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二人の魔女と機晶姫 第1話~起動と邂逅~

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二人の魔女と機晶姫 第1話~起動と邂逅~

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■鉄仮面の邂逅
(思ったよりも抵抗が激しい……こちらの消耗もかなりのものだ、すぐに済ませてしまわないと……)
 予想以上の警備網を強行突破という形で抜け続けた鉄仮面の騎士。今までは何とか無双を誇っていたものの、身体に溜まったダメージや体力の消耗など、状況は不利に傾きつつあった。
 そして、騎士は護衛者たちが定める本陣最終防衛ラインへと足を踏み入れる。――しかしそこにはすでに、キルラスたちや戦線を下げた仲間たちによって襲撃の報告を受けた護衛班が陣を敷いて立ちふさがっていた。
「まだこれだけの戦力を残していたか……面白い」
 そのほうが奪いがいがある、と大槍を構える鉄仮面の騎士。それに対し、護衛班たちはまずは騎士へ説得を試みる。まずは氷藍がその口を開いた。
「物騒な騎士さんよぉ、なんだってあの機晶姫を狙うんだ? そんなにあんたにとって都合の悪いものなのか?」
「――またそのような問いかけか、くどいっ!」
 やはり答えてくれる様子はない。氷藍の言葉に続き、今度は雫澄が騎士へ問いかける。
「なら、質問を変えますね。鉄仮面の騎士……君の名前は?」
「……名など教えてもお前たちには無意味だ。――悪いがこれ以上は時間の無駄。あの機晶姫、奪わせてもらう!」
 話すことは毛頭なし。大槍とタワーシールドを構えると、騎士は一気に突っ込んで機晶姫を奪取しようとする!
「雫澄、奴の言うようにそれ以上は無駄だ。好きにさせてもらうぞ」
「……うん、わかった。僕はこっちを守るから――お願いするね」
 話し合いは無駄、と判断したシェスティンが光刃宝具『深紅の断罪』を構え、戦闘態勢を取る。雫澄もまた、『護国の聖域』『フォースフィールド』を小屋周辺に張り、騎士の魔法攻撃に備えていく。
 ――どうやら、戦いは避けられそうにはなかった。

「来たぞ……一気に畳み掛ける!」
 真田 幸村(さなだ・ゆきむら)が味方の鼓舞と敵が最終防衛ラインまで到達したことを他の防衛ラインに知らせるための『クライ・ハヴォック』の雄叫びを上げる。それを合図に、最終防衛ラインを守護する前衛戦力が一気に騎士へと攻撃を仕掛け始める!
「とにかく機晶姫から遠ざけさせるんだ! ――こんな無粋なやり方で奪おうっていうのなら!」
 『超感覚』で猫耳を生やした氷藍の『稲妻の札』と『神威の矢』が騎士に襲いかかるが、それは大槍で払われてしまう。しかし間髪を入れずに幸村が、大槍を払った隙を狙って『アナイアレーション』を叩きこみ、同時にシェスティンが『チャージブレイク』で高めた強力な一撃を打ちこむ!
「硬いっ……!」
「ちっ、防がれた! ――だがっ!」
 だがその同時攻撃もタワーシールドで防がれる。だが重なった威力でそのまま押し込むことはできたようで、多少のノックバックは起こせたようだ。そして、そのノックバック先には――!

ドゴォォンッ!

 騎士の足元が爆破する。ここには家康が事前に仕掛けていた『破壊工作』用の地雷があったのだ。たとえ鎧で身を固めようとも、不意の爆発には対処しきれないはず……!
「なっ……!?」
 ――だが、騎士は地雷爆破もタワーシールド……否、『ファランクス』で防御していた。そして、素早く片を付けるべく『ランスバレスト』で一気に小屋へ向けて突進を開始した!
「させっかよぉ! オラオラオラ、撃て撃て撃てーーっ!!」
「援護するよ! ――なぜ君はこんなことを……!」
 突進を牽制するべく、エヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)はロボット形態に変形した可変型機晶バイクと2機の戦闘用イコプラのマシンガンによる一斉弾幕を撃ちこむ。さらにそこへ雫澄の可変型複合兵装『カラドリウス』のライフルモードによる後方支援砲撃も加わる。
 その攻撃が功を奏したのか、『ランスバレスト』による突進をうまくとめることができたようだ。そしてその隙を狙うべく、機晶剣『ヴァナルガンド』を二刀形態で武装した煉が『ゴッドスピード』で接近。防御に使うであろう武具を『行動予測』で読み、『ウェポンマスタリー』による剣捌きで攻撃を仕掛ける。
 同時にエヴァが『サイコキネシス』、煉が『グレイシャルハザード』で動きを束縛し、大技へ繋げていく!
「今だえヴぁっち、みんな! 思いっきり叩きこめぇぇぇぇっ!!」
「ぶち抜けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
 アクセルギア起動、ロケットシューズでの加速――最高速に乗ったエヴァの念動式パイルバンカーによる非殺傷設定の『レジェンドストライク』、怪力の籠手で渾身の力を込め、大剣形態に変形させたヴァナルガンドで『レジェンドストライク』を打ちこむ煉。強力な大技を同時に放つと、すぐさま二人は間合いを取っていく。
「――やったかっ!?」
 だが、次の瞬間――周囲を薙ぎ払うかのようにして、極大の魔力を持つ雷鳴『サンダーブラスト』が轟いていった!
「うわぁぁぁぁっ!?」
 強大すぎる魔力を受け、吹っ飛ばされる護衛班たち。ダメージは何とかエリス・クロフォード(えりす・くろふぉーど)が『ディフェンスシフト』と『エンデュア』、さらに『フォーティテュード』で守り抜いたようだ。
「こ、この程度の攻撃――私がすべて受けきってみせます。それに……自分が放った魔法の威力はいかが?」
 さらに騎士の『サンダーブラスト』を神獣鏡で反射していたようで、魔力の雷の一部が騎士に襲いかかっていたようだ。
 小屋や機晶姫の入っている箱のほうには『オートバリア』をかけてあるうえ、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)をはじめとした他の護衛班が守護している。防御のほうは完璧の布陣といえよう。
「――なかなか、やるようだな。物量作戦かどうかは知らぬが……ここまで押されるとは、な……」
 ……歩みを止められての大技、そして自身の魔法反射ダメージを受けてもなお、立ち上がる鉄仮面の騎士。しかし、その仮面にはひびが入り、鎧もかなりボロボロになってきていた。ここまでのダメージを含め、相当の攻撃を受けたのだから、無理もない。
 しかしそれでも、騎士はターゲットに向けて移動を始める。そして当然、護衛班はそれを防ごうとする。
「蒼空学園が馬 孟起(ば もうき)――参る!」
 さらに攻撃を重ね、なんとか追い払おうと馬 超(ば・ちょう)が騎士へ攻撃を仕掛ける。
 同時に、両手に持つ銃と侵食型:陽炎蟲を寄生させた脚部につけたレガースによる蹴り技を使った複合格闘術を使う和輝と、持てる全てを出し切るつもりのカイも攻撃に参加し、騎士の歩みを止めようとする。
「――邪魔だっ!!」
 しかし、その攻撃も騎士の『サンダーブラスト』によって薙ぎ払われ、吹っ飛ばされてしまう。騎士からの魔力はさらに高くなっているようにも感じ取れる。
 そしてついに、鉄仮面の騎士は小屋の前まで到着した。その小屋の前では、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が騎士を待ち構えていた。
「我が名は蒼空学園の戦士ハーティオン! いざ尋常に、勝負!」
 ハーティオンは『プロボーク』で巧みに騎士を挑発し、自身へ攻撃を向けさせようとしている。同時に、このまま時間を稼ぐことによって材料採集に向かっている仲間や治療の終えたほかの防衛ラインの仲間が戻ってくることによる状況の有利さを作り出そうともしていた。
 後方にいるラブの『激励』を受けたハーティオンは、愛槍である闘心槍を構え、騎士へ攻撃を仕掛ける。互いの槍捌きを披露するかのように、一歩も譲らぬ乱撃戦を見せていく。持久戦に持ち込もうとするハーティオンの目論み通り、次々と護衛班側の増援が姿を見せ始める――!
「……素直に機晶姫を明け渡すだけでいいものを――喰らえ!」
 次から次へと現れる契約者たちに嫌気がさし始めたのか、一気に蹴散らそうと『ファイアストーム』で周囲一帯を焼き払おうとする。しかし――!
「っ!?」
 騎士の足元には佑也が小屋入口に仕掛けていた氷のフラワシがおり、騎士を徐々に凍らせ始めていく。
「あいつが笑ってこの世界に迎えられるためにも、指一本触れされねぇよ!」
 そこを狙って、大谷地 康之(おおやち・やすゆき)が騎士の抵抗となる反撃を『ブレイドガード』で防ぎ、その隙を狙い『金剛力』で強化した一撃で、騎士のタワーシールドを殴り飛ばした!
「そこぉっ!!」
 そしてさらに、機晶姫はもちろんのこと、アインとオーランド(ついでに佑也)を守る気概のラグナ ツヴァイ(らぐな・つう゛ぁい)が『オーラシューター』で弾幕を張り、捕縛から逃げられないように援護していった。
「くっ……!」
 足元が凍り、動けずにいる鉄仮面の騎士。そこへエヴァルトが『ランスバレスト』を応用した体当たりで一気に騎士へダメージを与えようとする。しかしそれはタワーシールドで防がれるも、ワイヤークローを撃ちこんでもう一度体当たりを仕掛けようとする!
「ダメですって! まだ外は戦闘中です!」
「お願い、行かせて!」
 その時、小屋の中から様子を見ていたミリアリアが、万全の態勢で気を張って機晶姫を護衛していたサー・ベディヴィア(さー・べでぃびあ)の制止を振り切り、小屋の外へと飛び出る。そしてその時――エヴァルトのワイヤークローが騎士の鉄仮面に当たり、砕けていく――!

 ……鉄仮面の奥にあったのは、女性の顔だった。

「じょ、女性……!?」
 周囲にいる者たちは驚くほかなかった。鉄仮面の中から現れたのは、まぎれもない女性……しかも少女の顔である。そしてその顔立ちは――ミリアリアに似ていた。
「――そのオッドアイ……やっぱり、モニカだったのね……!」
 ミリアリアが声にする。目の前の騎士、その名はモニカ。――生き別れた、ミリアリアの妹。
 忘れるはずもない、その髪、成長した顔立ち、そして赤と緑のオッドアイ……。
 突然の再会に、ミリアリアは茫然としてしまっている。……しかし、モニカはそうではなさそうであった。
「なぜ私の名を……!」
「何を言ってるの、私よ! ミリアリアよ! 覚えてないの!?」
「ミリアリア、だと……!? 嘘をつくなっ!
「えっ……!?」
 猛る怒号。モニカの眼には疑いの眼差しが浮かび、ミリアリアを刺していた。
「お前が姉であるはずはない……私の姉は幼き日に大怪我を負い、それ以来……主が治療してくれていると言っていた! それなのに、なぜお前が私の姉の名を騙る!」
「そんな、嘘よ! 私が大怪我を負ってるはずなんてない! モニカ、あなた誰に騙されてるの!?」
「うるさいっ! お前こそ騙してるのだろう……姉の名を騙る魔女め!」
 猜疑から怒りへと変わり、ミリアリアへ大槍の穂先を突きつけるモニカ。だがその時、他の防衛ラインや結界材料を集めていた他の契約者たちが小屋へ集まり始める。完全な不利と見たモニカは、足元の氷を大槍の柄で破壊すると、撤退をするべくその場を突っ切っていく!
「深追いはするな! 私たちの目的は機晶姫の護衛だ!」
 馬超の言うように、今回の目的はあくまでも機晶姫の護衛。契約者たちはモニカの追跡をしようとするものの、そのこともありほどほどの追跡だけに終わらせる。
 ……追跡していた契約者たちが戻ると、ミリアリアは唇をかみしめ、沈痛な表情を浮かべていた……。