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海辺のトコナッツランド【1】


「う〜……暑いね!」
 他校の友人と久々に会えたというのに、お互い出てきた第一声はこれだった。
 ジリジリと身を焼く熱線。ギラギラと照らしつける太陽。
 文字通り常夏の島の浜辺、遊園地『トコナッツランド』の入り口で、少女達は苦笑交じりの笑顔でお互い顔を突き合わせている。
「だがこうして遊べる事には感謝だな。
 この遊園地すら金を取らないというのだから、例のエリックという人物は余程の太っ腹と見える」
 そこそこの門構えの入り口を潜りながらアリサ・ダリン(ありさ・だりん)は友人達にそう言った。
「ふとっぱら?
 そういえば昨日そのエリックサンを見かけた人の話しだと、ばさばさーって黒いマントを着てたんだって。
 だからお腹が出ているかどうかは分からないみたいよ! あ。あのね、私の予想では中身はスタイリッシュな感じのオジサマなの」
 生真面目な顔でそういうジゼル・パルテノペー(じぜる・ぱるてのぺー)に、山葉 聡(やまは・さとし)は頭をかく。
「あのなぁ、太っ腹ってそういう意味じゃなくて……。
 しかしこの時期にマントだなんて変わったヤツって事は確かだな」
「怪しさ爆発だな。
 この遊園地も果たして普通のものなのか……帰るか?」
 口の端を上げるアリサに溜息を吐いて、聡はぐるりと周りを見回した。


 ゲートから真っすぐに走ってきた少女は、ウェルカムと書かれたボードの下で立ち止まると、後ろを向いて元気よく手を振った。
「お母さんお母さん! 最初に何に乗りましょうか!?」
「悠里ちゃん。時間は十分あるでるから、ゆっくり行くですよぉ」
「えへへ、楽しくってつい」
 佐野 悠里(さの・ゆうり)は舌を出して笑うと、母 佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)の手を取って中へと進んで行った。


「こんなに暑いし、日の高いうちは室内のものから行きたいな」
 額に手をかざしながら歩く神崎 優(かんざき・ゆう)の隣を、神崎 零(かんざき・れい)が寄り添って歩いている。
 零の両手は遊園地の地図で塞がれ、優の言葉を聞きながらも熱心に案内を見ているようだ。
「じゃあこの『ファントムマンション』っていうのは?
 お化け屋敷風の乗り物だって」
「俺はいいけど……大丈夫なのか?」
 優が言いながら零の顔を覗き込むと、零は頬を膨らました。
「へ、平気よ勿論!」
 くしゃくしゃと地図を丸めて鞄に突っ込んでいる零に、優は笑って手を差し出した。


「まずはアイス、それにポップコーン。
 それを買ったら次は……あ、あの猫の耳? 妙なアクセサリーも面白いな!
 乗り物は――」
 セドナ・アウレーリエ(せどな・あうれーりえ)はゲートをくぐったばかりだと言うのに少し疲れた表情の瀬乃 和深(せの・かずみ)の手を引き、
ぐんぐんと進んで行った。
 

 聡は視線を外さなければ見えない程低い位置にあるアリサの額を人差し指で突つく。
「俺達も楽しまなきゃな!」
 と笑って。