉の意味を、ちゃんと理解したほうがいいね」
「言葉の意味って…ぼ、僕をバカにしてるんですか!?」
 それは大抵の者ならば分かるのだから、おそらくバカにされたのだろう…。
「―…あっ!あなたが過去のリストにいたの知っているんですよ!」
 金髪の女が持っていたリストのことをハッと思い出し怒鳴る。
「他人の空似じゃない?まぁ、おまえたちは知らないけど。オレとそっちが保護してるヤツと、どこかにいる女が知ってるヤツだな。もうこの世にいないけどさ」
「だったら…なぜあの場所にいたんですか?」
「失敗させて、ちょっと悔しがらせたかったんだよね。まぁ、オレがやらなくても、外側だけじゃなくって内側からも崩壊したみたいだけどな?」
「くっ…。最初からそういうつもりだったんですね…っ」
 さらに神経を逆撫され、清明がこの場にいなければ、掴みかかりそうなほど、憎しみに顔を歪ませる。
「消したいほどイヤな妖怪の集団だと思ったことはあっても、仲良くなりたいとか思ったことなんて、一度もないよ」
「まさか、追い出す訳ないですよね?敵だろうが魔に近いものだろうが、あなた方が僕達に見習い免許を出したのですから」
「その感じだと、本心で校長に正解を言ったかどうか怪しいな」
「さぁ〜?どうでしょうね、フフッ」
「へー…。悪知恵が働いても、技術と能力なければ無理だし、他にもいろいろと足りないままかもね?」
「ハハッ…精々、参考にさせてもらいますよ…「魔科学」のね」
「あーっそ。無理なものは無理」
「―……ねぇ、壊していい?アレ、すごくムカつくの。黒銀火憐で燃やして絞め殺したいの」
 葛葉の参考にしたいものに対して、全否定するラスコットの無礼な態度に、ハツネがブチキレそうになる。
「…って、父様にお姉ちゃん、なんで先生とそんな険悪なのですか!?落ち着いてくださいなのです!」
「ハツネちゃん、暴れるのはやめてください…清明に迷惑を掛けます」
「―…むぅー、清明に迷惑かけるのは嫌なの…しょうがないから今回は自重なの。ハツネは妹思いのお姉さんのいい子なの」
「ただ…いつか報いは受けさせますよ…きっとね」
「…でも、いずれ必ず報いを受けさせるのでしょ、葛葉ちゃん♪」
 声のボリュームを小さくし、葛葉だけに聞こえるに言う。
 ラスコットの姿を見つけた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、彼の傍にいき声をかける。
「こんな所でまた会えるとは思わなかったよ」
「リボンのお嬢ちゃんか、久しぶりだね。ここにいるってことは、授業に参加するのかな?」
「スペルブックの授業にね」
「こんばんは!それにしても、ラスコットさんが先生なのには驚きよ。エクソシストだったの?だから魂のことに詳しかったのね」
 彼がいるとは知らずに参加したルカルカ・ルー(るかるか・るー)は金色の目を丸くする。
「ルカ、先に話したいことがあるのだが…」
「あっ!そうね」
 ルカルカもいろいろと聞きたいことがあるが、授業前の僅かな時間の中、ほんの少しだけ夏侯 淵(かこう・えん)に譲り、後ろへ退く。
「オメガ殿とアルファ殿が、別々の存在として生きられるようになったのは、ラスコット殿のおかげだ。感謝する」
 特にアルファの方は魂を返してしまうと、再び闇に包まれた世界に戻されてしまう。
 この地に留まり、別々の者として生きる道を歩めるのは、彼のおかげだと頭を下げる。
 ずっと礼を言いたかったのだが、行方知れずだったためその機会がなく、教室の前で彼を見つけ、やっと礼を言うことが出来た。
「オレは少し手助けしただけだよ。2人が今幸せでいられるのは、キミたちが諦めずに協力し合えた結果じゃないかな?」
「うーむ、ずいぶんと謙虚な感じもするが…。それはそうと、あれからどこにおったのだ?」
「いろいろと放浪してたかな、授業の準備も兼ねてな」
「しばらくイルミンで教えるの?」
 お礼を言い終わったんだから話してもいいはずよね、と空気を読み、待っていたルカルカが寄る。
「まぁ、そんな感じかな」
「夜食用のオニオンスープを作ってきたんですけど。美羽さんにもお手伝いしてもらったんですよ。休憩時間にでも、皆さんでどうぞ」
 ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は両手にミトンをつけ、スープが入った鍋を抱えている。
「もうすぐ始まりそうですから、授業後にでも召し上がってください」
「んー…おーけ、授業受けながら食べていいよ」
「ぇっ、そんなゆるくていいんですか!?」
「教室を汚したり、騒がなきゃ問題ないよ」
「じゃあ、チョコバーも許可されるの?」
 ルカルカはパッと片手を挙げ、大好きなチョコバーを授業中に食べていいのか聞く。
「いいんじゃない?集中するための糖分補給としてさ」
「わーい♪」
「(うぅ〜…、もっとお話したいのに、近くにいける隙間すらもないのですーっ)」
 講師の周りに生徒たちが集まり、会話どころか清明が入れるスペースすらもなくなってしまった。
「授業が始まるよ。教室に入って!」
「もう休み時間終わり!?淵!早く行かないと、前の席取られちゃうっ」
「何っ!?」
「見えなかったら肩車でもしてやるが?」
 カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が淵に、冗談交じりに言う。
「そのようなことは必要ないっ。―…む、階段式の部分に席があるのか」
 彼をひと睨みしてから淵が先に入ると、室内は授業が見やすい構造になっている。
「座高が高いヤツが前にきたら、そいつの頭で見づらいこともありそうだがな。ルカ、もっと後ろの方にしないか?」
「10列目くらいにする?」
「ルカ、3列目に座るのだ」
「それでいいのね?2人共、早く席に着かないと、始まっちゃうわよ!」
「スペルブックを机の上に出しておかねばっ」
「ノートとペンもだな」
 ルカルカの声にパートナーたちは、確保してもらった席に着いた。
「席は自由なのね。どの辺りがいいと思う?」
「いや、俺に聞かれてもな…。じゃあ、ここでいいな」
 パートナーの付き合いで来た如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)は、適当に選んだ席に着こうとする。
「えー、あまり前すぎるのも微妙よ」
「んじゃ、壁際とかは?」
「端っこは見づらいわよ…」
「由乃羽ーっ、こっち空いてるわよ!」
 どの席にしようか迷っている神威 由乃羽(かむい・ゆのは)を見つけ、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が大きな声で呼ぶ。
「真ん中辺りなら見やすそうね!佑也、早く進んでっ」
「危ないから押すなって!」
「だって早く席にいかないと、ベルが鳴り終わっちゃうもの」
「刀真、玉ちゃん。席2つ分ずれてくれる?」
「分かった」
「む…荷物も移動させなとな」
 小さく頷き、2人分のスペースを空ける。
「私の隣においで」
「ありがとう、月夜」
「俺まで連れ出す必要あったのか…?」
 免許取得のための説明の中で、魔法学校の校長に1人で立ち向かうなと言われたが、参加者が大勢いるのに、自分まで引き込む必要はないのでは?と嘆息する。
「弟子が師匠のお供をするのは当然でしょ」
「弟子にも助手にも信徒にもなった覚えは無いぞ…」
 きっぱり否定するものの、由乃羽は人差し指を唇に当て、静かにして!という仕草をする。
「(はぁー…まぁいいや。これ以上何か言って、逆ギレされても困るしな)」
 後々役立つかもしれないし、とりあえず授業を受けてみることにした。



「2時間目の授業を始めますぅう!皆さん、スペルブックをちゃんと持ってきましたねぇ?」
「はい、持ってきました!」
 最前列の真ん中の席にいる神代 明日香(かみしろ・あすか)が、エリザベートに見せる。
「さすが明日香ですぅ〜。ちゃんと忘れずに持ってきましたねぇ〜」
「評価は平等にしなきゃいけませんよ、エリザベートちゃん♪」
「分かってますよぉ〜♪ではぁ〜、スペルブックについて説明しますぅ〜。質問は私とラスコット先生がお答えしますねぇ。あら、さっそく手が挙がりましたねぇ、どうぞ♪」
「祓魔師の道具を使用する際に必要な『清らかな精神力』というものが、一体どんなものなのかよくわかりません」
「憎しみや、殺したいだけの殺意、屈服させて下僕にする支配欲などは、清らかとは呼べません〜。憑かれてしまった者を救い、憑依された物をなるべく傷つけずに祓い、魔性に悪さをやめさせたい。これらは清らかな精神力に該当する一部ですぅ〜」
「やめさせるよりも、滅してしまったほうがよいのでは…」
 純粋に闘争や殺戮を求める人間が、身近にいる…というか、その妻である緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)には理解出来ない。
 緋柱 透乃(ひばしら・とうの)は免許を忘れてしまったため、教室に入ることが出来ず、仕方なく廊下で待機している。
 ただ1時間待っているだけというのも退屈だ。
「膝を抱えてションボリ…なんて、私のキャラじゃないからね。コレで暇つぶししよう、えいっ」
 ぽいぽいカプセルから格安の自転車を出す。
「段純な動きじゃつまらないね。もっと工夫して、楽しく鍛えられる方法ないかなー…」
 自動車でウェイトリフティングをするだけでは物足りず…。
「床に落としたら、腕立て100回するとかバツゲームあり!みたいな感じでやってみようっ」
 それを額に乗せ、体を鍛えようと首で支えながら、バランスゲームのようなことをしてみるが、端から見れば大道芸人のようにも見える。
 一方、妻の方は…。
 自分が思う清らかな精神力と、校長が言う清らかな精神力が異なり、悩んでしまっている。
「例えば〜。悪い魔性を更生させようとする、慈悲の心を持つ者が該当しますねぇ。それに…陽子さんがイメージする清らかさでは、とっても困ったことが起きる危険があるんですよぉ〜…」
「どのようなことが起きてしまうんですか?」
「仮に、魔性がガス管に憑いたとしますぅ。無理やり滅しようとするとぉ〜、ガス爆発が起こされてしまう危険性もありますしぃ〜。魔性
が憑いた人などを殺して逃げてしまったら、それこそ任務大失敗ですぅう!」
「滅される前に憑いた相手と共に自害したり…。最悪の場合、逃走してまた悪さをする…ということですね?」
「えぇ、そうなりますねぇ。すぐ殺しちゃうのは、初犯の万引き犯まで、死刑にしちゃうってことと同じですよぉ〜。罪を許すことも、清らかな精神力に入りますぅ」
「重犯罪はどうなりますか?」
 全て許してしまうのかと疑問に思い、さらに質問を重ねる。
「うーん…更生の余地のない酷い罪は、倒さなきゃいけなくなる可能性もありすけどぉ。だからといって、よくない感情に任せて魔道具を使ってはいけません〜」
「話し合いで解決しなかったとしたらさ、最終的には拳で殴りあえってことか?」
 魔道具で滅するんじゃないなら、最後の武器は拳なのだろうか?と如月 正悟(きさらぎ・しょうご)は首を傾げた。
「専用の武器でないとダメージが通らないですよぉ〜。感情コントロールが出来ていれば、スペルブックの章なら可能ですがぁ〜…。あくまでも最終手段ですからねぇ〜」
「滅するにしても、殺しあいたいだけだとか、そういった感情だけじゃ上手く術が使えないってことなのか」
「そーですぅ〜。しかも不の感情は〜、魔性の器のターゲットにされたりしやすいですしぃ〜」
「あぁ…、それは簡便だな」
「…俺がいつも通りに立ち回ったら、間違いなく『魔性を祓う魔性』になるな」
 校長と陽子の会話を聞き、樹月 刀真(きづき・とうま)はやや肩身が狭くなる。
「エクソシストには、祓う魔性や憑かれた人を思いやる心が大切なのね」
「だとすると俺の場合は、…壁役か?」
「動く壁ということね」
「何…?壁が動いては、防ぎようがないのでは」
 月夜の言葉に玉藻 前(たまもの・まえ)が眉を顰める。
「相手の攻撃を防ぐためには、動かないと意味がないのよ、玉ちゃん」
 魔性がピンポイントで狙うとは限らず、ただ仁王立ちされても、そこをスルーして術者たちを襲ってくる可能性もある。
「ふむ…。後ろに人などがいた場合、避けるわけにもいかないのだな?うーむ……」
「玉藻。一応言っておくが、俺にそんな趣味はないからな」
 的は的でも、自爆的趣味はない!ときっぱり否定する。
「ほう……。例えばだが、我がくすぐとうとしたら、どう防ぐ?」
「む〜、玉ちゃん刀真に悪戯しないっ」
「では…」
 ターゲットを月夜に変更し、椅子の背もたれの後ろから、にゅっと手を伸ばすが…。
「私にも駄目」
 すぐに気づかれ、メッと叱られてしまう。
「(ふむ、こいつは確か、機晶姫の腕を付けた恭司という男だったな)」
 月夜からそんな男がいると聞き、今度は橘 恭司(たちばな・きょうじ)に狙いを定めた。
「さーて何から取り掛かるか…」
 まずは質問でもしてみようかと、カバンからノートを取り出そうとする彼に、玉藻の魔の手が忍び寄る。
「玉藻さん、何故俺の腕を外そうと…」
「機晶姫の腕が付くんだ、別の腕を付けても良いよな?」
「いや、ちょっと待て。何だその物体は!」
「手持ちの物がこれしかなくてな。なんなら、振袖もサービスするぞ」
 足袋をつけたかんざしを、彼の腕につけようと機晶姫の腕を掴む。
「そこっ、うるさいですぅうう!!」
 エリザベートが投げたチョークが2本、額に命中した。
「イッたぁああっ!!」
 ―……恭司にだけ。
「授業は大人しく聞かないといけないのだぞ。ふぅ…騒がしい男だ」
「(えぇえええ!?玉藻さぁああん!!酷いーーーっ)」
 元凶の玉藻は、何事もなかったかのような態度をとっている。
「ところで月夜、この授業はどのようなものなのだ?」
「魔性祓いの授業よ」
「―…魔性を祓う?我が?無いな…。月夜、そんな寂しそうな顔で我を見るな、分かった受けるから」
 捨てられそうな仔猫のような表情で見つめられ、退室出来なくなった玉藻は、月夜のために授業を受ける。
「質問したい方はいませんかぁ?」
「憑かれた者たちは、自分たちの能力以上の力を使えたりするのか?」
「箸しか折れなかった人が〜石を握り潰せるようになったり、すばしっこくなっちゃったりすることとかぁ〜…。憑いた魔性の能力を使うこともありますよぉ〜」
「ディテクトエビルで魔性を見ることはできるか?」
 刀真に続き玉藻も校長に質問する。
「視覚認識などは出来ません〜」
「じゃあ俺も…」
「は〜い」
「所謂魔力を拳や得物に纏わせて祓うことは可能か?」
「それはー…、本の章の魔力でですかぁ〜?残念ながら本と章のみでは無理ですねぇ〜。あとぉ〜…現在のスキルで祓うことも出来ません〜」
 エリザベートはかぶりを振り、美羽とベアトリーチェが作ってきたオニオンスープを飲む。
「―…単独行動が好ましくないのは、そういった理由もあるからでしょうか?アンプなしでエレキギターを弾くここと、同じことなんですね…」
 彼らと離れた席でリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)が説明を聞く。
「楽器に例えると、確かにそんな感じですよね」
 伊礼 悠(いらい・ゆう)も協力する意味として、演奏で考えてみると分かりやすいかもしれない、と頷いた。
「修練を積み、共に行動することで、凄い音が出るかもしれないのだな?」
 彼女のスペルブックを、ディートハルト・ゾルガー(でぃーとはると・ぞるがー)は自分の方に寄せ、いったいどのような可能性が秘められているのか考えてみる。