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パラミタ・ビューティー・コンテスト2

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パラミタ・ビューティー・コンテスト2

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東朱鷺

 
 
『それでは、次に参ります。エントリーナンバー2番、東 朱鷺(あずま・とき)さんです』
 シャレードムーンが名を呼ぶと、ゲートから東朱鷺のような物が現れた。
式神よ。いきなさい
 ステージ裏から、本物の東朱鷺が、式神と化したコピー人形に命じる。花道にむかって手刀の印を切ると式神が歩き出した。
 ステージにスモークがたかれ、その白い煙の中から陰陽師としての衣装を纏った東朱鷺の式神が現れた。
 ぎこちない動きで、式神が花道を進んで行く。
「なんですの? あれ、怖いですわ」
 また変な物が出て来たと、ユーリカ・アスゲージが非不未予異無亡病近遠にだきついた。
「人形のようですが……。なんで本人じゃないのでしょう」
 今花道を歩いている者が人でないことに気づいて、非不未予異無亡病近遠が言った。
「なんで、こんな紛い物を出場させたのでありますか?」
 代役を出場させるなんていい度胸だと大洞剛太郎がちょっとふんぞり返った。人形ではなく、生の女の子が見たいのだ。
 ちょっと観客たちが戸惑う中、東朱鷺の式神がぎくしゃくとステージに戻ってきた。
「翔歩!」
 突然、リンとした声がしたかと思うと。ステージ上空から、本物の東朱鷺がステージの上に飛び降りてきた。
 狩衣の裳裾がはためいて音をたて、東朱鷺がステージの上に降り立つ。
「たがえよ、影なるものよ」
 手にした扇子を式神にむけて東朱鷺が言った。烏帽子を被り幾重にも薄い単衣を重ねている。白い狩衣には、籠目を同じ白糸で縫い込んであった。その足許では、白の陽龍、黒の陰龍が弧を描くように這い回っている。
「我が名は、東朱鷺。摩するを許さず、我は一つなり」
 そう名乗りをあげると、東朱鷺が、持っていた扇子を勢いよく広げた。金と黒に縁取られた扇子が、スポットライトの光を照り返す。
 同様に、式神が扇子を広げ、まるで鏡像であるかのような動きを見せた。
 それを見て、東朱鷺が反閇の歩法で間を詰める。すぐさま、式神が同様の動きで応える。
 まるで演舞のように、華麗な足捌きで近づきつつ離れつつ、二人の東朱鷺が丁々発止で互いの扇子を打ち合った。
「場は成せり。臨兵闘者皆陣列在前!」
 反閇で場を清めた東朱鷺が、九字を切った。
悪霊、退散!
 東朱鷺が千羽鶴を放った。
 宙を舞う千羽鶴が式神を切り刻んだ。ボンという音と共に煙が立ち、式神が小さなコピー人形の姿に戻る。
陰陽術は面白いですよ。陰陽五道は全てに通じています。君も陰陽師になりなさい
 そう陰陽師の宣伝をすますと、東朱鷺はコピー人形を拾ってステージを去って行った。
「変わった演出だな」
 なかなか派手なパフォーマンスに、源鉄心が面白そうに言った。
「俺の方が派手だい」
 舞台裏で覗いていたアキラ・セイルーンが、ちょっと悔しそうに言う。
「いや、実に優雅であった」
「ええ、上品でしたわ」
 今度は迷わずにイグナ・スプリントとアルティア・シールアムがうなずき合う。
「ですが、どちらかといえば、後から式神を出した方がよかったですね」
 順番が逆じゃないかと、非不未予異無亡病近遠が小首をかしげた。
『それでは、審査員の方々、今のはどうでしたでしょうか』
 シャレード・ムーンが、エリシア・ボックと不動煙に訊ねた。
『派手ですわね。なかなかに華麗でしたわ』
ふみぃ〜ん。ちょっと難しすぎだねえ。もっと肩の力を抜いて楽しめる物の方がねえ』
 演出的にやや異論が出たものの、大筋ではかなり好評であったようだ。