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【神劇の旋律】ストラトス・チェロを手に入れろ

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【神劇の旋律】ストラトス・チェロを手に入れろ

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第六章 誤算とすれ違い

「……で、どうしても行くの?」
 ブルタの言葉に、レガートはにやりと笑った。
「ああ。もうひと押し、もうひと押しで全てうまくいくんだ」
「そのひと押しは、ボクは不要だと思うんだけど」
「なくてもうまくいくかもしれないが、あって困るものじゃないだろ」
 どう説得しても、レガートの気持ちは変わりそうもない。
 それに気づいた時点で、ブルタはレガートを「見切った」。
「そう。それじゃ、吉報を待ってる」
「ああ。任せとけ」
 成功を確信した表情で、レガートが次の手を打ちに向かう。
 それを見送ると、ブルタはすぐに隠れ家へと戻ることにした。
 レガートとは逆に、ブルタは彼の失敗をすでに予感していたのだ。

 ブルタの計略と刹那の働きにより、うまく契約者たちを分断した。
 その境界線に火種を投げ込めば、あとは契約者同士で勝手に相争い、チェロの警備は一気に手薄になる。
 その隙をついて、刹那が邸宅へ忍び込んでチェロを奪う……というのが、彼らの計画だった。
 そして、それはすでに八割方成っていた。
 今必要なのは、刹那が戻ってくるのを待つことだけだったはずなのだ。
 それなのに、レガートは「ただじっと待つ」ことに耐えられなかった。
 だからこそ、ブルタが「魔物を操って脅すのは非効率だ」と指摘したにも関わらず、「さらに魔物をけしかけて隙をこじ開ける」という「もうひと押し」をしたがったのだろう。
 だが、今それをすれば、「真犯人は他にいますよ」と相手に教え、せっかく作りだした混乱を収めてしまうことにもなりかねない。
 そしてそうなれば、作戦の成功どころか、レガートが逃げおおせることすら難しいだろう。

 隠れ家に戻ったブルタは、速やかに隠蔽工作を始めた。
 自分がこの場にいた痕跡を消去し、あくまでレガートが一人で全て企んだことにする。
 一通りの作業が終わると、ブルタは携帯電話を手に取り、ステンノーラに連絡を入れた。
「スノー、やっぱりあいつは使えない小物だったよ。せっかくボクらが手を貸してやったのにね」