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イコン博覧会2

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リアクション

 

教導団ブース

 
 
鋼竜は、教導団の主力である近接対空型のイコンです」
 懐かしい空京万博のコンパニオン衣装を着た漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が、一所懸命イコンの説明をしていた。
 鋼竜は地上用イコンで、バランスのとれた人形をしている。その運用はまさに歩兵で、装備によって対空にも格闘にも都市制圧にも対応できる高い汎用性を持っていた。都市防衛のために、空京大学にもOEM供給されていることがそれを物語っているだろう。
 
「こちらは、焔虎になります」
 漆髪月夜とお揃いの衣装に身をつつんだ封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)が、もう一つのイコンである焔虎を紹介していた。
 焔虎は、地上用タイプの支援攻撃型イコンである。大火力の武器を搭載でき、遠距離からの攻撃を得意とする。
 敵の遠距離攻撃に対する迎撃の他、要塞攻撃の場面でもっとも威力を発揮するだろう。
 
「こちらは、教導団の誇るパワードスーツです」
 すぐ横では、水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)マリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)が、ペアトップタイプのハイレグレオタードでポーズをとってパワードスーツにもたれかかりながら、カメコのシャッターの集中攻撃を受けていた。
 パワードスーツは、対イコン用の歩兵用武装であると共に、コントラクター以外でのパラミタでの活動を補助する機能も有している。人よりも数周り大きいだけのパワードスーツでは、単体ではとうていイコンと戦えるはずもないが、数を揃えることによっては充分な抑止力となるだろう。また、イコン以外であれば、施設の制圧など、イコンの入り込めない部分に侵入できるため、細かい作戦にも充分対応できる戦力であった。
 通常は専用の輸送車両で移動し、作戦ポイント近くでパイロットが乗り込んで出撃する。輸送車両の最大搭載量は、パワードスーツ三機までとなっており、発進後は指揮車両としてドライバーが残ることとなる。
「ふむ。まだまだこの分野では、教導団の独壇場のようですな。とはいえ、天学のイコン技術を応用して、突然ブレイクスルーが起こるとも限らない。特に、あのようなうら若き女性専用のパワードスーツが開発されれば……。これは、もっと実例を探すべきなのかもしれませんな」
 伯慶が、まじまじとパワードスーツと水原ゆかりたちを見比べながら言った。
「なんだか、あっちの方がギャラリーが多い……」
 ちょっと不満そうに、漆髪月夜がつぶやいた。
「むこうは、パワードスーツが写真のフレームに入りますから、絵になりますものね。美少女とメカは基本です」
「何が基本?」
 仕方ないですよと言う封印の巫女白花に、漆髪月夜が聞き返した。
「おーい、差し入れ持ってきたぞー」
 売店でイコン焼きを買ってきた樹月刀真がそこへやってきた。
「あっ、刀真、いいところへ。ねえ、綺麗? 綺麗?」
「いきなりなんなんだ!?」
 差し入れをひったくるようにして奪われた樹月刀真が、漆髪月夜に迫られて思わず後ずさりした。
「刀真、ほらっ! 似合う? 気に入ったのなら家でも着てあげるよ? ……嬉しい? ならいい」
「勝手に自己完結するなって。月夜、家でまでその格好はしなくてもいいよ。あ〜、うん、まあ、着てくれたら嬉しい……かも」
「刀真さんはこの格好が気に入ったんですか? お家で着たら嬉しいんですか? ……嬉しいんでしたら、その、が、頑張ります!」
 しどろもどろに樹月刀真が答えていると、漆髪月夜の後ろの方で封印の巫女白花が短いスカートの裾をちょっとひらひらさせてさせた。
 水原ゆかりたちの方にむいていたカメラが、一斉に封印の巫女白花にむけられてシャッターが切られた。
「いやいやいや、白花さん、没にそんなところに力を入れて頑張らなくてもよいよ? ほら、俺も男だから」
 あわてて封印の巫女白花の前に立ちはだかってカメコを追い払いながら、樹月刀真が言った。
 
「教導団の新型イコンはと……おうっ!?」
 てくてくと見学に来ていた斎賀昌毅が、パワードスーツの前で何やらだきあったり、絡み合ったり、キスのまねをしたりしている水原ゆかりとマリエッタ・シュヴァールをみてちょっとびっくりした。だが、すぐに凝視する。カメコたちも、素早くこちらへと舞い戻ってきていた。
「撮影会より、肝心の第二世代機はどうしたのよ」
「はーい、では、頭上を御覧くださーい」
 水原ゆかりの身体から離れたマリエッタ・シュヴァールが頭上を指し示した。
 今までブースの屋根だと思っていたところに、何やらいろいろメカメカしい物が見える。
「教導団の誇る超大型イコン、応龍です」
 そこにあったのは、強攻型の応龍であった。そのサイズはイコンの汎用機の中では最大を誇る。さらに、この大きさで可変機であり、通常は爆撃機の形となっていた。デルタ型の全翼機に大型の二基の推進器を備えた形態である。
 変形すると、両翼部が前後に別れ、前方部が下降して逆関節型の脚部となり、後方部が碗部となる。さらに胴体後部がせり出してコックピットをカバーする形となり、エンジン部全部がウエポンパックとしてミサイルランチャーや大型砲を展開する形となっていた。この形態に変形後は、飛行から歩行へと変化する。
 搭載量はコンテナ部などにも左右されるが、移動司令基地としても有効に機能しそうな大型イコンである。
 
「爆撃型って、いったい何に使うつもりなんだか」
 そのあまりの制圧兵器的な側面に、十七夜リオがちょっと絶句する。
「まあ、一気に間合いを詰めて攻撃すればいいのでしょうけれど、装甲は厚そうですね」
 的としては大きいが、いかにも攻撃を跳ね返しそうな重厚さだとフェルクレールト・フリューゲルが頭上を見あげて言った。
「爆撃って言っても、命中精度とか射程とかが気になるよね」
 十七夜リオがマリエッタ・シュヴァールに質問する。
「それらは、搭載兵器によって左右されます。これだけ大きいと、レーザー誘導爆弾などの誘導兵器も余裕で積めますし、巡航ミサイルも大型の物が使用可能です。また、クラスターミサイルなどによる面攻撃など、多彩な攻撃が可能です。強攻型に変形後は、大型砲が使用でき、対要塞攻撃では圧倒的な火力を持って他の追従を許しません」
 マリエッタ・シュヴァールが、すらすらと答えた。
「完璧よ、マリー」
 水原ゆかりが、後ろでパチパチと小さく拍手をした。