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対決、狂気かるた!

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対決、狂気かるた!

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狂気が狂気を呼び、狂喜と驚喜を呼び起こす

 第二試合が始まる前、良雄はナコトと交替する。

「第二試合 1回戦、海京かるた会 霜月さん対イルミンスールかるた会 セシリアさん。前に出て下さい」

 札を素早く取っていくセシリア。
 素早さは霜月も負けてはいなかったが、徐々に差は広がっていく。

「う……あ……わたくし、わた…く、しハ」

 霜月に勝利した所で、セシリアに装備されたオルガナートが廃人と化してしまってしまった。

「これで、自分が何も起こらなければ第三試合へ行けるのか。修行のため、もっと上へ行く為にも、それ」

 サイコロを振る霜月。

「……きる、キル、Kill!!!」

 突如大声で叫ぶと、霜月は走り出す。


「きる、キル、Kill!!!」


 壁を刀で斬り裂きながらどこかへ走って行く。
 どんなに遠くへ行っても、霜月の声は会場まで聴こえてくる。


「やかましい!!!」


 暴れている霜月に深海祭祀書は天のいかづちを発動させ、霜月を気絶させるとそのまま襟首をひっつかみ帰って行った。

「2回戦、海京かるた会 クマラさん対タシガンかるた会 ジェイダスさん。前に出て下さい」

 1回戦同様小さな体を全身で札を取っていくクマラ。
 対するジェイダスは徐々に薔薇が撒き散らされるようになっていく。
 エメは自分が変わってやりたい衝動を抑えながら試合を後ろで見ている。

「小さい体ながラ、けっコウやるな。おまえ」
「腕が短いとかゆーにゃあああ!」

 ムキになって札を取っていくクマラ。
 中盤が過ぎた頃、試合始めよりも薔薇の数が多くなっている事に誰しもが気付く。

「なんか薔薇が多くて見にくくない?」
「うん。肝心の札が見えないわね」
「というか、ジェイダスさまは?」
「あ、あれを見ろ!!」

 観客の誰かが指す場所を見ると、薔薇吹雪が飛び交う中で派手に狂っているジェイダスの姿が。

「さぁ、咲き乱れよ! 我は薔薇の化身、ジェイダス・観世院なり!!」

 咲き乱れる薔薇吹雪とその中心にいるジェイダスの美しい姿に感動する信奉者達。

「失礼します!」

 信奉者達が感動していると後ろに控えていたエメがジェイダスにひと声かけて、頭からすっぽりと白絹の袋を被せて口を縛り、封印のお札を張り付けると救護室まで運んで行った。



◇          ◇          ◇




 救護室。
 そこではエイボンの書が浄化の札で正気に戻した発狂者に、リカバリを使っている。

「はい。これで大丈夫ですわ。……それにしても兄さまは大丈夫でしょうか。参加している方の中ではクトゥルフ神話に関しての耐性もあるので、そう簡単には発狂をしないとは思いますが」

 別の場所ではアルコリアが治療済みの発狂者たちに、ヒプノシスをかけて眠りに誘っていた。

「ショゴスかわいい。かわいい、とてもかわいい。『てけりり』とか鳴き声ちょぉかわいい、かわいいかわいい、ほらもう怖くない。」

「ミ=ゴかわいい、ちょぉかわいい。わんわんおと同レベル、こわくないこわくないかわいいかわいい。想像してごらん、わんこと戯れる科学者系少女、萌えかわいいかわいい、ミ=ゴ萌え」

 耳元でそう囁き、恐怖を萌えにと移行させている。

 ルルイエテキストと魔術の真理は運ばれて来た犠牲者に、自らの魔導書に記された恐るべき内容を読み聞かせて、さらなる狂気の世界に導いていた。

「救護室でさらに発狂させてどうするのー!!」

 治療よりも発狂者を創っていく魔道書たちにヘルが悲鳴を上げる。

「呼雪君!」

 エメがジェイダス入りの白絹の袋を肩に担いで中に入って来る。
 早川 呼雪(はやかわ・こゆき)は浄化の札と命のうねりや応急手当を駆使して介抱していた手を止め入口の方へ顔を向ける。

「どうした?」
「すいません、中にジェイダス様入ってるんですが……もうこのまま治療お願いします。決して開けないでください。正気だと本人が仰っても本当にそうなのかちょっと判らない状況なので……っ」
「袋から出さないと、ちゃんと診られないんだが(そんなに酷いのか……)」
「そう言わないでください! 本当に誰にも見せられないのです。仕切りの中で治療してください」
「わかった。そこまで言うならちょっと待ってろ」

 救護室の一角に仕切りを作り、白絹の袋をその中で開けた呼雪。


「我は薔薇のけs…」


 突如大声で叫び出したジェイダスに浄化の札を貼る呼雪。
 少しは大人しくなるジェイダスに命のうねりをかけ、さらに命の息吹も施す。

「なかなか回復しないな。……そうだ、俺の絵を見せれば逆に回復するんじゃないか……?」

 閃いた呼雪は従者の動く肖像画―自分が描いた理事長の絵―を呼んでくる。

「呼雪……その絵連れて来ちゃったの!? うああ周りの人のSAN値がー。ただの絵は動かないよ! ああ! 額に! 額に!」

 動く肖像画を見つけてしまったヘルが叫びながら、仕切りの中へ入っていく。

「呼雪! ってなんでナチュラルにジェイダス理事長を膝枕してるのー!」

 仕切りの中では肖像画を見て気絶したジェイダスを膝枕している呼雪がいた。

「なんだ、うるさいぞ。理事長が起きてしまうじゃないか」
「寝てるんじゃなくて気絶させたんでしょ! なんだって膝枕なんて……」
「自分の学校の理事長だぞ?」
「いや理事長だから……って理由になってないっ」

 地団太を踏んでヘルはべりっと音がするようにジェイダスと呼雪を引き剥がす。

「ああん僕の膝枕がー」
「僕の膝枕がーじゃない! ほら、治療する人はわんさかいるんだよ」

 ヘルは呼雪を引っ張って治療に当たらせるのだった。



◇          ◇          ◇




 エメがジェイダスを担いで行った間に、クマラは第三試合へコマを進める事が決定し、現在はエリザベートと煙のかるた取りはエリザベートが勝利をおさめ、発狂判定をしていた。

「エリザベートさん、第三試合へ進出! 続いて……待って下さい。救護班、煙さんの後ろにいた方が発狂しています! ただちに救護室へ運んで下さい」

 加夜が次の対戦を伝えようとした所で、煙のそばにいた冥利が発狂していることに気付いた。

「ロリが1匹……ちびじゃり2匹……校長が……あれ皆悪プルギス!? えぇ!? 権力パネェ……もうだめぇ」

 ぐったりしている冥利を分御魂たちが運んでいった。