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イコン博覧会2

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イコン博覧会2
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リアクション

 
    ★    ★    ★
 
 個人ブースのイコンの展示は、それこそ様々である。
 見た目ノーマル、中身別物のイコンを堂々展示する者や、もはや原形をとどめていないイコン――オリジナルパーツは心臓部のブラックボックスだけなどという物もある。
 そして、魔改造の極みというか、魔ペイントの極みというか、一種独特の世界に突入してしまっているイコンもあった。すなわち、痛イコンである。
 なぜか、そのブースにはジングルベルがかかっていた……。
「はーい、なぜか季節外れのサンタさんとトナカイさんですよー」
 ほとんどやけっぱちになって、月詠 司(つくよみ・つかさ)が呼び込みをやっている。その前では、ニコニコしたシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)イブ・アムネシア(いぶ・あむねしあ)が、展示してあるイコンの説明をしていた。
 展示されていたイコンは、元はアンズーだったようだ。だが、片方は最初からアンズーサンタだったようである。これはアンズーにサンタの衣装を着せた物だが、誰が開発したのか不明の謎の機体である。基本性能もノーマルのアンズーとは微妙に違っているため、さらに謎が深まっている。
 そのアンズーサンタに合わせてか、月詠司のグリフォンはトナカイの格好に魔改造されていた。
 頭部の左右には氷獣双角刀をトナカイの角に見立ててぶっさし、先端には赤く塗られた水晶玉が鼻としてつけられている。脚部は仏斗羽素で強化されて、接続したコンテナ型橇を牽けるようになっていた。
 橇の上には、当然のようにアンズーサンタのネメシス=アラウンが乗っていた。こちらはもともとサンタコスではあるが、衣装は赤ではなく黒く塗られたブラックサンタだ。どことなく凶暴な気もする。
「さあ、みんなとらぼる太を見てくださいですぅ」
「違うでしょ、イブ。ネメシス=アラウンよ」
 シオン・エヴァンジェリウスが、イブ・アムネシアにむかって言い直した。
「だって黒いんだもん。本当は、アイスクリーム色がよかったのですよ」
 なんだか思い入れでもあるのか、イブ・アムネシアがブチブチと言った。
「ふむ、黒いな……」
 何かを感じたのか、模擬戦までの時間をブラブラと見学で過ごしていた織田 信長(おだ・のぶなが)がニヤリとした。
「それでは、よい子のみなさんにプレゼントを配って回りたいと思います」
 そう言うと、月詠司がイブ・アムネシアと共にグリフォンに乗り込んでいった。ネメシス=アラウンの方にはシオン・エヴァンジェリウスが一人で乗り込む。
『それでは、出発します。シャンシャンシャン』
 口で鈴の音を鳴らしながら、月詠司がグリフォンを発進させた。とたんに仏斗羽素が制御不能となりアンズートナカイサンタが暴走を始める。
「わーい、それではプレゼントを配るですぅ」
 イブ・アムネシアがコンテナに積んである……ミサイルのスイッチを押した。
「ははははは、受け取るがよいわ、会場のリア充共よ!!」
 計画通りと、シオン・エヴァンジェリウスがアンズーサンタの中で一人高笑いをあげた。
「どうなってるんだ? と、止まれー!」
 状況が把握できなくなった月詠司があわてたが、暴走は止まらない。
 阿鼻叫喚の中、地上にミサイルが降りそそぐかと思われたが、突如そのほとんどが高空で爆発した。
 岡島伸宏と山口順子の乗った飛燕が、高速で回転しながらMVブレードでミサイルを迎撃していく。
「よかった。出番があったぜ」
「あまり、喜ぶことではないわよ」
 嬉々とする岡島伸宏に、事件が起こるのは迷惑だと山口順子が言った。のんびりできると思ったのに、台無しだ。
「止まれ!」
 躊躇することなく、岡島伸宏が大型ビームキャノンのビームをグリフォンの牽く橇のコンテナに叩き込んだ。弾薬が誘爆して、派手な爆発が起きる。
「おのれリア充!」
「違うだろうがあ!」
「あーん、とらぼる太があ〜」
 派手に吹っ飛んだアンズー二機が宙に吹っ飛ばされ、ぐしゃりと地面に叩きつけられて止まった。
 
    ★    ★    ★
 
「まったく、何があったんだもん。また攻撃!?」
 ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)が、はた迷惑そうに言った。
 シオン・エヴァンジェリウスたちがばらまいたミサイルの一部は、高天原 水穂(たかまがはら・みずほ)が乗っていた飯綱零式・木花咲耶からの迎撃ミサイルで全て撃ち落とされた。
「ふう。なんとか間にあいました」
 予想外のトラブルにとっさに反応できたことにほっとしながら、高天原水穂がコックピットの中で安堵の息をついた。のんびりしていたら、突然レーダーに熱源体が映ったのである。
 バイクのように寝そべる形のパイロットシートに着きながら、高天原水穂が前方180度をカバーするモニタ上に、ロックオンしていたターゲットのその後の状況を映し出して確認を行った。空中には、ミサイルの爆発した煙がぽつぽつと広がっていた。とりあえず、こちらへ飛んできた物は全て迎撃できたようだ。
「このように、コノハナサクヤは高性能のイコンなのです。えっへん」
 ネージュ・フロゥが、あらためて自分のイコンである飯綱零式・木花咲耶を紹介した。
 ベースとなっているのはキラー・ラビットであるが、ほとんどの部品を交換しているためにすでにウサギの面影は残ってはいない。全体のシルエットは四足歩行型の狐であるが、その特徴は尾部にあった。センサーマストとスタビライザーを兼ねる尾からは、美しい九本の光の尾がレーザーブレードとしてのびるようになっている。全体を被うホワイトパールの装甲には舞い散る桜の花弁の意匠が施された美しいイコンだ。
「今後のパワーアップとしては、装甲をもっと凄い『ハヤサスラ』に換える予定なんだよ」
 まだまだ飯綱零式・木花咲耶は強くなるんだよと、ネージュ・フロゥが胸を張った。
 
「これが、この時代のイコンか〜」
「綺麗なイコンですね」
 飯綱零式・木花咲耶を見たディアーナ・フォルモーント(でぃあーな・ふぉるもーんと)が、ユピテル・フォルモーント(ゆぴてる・ふぉるもーんと)にうなずいた。
「そうだね。うちのアルテミスも、こんなふうに外装を換えてみたいよね」