リアクション
コーディリア・ブラウン 『エントリーナンバー3番、コーディリア・ブラウンさんの登場です』 「待っていたであります!」 パートナーの大洞剛太郎が、拍手でコーディリア・ブラウンを迎えた。 ステージに現れたコーディリア・ブラウンは、ゴチックなメイド服姿だ。黒いメイド服は、袖口が広がったベル スリーブで、白いサーキラーカフスがついている。その上に、半透明のお洒落なケープを羽織り、頭にはホワイトプリムをつけている。左右に分けた髪を三つ編みにしたお下げの根元は、大洞剛太郎にもらったリボンできっちりと縛られていた。短めのスカートは中のパニエで大きく広がり、足許はブーツできっちりと纏められている。 「えっと、こうでしたよね……」 小声でつぶやくと、深夜に一生懸命練習したモデル歩きで、コーディリア・ブラウンが花道を進んで行った。 練習したかいがあり、一歩ずつにスカートの下から覗いた脚がすらりとのびて美しい。 「ああ、綺麗な脚ですねー。そう思いませんか、コハクさん……コハクさん!?」 ちょっとうっとりしたようにコーディリア・ブラウンの美脚に見とれたベアトリーチェ・アイブリンガーであったが、隣に座るコハク・ソーロッドからの返事がないので、あわてて横を振りむいた。 「ズ、ズロースが、チラチラと……ぶふぁっ……」 花道近くで下からコーディリア・ブラウンを見あげる形になってしまったコハク・ソーロッドが、クルリとターンしたコーディリア・ブラウンの必殺奥義チラ見せデンジャーの直撃をくらって鼻血を拭いていた。 「きゃー、ローゼンクライネさん、鼻つまんで、つまんで!」 あわてて、ベアトリーチェ・アイブリンガーがオリヴィエ博士改造ゴーレムのローゼンクライネに命令した。コハク・ソーロッドの隣にちょこんと座っていたローゼンクライネが、ピッとコハク・ソーロッドの鼻をつまんで血を止める。 観客席のドタバタに気づかないほどに緊張しながら、コーディリア・ブラウンは無事ステージへと戻ってきた。 ステージ袖へと移動すると、反対側からアーチェリーの的が運ばれたきた。 大谷文美が運んできた癒やしの弓を受け取ると、コーディリア・ブラウンが弓を構えた。的にむかって平行に立つと、右手で矢を弦につがえて力強くまっすぐに引く。一瞬のための後、スッと指が弦から離れた。放たれた矢が、トンという音と共に的の中央に突き刺さった。 ほっとしたように一礼すると、コーディリア・ブラウンが自信に満ちた足取りでステージを去って行く。 「いい演出だな」 メイドさんと弓の組み合わせが最高だと、源鉄心がうなずいた。ちゃんと命中したのもいい。 「ちょっと、怖かったですわ」 緊張感に影響されたユーリカ・アスゲージが相変わらず非不未予異無亡病近遠にひっつきながら言った。 「でも、その緊張感がいいのでございます。あのフォームは完璧でございますよ」 「うん、優雅であったな」 アルティア・シールアムとイグナ・スプリントの方は、楽しんだらしい。 「うむ、戦うメイドさんも美しいものなのだな」 凜としたコーディリア・ブラウンの姿に、コア・ハーティオンもうなずいている。 『さて、審査員の方々、今のコーディリア・ブラウンさんのパフォーマンスはいかがだったでしょうか』 『惜しむらくは、少し派手さに欠けますわねえ』 シャレード・ムーンの問いに、わずかに残念そうにエリシア・ボックが言う。 『ええ、ちょっと固かったですねぇ』 不動煙が言った。 シェリエ・ディオニウス 『続いては、エントリーナンバー4番、シェリエ・ディオニウス(しぇりえ・でぃおにうす)さんです』 シャレード・ムーンに呼ばれて、シェリエ・ディオニウスがステージに現れた。 胸元の大きく開いた袖無しの白いワンピースで、スカートは短めだ。手には長手袋を填め、脚は白いストッキングで絶対領域をチラ見せしている。青い髪はいつものように大きな白いリボンで高い位置に纏めたポニーテールにしている。 「コハクさん、見、見ちゃいけません!」 また鼻血を噴かれても困ると、ベアトリーチェ・アイブリンガーがあわててコハク・ソーロッドの目をふさいだ。 「よし、こういうのを鑑賞したかったんであります」 ターゲットスコープを目に押しあてながら、大洞剛太郎が言った。 「胸」 「胸……」 「胸ですな」 「さ、三人とも、どうしたんですか……」 なんだか、同じことしかつぶやかないパートナーたちに、非不未予異無亡病近遠が少し焦った。 「あの胸は、パワフルだな」 「どこを見ているのじゃ」 いつの間にかまた目玉化して一点に見とれているアキラ・セイルーンの頭を、ルシェイメア・フローズンがポカリと叩いた。 なんだか不穏な空気を会場の女性陣にばらまきつつ、シェリエ・ディオニウスが花道の往復をしてステージに戻ってくる。 「みなさん、カフェ・ディオニウスをよろしくお願いしまーす」 両手を挙げて手を振ると、シェリエ・ディオニウスがステージから去って行った。 『ええっと、審査員の方々、どうでしたでしょうか……』 『にゃんとぉ〜、宣伝でしたねぇ』 あざといよと、不動煙が言った。 『ふっ、派手ですわね、胸だけ……』 ちょっと負け惜しみのように、エリシア・ボックがつぶやいた。 ジャワ・ディンブラ 『続いては、エントリーナンバー5番、ジャワ・ディンブラ(じゃわ・でぃんぶら)さんです』 シャレード・ムーンが、続いての参加者の名を告げる。 「はあ!? ジャワったら、いつの間にい!?」 聞いていないと、ココ・カンパーニュ(ここ・かんぱーにゅ)がアルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)と顔を見合わせた。確か、会場外で待っていたはずなのだが。 「彼女では、ステージが埋まってしまうんじゃないでしょうか。どうやって花道を歩くつもりなのでしょう」 「きっと、飛ぶんですよお。ばっさばっさあ」 戸惑うペコ・フラワリー(ぺこ・ふらわりー)に、のほほんとチャイ・セイロン(ちゃい・せいろん)が言った。 「そりゃいいかも」 無責任に、マサラ・アッサム(まさら・あっさむ)が同意する。 ゴチメイたちが戸惑う中、ステージに人影が現れた。 「えっ?」 「誰?」 ココ・カンパーニュたちが、ポカーンと口を開けて唖然とする。 そこに現れたのは、ドラゴニュートのお嬢さんであった。豪奢な髪が特徴的で、頭の両脇に二本の角が後ろにむいて生えている以外は、人間の容姿と変わりがない。スタイルのいい身体をワンレガーの黒のレオタードでつつみ、胸の上半分を被う濃い紫のマイクロキャミソールと、腰に同じ色のパレオを巻いている。その上から、袖無しのロングのシャーコートを羽織っていた。ちゃんと頭には、ゴチメイ隊の金リボンのついたミニシルクハットを斜に被っている。 「うっ、美脚です」 相変わらず、コハク・ソーロッドの目を両手で押さえたまま、ベアトリーチェ・アイブリンガーが言った。 「うむ、いろいろな意味で堂々としているであります。これは見応えが……」 大洞剛太郎は、目を釘づけにして鑑賞していた。 「隙がない……」 思わずちょっと身構えながら、イグナ・スプリントが言った。 「ふふふふ……。ここしばらく、ドラゴン化するドラゴニュートたちを見ていて、逆にドラゴニュート化する方法を研究していたのだよ」 なんだか、勝ち誇ったようにこそっとジャワ・ディンブラがつぶやいた。そのまま何ごともなかったかのように花道とステージを一周して、さっさと退場してしまった。 『では、審査員の方々』 『年齢は聞いては……いけないんですよねえ』 『ええっと、あのシルクハット、ゴチメイ隊の新メンバーですの?』 なんだか、こちらも混乱中のようである。 |
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