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リアクション
第五章 弾けた火種 1
「ああ、今この辺りちょっと物騒だからな。
お前たちも、落ちつくまでちょっとこの辺離れてろ、な」
ウォーレン・シュトロン(うぉーれん・しゅとろん)の言葉に、熊は「わかった」と言うように頷くと、踵を返してその場を去って行った。
「さすがじゃのう」
感心したように言うルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)に、ウォーレンは少し得意げな顔をする。
「ま、ざっとこんなもんだ。もともとあいつらもそんなに好戦的じゃないしな」
セニエ氏の依頼を受けた二人は、別宅外周の森を回っては、出会った動物たちを離れた場所へ避難させていた。
それはもちろん動物たちのためでもあるし、同時に敵が襲撃の際に操れる手駒を減らして戦いを有利にするという意味もある。
だが、全ての動物が話が通じる相手、というわけでもない。
「……ダメだ、こいつ完全にやる気だ。ちょっと痛い目見せないとわからないらしい」
二人が出会ったのは、やや空腹で気が立っているサーベルタイガーだった。
「やむを得んな」
臨戦態勢を取り、少しずつ間合いを詰める二人。
その足が目に見えない一線を越えた瞬間、サーベルタイガーが前を行くルファンに躍りかかった。
しかし、それも全て二人の計算通りである。
ウォーレンの風術がサーベルタイガーのバランスを崩させ、大きくのけぞらせる。
その隙をついてルファンが懐に飛び込み、加減しながら拳での連撃を見舞った。
相手が態勢を立て直すより早く、一度飛び退いて再び構えをとるルファン。
すると、サーベルタイガーもさすがにかなわぬと察してか、一声吠えていずこかへと逃げ去って行った。
それを見届けて、二人は構えを解き。
ウォーレンが、近くの大きな木に向かってこう呼びかけた。
「今のどうだった? お嬢さんたち」
それから少し遅れて、木陰からシェリエと火村 加夜(ひむら・かや)、そしてディミーアの三人が姿を現した。
「見事な戦いでした。お強いのですね」
「ああ、まあそれほどでもあるかな……なんてな」
加夜の言葉に嬉しそうな顔をするウォーレン。
ルファンはそんな彼の様子を横眼で見ながら、三人にこう言った。
「見ての通り、この辺りは危険だ。火急の用でもなければ、速やかに離れた方がよかろう」
「お気づかい感謝するわ。それじゃ、私たちはこれで」
ルファンに礼を述べ、他の二人を伴って去っていくディミーア。
その背を見送った後、ルファンたちは再び周囲の警戒に戻り……しばらくした後で、ウォーレンが思い出したようにこう言った。
「さっきの三人、みんな美人だったよなぁ。名前と電話番号聞いとくんだった」
その言葉に、ルファンは呆れたような顔をしたのだった。
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