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夏の終わりのフェスティバル

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リアクション


第八章 リベンジ! リア充大作戦最終日!!


 こうして始まったリア充大作戦だったが、まず誰とリア充をするか、というところで話は止まった。

 一人は、キロスに斬りかかってきた女。
 一人は、キロスに発砲した女。
 一人は、パートナーに片思い中の女。
 一人は、パートナーと恋人同士の女。

 その場には、どう考えても適任者がいなかった。――に、思えた。

「キロスくん! 皆さんとお祭りを回っているんですか? 私も一緒に回っていいですか?」
 救いの手、とでも言おうか。キロスたちの元に、浴衣を着た杜守 柚(ともり・ゆず)がやってきたのだ。
 キロスから「リア充っぽいことをしたい」という話を聞いた柚は、喜んで同意した。
「キロスくんもリア充になりたいって聞いて嬉しいですよっ!」
「ボクも近くでフォローを入れるから、頑張ってみて!」
 杜守 三月(ともり・みつき)も、その案に賛成する。

「そういえば、キロスくんは香菜ちゃんと一緒じゃないんですね……」
 商店街から沿岸沿いへと向かいながら、柚はキロスに問いかけた。
「もしかして、香菜ちゃんにプレゼントを買うため? 私でよければ協力しますよ!」
「い、いや、そういうわけじゃ」
「どこかで香菜ちゃんに似合いそうな小物とかあったら勧めますね! お揃いの小物とか、嬉しいですよね」
 柚は勘違いをしたまま、楽しそうに歩いて行く。
「キロス、人ごみではさりげなく手を繋いであげるといいよ!」
 三月がこっそりとキロスに声をかける。
「その時は、早く歩き過ぎないように女の子に歩幅を合わせてあげて」
「そんなことで、魅力的になれんのか?」
 キロスは言われた通り、柚の手をぎゅっと握った。しかし、キロスの手の力が強かったのか、柚は一瞬痛そうに顔をしかめる。
「あっ、痛かったか? 悪い」
 柚はそんなキロスの様子に数回瞼をしぱたかせると、満面の笑顔になってキロスの手を握り返した。
「キロスくん! キロスくんがリア充になるのも近いですよ!」


 わいわいと騒ぎながら祭りを回ったキロスたちは、沿岸沿いの屋台でばったりと香菜とルシアに出会った。
 二人はお揃いのお面を斜めに被り、りんご飴を片手に祭りを回っているところだった。
「カフェの仕事は終わったのか?」
「午前中で終わったわ」
 香菜とルシアは長い間祭りを回っていたようだった。

「ルシア!」
 そこに、桐生 理知(きりゅう・りち)北月 智緒(きげつ・ちお)が現れた。
「お祭りの最終日だから、ロシアンカフェのスタッフは少し早めに閉店にしてビーチで打ち上げをするんだって。
 他にも参加する人いたら連れてきて欲しいって言われたんだよね」
 理知は皆に向かってそう告げる。
「そうしたら、香菜ちゃんはみんなと先にビーチに行ってみたら?」
「ルシアはどうするの?」
「私は理知ともお祭りを回る約束をしてたから、後からビーチに行くね」

 こうして、理知と智緒とルシアの三人は、ビーチに向かう皆を見送った。
「さてと! ルシアちゃんは行きたいところある? 私は何か一緒に食べたいな」
「私はさっきまでもここにいたから、二人のしたいことを先にしたいな」
 そう言ってルシアは、お面を指でちらりと持ち上げてみせる。
「智緒はどこに行きたい?」
「智緒の行きたいところはヨーヨー釣りよ。行ったことないから、やってみたいな!」
「じゃあ、まずヨーヨー釣りに行こうか!」

 三人はヨーヨー釣りを捜しながら、屋台を覗いて回った。
 賑やかな音楽。楽しそうな人々。理知はそんな雰囲気が好きなようで、嬉しそうにしている。
 そんな理知の横顔を、智緒がパシャリ、とカメラに収めた。
「二人ともこっち向いて! 記念に取っておきたいな!」
「今度はルシアも一緒に写ろ!」

 そうして 歩いていると、ようやく三人はヨーヨーの屋台を見つけた。
「がんばるね!」
 早速お金を払った智緒は、捩った紙の先の針を水面につけてドット柄のヨーヨーを狙う。
 だが、水につかった紙は持ち上げようとした瞬間に切れてしまった。
「あー、切れちゃったー……」
「私に任せて! 今のより大きめのヨーヨーを取って見せるんだから!」
 そう言ってリオは浴衣の腕をまくり、大きめのドット柄ヨーヨーを狙った。
「女の子なんだから腕まくりで意気込むのはどうなのかな〜」
 智緒がため息をつくが、理知は気にしない。
「お祭りは楽しんだもん勝ち! でしょ!」
「次は私もやってみたいな」
「もちろん! ちゃっちゃと取って見せるから、待ってて!」
 理知がヨーヨーを釣るところを、智緒はまたカメラに撮る。
 今度はルシアが智緒のカメラを受け取って、二人をぱしゃり。
「やった! ほら、取れたよ!!」
 三人は、大はしゃぎで祭りを楽しんだのだった。


 * * *


 その頃人工海岸のビーチのでは、メイド服を着た風馬 弾(ふうま・だん)が少しずつ増えていく客への対応に追われていた。
 ビーチに並べられたパラソル付きのテーブルは既にいっぱいで、ビーチ用のイスを大至急調達することになるほどだった。
「やっぱり、夕方になると夕陽を見るために混んでくるんだね」
「そうですね。やっぱり、素敵なシチュエーションだと思いますから」
 弾の質問に答えるノエル・ニムラヴス(のえる・にむらゔす)は、スクール水着を着ている。
 ビート板をトレー代わりにして、飲み物やケーキを運んでいた。

 弾は、憧れのリファニー・ウィンポリア(りふぁにー・うぃんぽりあ)を見習うためにこのアルバイトに応募した。
 けれど弾は今までにバイトをしたことがなく、ノエルも長い間眠りについていた。
 二人ともバイトに来ていく服装が分からず、迷走した結果この格好になったのである。
「僕はメイド服のフリルやスカートやニーソにもたまらなく違和感と羞恥心を感じるけど、きっとバイトってこういうものなんだろうなあ……。
 働くって大変だね、ノエル」
 弾は勘違いをしたまま、話を続ける。
「でも、僕も頑張ってリファニーさんのようになりたいな。前に失礼なことをしてしまったから怒ってないかビクビクだけど、
 お詫びのためにもしっかり働く姿勢を見せなきゃね」

 そんな弾とノエルの近くでは、清泉 北都(いずみ・ほくと)クナイ・アヤシ(くない・あやし)が慣れた手つきで客の応対をしていた。
「そういえば、リファニーさんってこういう仕事したことあるのかなあ? 仕事もしっかりしてたけど」
「どうなんでしょう。でも、リファニー様のことには興味がありますね。守護天使である私の遠いご先祖様の種族にあたるでしょうから」
 そんな会話を交わす北都とクナイの元に、リファニーがやってきた。
「そろそろ閉店の時間です」
「あれ? まだお客さんどんどん増えて来てるけど……」
「本店はもう少し早めに店を閉めたそうなので、早めに抜けて打ち上げにきた人たちでしょう」
「そうなんですね」

 店じまいをすると、リファニーと弾や北都たちは、本店のスタッフが集まるまでの間談笑をした。
 たわいもない話から、リファニー自身のこと。海京のこと……。
 五人の目の前に広がる海には、そうこうするうちに日は落ちきろうとしている。
 仰いだ空は橙と紫が溶け合って、綺麗なグラデーションを作っていた。

 ぱあん。

 どこか近くの海岸から花火が打ち上がった。集まった人々の間から歓声が上がる。
 リファニーたちも、他のスタッフたちの元へと向かって行く。
 北都たちはすっかりリファニーと打ち解けたようで、笑い声が海岸に響いている。


「最初はどうなることかと思ったけど、上手くいったね」
「ルシアの連れてきてくれた香菜ちゃんも、本当に良く働いてくれたわね」
 セラとヴェロニカは、そんなスタッフたちを遠巻きに見ながら、三日間の感想を述べ合う。
 そこから少し離れたところでは、何やら香菜とキロスが花火を見ながら話をしている。
 そんな二人の元に、遠くからルシアや理知たちが駆け寄ってくるのが、セラたちには見えた。

「……それじゃあ、三日間の成功を祝いにいくわよ!」
 セラとヴェロニカは、スタッフたちに打ち上げ開始の合図をするため、皆の元へと歩いて行く。

 また一つ、海岸の夜空に花火が打ち上がった。



担当マスターより

▼担当マスター

八子 棗

▼マスターコメント

 初めまして、こんにちは。八子 棗です。
 めっきり寒くなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 今回が初めてのリアクションでしたが、楽しんで頂けましたでしょうか。
 このシナリオで、(恐らく)今年最後の夏の思い出を作って頂けましたら嬉しく思います。

 それでは、また他のシナリオでお会いする機会を楽しみにしております。