天御柱学院

リアクション

「１４回戦、タシガンかるた会　瀬島　壮太（せじま・そうた）さん対海京かるた会　小鳥遊　美羽（たかなし・みわ）さん。前に出て下さい」

　肩を回しながら入って来る壮太。

「なぁこれ、優勝したらなんか貰えんの？　金銭的な何か」
「称号と魔道書にお好きな旧支配者or外なる神の直筆サインがもらえます。金銭関係はありまえせん」
「貰えねえのかよ！　ち、しゃーねーとりあえず最後まで残れば勝ちなんだろ？　さっさとやろうぜ」
「ちょっと！　勝つのは私だもん。勝手に勝った気でいないでよ」

　試合が始まる前に小さな言い合いが続く。

「いい加減にしろよなー。けっこう喉に来てるんだからよ」

　良雄の制止と言えない制止で、試合はようやく始まる。

「いにしえの」

―――シュパン！

　手刀でかるたを滑らせるように取ったうえで、滑ったかるたをそのまま美羽に投げつける壮太。

「痛っ」

　額に当たった札は全く違う札。
　お手付きをした壮太に美羽は自分の陣から１枚札を送る。

「きょうここのえに　においぬるかな。……あま」

―――シュパン！

「痛っ」

　再び美羽に当たる、見当違いの札。
　美羽は１枚札を送る。

「みかさのやまに　いでしつきかも。……やせ蛙」

―――シュパン！

「だから痛いってば！」

　乱暴に札を送る美羽。
　どんどん美羽の陣にある札はどんどん減っていく。

　最初から最後まで壮太のお手付き連発であっさりと美羽の勝利が決まる。
　美羽が先にサイコロを振るう。

「やっぱ来たかっ。私、『女の子の体のヒミツ』を借りるね！」

　『女の子の体のヒミツ』で発狂を免れた美羽。

―――バキッ

　壮太は近くに飾られていた燈台のひとつを折るように外すと、それをおもむろに股間にあてがった。


「オレの光条兵器！」


　そう叫びながら壮太はイルミンスールから飛びおりていった。

「外にも救護班はいますし、大丈夫ですよね。美羽さん第二試合へコマを、壮太さんはここで脱落となります！」

　飛び降りていった壮太をそこまで心配せず、進行を続ける加夜。

「１５回戦、ヴァイシャリーかるた会　シーマ・スプレイグ（しーま・すぷれいぐ）さん対海京かるた会　アルハズラット著　『アル・アジフ』（あるはずらっとちょ・あるあじふ）さん。前に出て下さい」

　天貴　彩羽（あまむち・あやは）に送り出されてきたアルは特設会場に上ると、良雄のもとへ真っ直ぐ向かう。

「なーボクとあの子って魔道書的に仲間じゃん？　良雄、貸せよぉ？」

　そう良雄を脅すアル・アジフ。

「別にそう言わなくたって貸すっつーの。ほら」
「さんきゅー！」

　『女の子の体のヒミツ』を借りると、次にナコト・オールドワン（なこと・おーるどわん）が近づいてくる。

「お前、参加者じゃないだろ？」
「違いますわ。ずっとしゃべりっぱなしで辛いと思ったので、わたくしは声をかけたのですわ。敗者復活までの間でよろしいなら、代わってさしあげましょうか？」
「マジか？　サンキュ。実は喉カラカラだったんだよな」

　嬉しそうに代役を乗りあげたナコトに詠み札を渡して休憩に入る。

「こほん。これから敗者復活までの間、わたくしが詠み手となりますわ」
「私もかるたを頑張る皆さんに励ましの歌を歌います！」

　ちぎのたくらみで５歳児の姿をとった牛皮消　アルコリア（いけま・あるこりあ）が幸せの歌を歌い出す。
　それをバックミュージックに試合が始まる。

　アボミネーションで恐怖空間演出をするアル・アジフ。

「（これで畏怖対策はバッチリじゃん！　さぁボクこそが最凶の魔道書だってことを教えてあげる！！）」

「くとぅるふ・ふたぐん　にゃるらとてっぷ・つがー　しゃめっしゅ　しゃめっしゅ」
「わたのはら　こぎいでて」

―――ぱ、バシン！

　札を見つけたシーマが動くと、イヴィルアイと神の目で動きを見たアル・アジフがパワードアーム改で札を無理やり奪っていく。

「む……豆腐メンタルだからと馬鹿にしおって」
「にゃるらとてっぷ・つがー　くとぅるふ・ふたぐん」

　取ろうとする札をことごとく奪われていくシーマは　オーバードライブで札を取ることにする。
　それでも強引に札は奪われ続ける。

「しあわせな　きぶんで　かるたをしてくれば　てきみかたなく　みんな　しあわせ」

　最後の最後、サイコロで勝負をかけたシーマ。
　発狂してしまうと念じたが、アル・アジフは始めに良雄から奪った『女の子の体のヒミツ』で回避してしまう。

「アンキモアンキモアンキモ……」

　念も伝わらず、シーマは幻想の部屋の片隅で頭を抱えた。
　メモリプロジェクターでクラシックなど、フリーの音楽を流しながらと謎の呪文を唱えていく。

「いぁいぁ〜」

　アルコリアのBGMも終わりを迎え、１５回戦は幕を閉じた。