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リアクション
第五章 弾けた火種 2
「……来たようですね」
最初に異変に気づいたのは、邸宅の北側に待機していたエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)だった。
「北の方から、おびただしい数の何者かが来ます」
「何者かって、何者?」
緋柱 透乃(ひばしら・とうの)の質問に、エオリアが答える。
「恐らく陽動のための寄せ集め、適当な動物か何かではないかと」
「なーんだ。それじゃあんまり強くなさそうだね、つまんない」
頬を膨らませる透乃に、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が苦笑する。
「大した相手じゃないなら、それに越したことはないと思うけどな。
それに、レディが傷跡が残るようなことをしちゃダメだよ」
そう言われて、透乃はもう一度自分の姿を見た。
もともと戦いを好み、スタイルにも自信を持つ透乃は、動きやすさを重視する都合もあり、戦闘を控えているというのにかなり露出の多い服装をしている。
「あはは、エースちゃんそんなことも気にしてくれるんだ? 優しいねー」
「まあ、女性を護るのも紳士の務めだからな」
そんなやりとりをしている間に、だんだんと地響きが近づいてくる。
「さて、それじゃ始めるか」
霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)のその言葉を合図に、泰宏と透乃、エース、エオリア、そしてエクスが素早く前方に布陣し、守りの構えをとる。
その後方にはトレーネと、さらに物陰には緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)も潜んでいる。
そうして身構えた一同の前に現れたのは――狂乱したように駆けてくる、無数の動物や魔獣の群れだった。
「強行突破狙い!?」
何らかの意図を持った襲撃ではなく、ただ単に暴走して突き進むだけ、といった様子の獣たち。
それに対して、真っ先にエクスが飛び出す。
「とりあえず、ぶっ飛ばせるだけぶっ飛ばせばいいんだよね!」
緑竜殺しの大剣をぶんぶんと振り回し、向かってくる動物たちを斬るというよりひっぱたく。
それに一瞬遅れて、透乃とエース、そしてエオリアも飛び出した。
「……って! 動物を傷つけるのも心苦しいが……!」
「全ての女性に怪我をさせないこと」を目標とするエースと、それをサポートするエオリアにとっては、先頭切って飛び出すエクスや透乃は一番大変な存在である。
とはいえ、相手には「戦意はない」ので、真っ向から来る相手さえ退けていれば、こちらが攻撃を受ける心配はない。
しかしその分、横を抜けて行く相手を阻止することは難しく――そこは、後ろの二人に任せるより他なかった。
「トレーネさん、合わせて行きますよ!」
「わかりましたわ」
駆け抜けて行こうとする動物たちを、陽子の「エンドレス・ナイトメア」の闇が飲み込む。
さらに、その効果範囲から漏れたものには、トレーネが「神の審判」を放つ。
これで動物たちの大半を食い止めることに成功し、邸宅の方への被害は最小限に抑えられた――はずだったのだが。
そうする以外になかったとはいえ、大きな魔法を連発したことが、邸宅周辺の警護をしていた他の契約者たちの目を引いてしまった。
背後から近づく人の気配。
やがて、数人の契約者たちが姿を現し……。
その先頭の一人を、物陰からの短剣が襲った。
「!?」
驚いて振り向くエースたちの目に、逃げ去っていく小さな人影が映る。
すぐにそれを追おうとする一同だったが……目の前にいた邸宅警備の契約者たちは、それとは全く別の解釈をしたようだった。
「くそっ! 最初から俺たちをおびき出すための陽動だったのか!!」
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