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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 7

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 7

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第1章 砂漠の町・エリドゥ Story1

 -早朝、5時-

 エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)はカナンのエリアからも、何やら依頼を受けていた。
 依頼メールには、人々が急に人格が変わってしまい、暴れている…と書かれている。
 それは、幸な者を嫉む魔性が原因らしい。
「おはようございます、今回もよろしくお願いします」
 ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)はそう告げると、ラスコット・アリベルト(らすこっと・ありべると)とエリザベートにエクソシスト・免許を見せた。
「2人とも、おはよう」
「おはよう!」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)も軽く挨拶を交わし、服に小型カメラをつけてもらった。
「朝方だから涼しいわね!ルカも免許見せなきゃ♪」
 宿から出たルカルカ・ルー(るかるか・るー)はエリザベートに免許を見せる。
「チェックしましたぁ〜♪もう出発しますけど、忘れ物はないですねぇ?」
「出掛けにちゃんと見たから大丈夫よ」
「町に着いたらエリザベートちゃんはお留守番ですか?」
 免許を見せつつ、今回も留守番するのか神代 明日香(かみしろ・あすか)が聞く。
「はぁい。私たちは宿の中で〜、待機ですぅ〜」
「(幸せいっぱいの私たちが囮役にでも、と思ったのですけど…。私だけで、誘い出してみますか)」
 実戦を積んでもらう合宿ということもあって、エリザベートも立場上は明日香と同行出来ない。
「皆さん、エリドゥへ出発しますよぉ〜!」
 教師たちは祓魔術を学ぶ生徒たちを連れて、エリドゥの町を目指す。



「はぁ〜…。俺だけ、なんでこんな目に…」
 樹月 刀真(きづき・とうま)は荷物を抱えながら、ぶつぶつとぼやく。
 移動が面倒にならないように、最低限の量にしてあるのだが…。
 それプラス、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)のトランクケース、月夜自身が背中に乗っかって眠っている。
 彼女と同じ部屋の者に頼んで、起こしてもらおうとしたが、まったく目を覚ます気配がないため、仕方なく運んでいるのだった。
「眠い…。合宿とは、こんなに厳しいものだったのか」
「ただ単に、遊ぶためってわけじゃないからな、当然だろう。昼夜問わず遂行するもんじゃないのか?」
「む…」
「そのためにも、玉藻たちも早く慣れないと…うげっ!」
 背に何かが乗っかり、刀真はたまらず声を上げた。
「我もここで二度寝するとしよう」
 玉藻 前(たまもの・まえ)は月夜に抱きつき、すやすやと眠ってしまった。
 3人分の荷物を運ぶだけでなく、パートナー2人が背に乗っている状態は、刀真でもかなり厳しい。
「これ、何かの拷問か?ていうか、俺はベッドじゃないぞ、寝るな玉藻。校長も自分で歩いてるんだぞ、寝るな〜っ。もしもーし玉藻?」

 ―…返事がない、眠っているようだ。

「あぁっ、集団に置いていかれそうだ…。待ってくれぇえ〜」
 刀真はぜぇぜぇ息をきらせながら、追いつこうと必死に歩く。
「一つ質問じゃが、呪いの類というのは呪詛返しとかをするとどうなるんじゃ?魔性と人とで違いがあるのかのう?」
 町へ到着する前に訊いておこうかと、草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)はエリザベートに質問を投げた。
「魔性と人とでは扱う呪術の性質や、強さなどが異なりますぅ〜。呪い返しの術を使っても効果がありません〜。その呪いは術者に返りませんからねぇ、呪術者が本来狙った対象に、かかっちゃいますぅ〜。呪いの力が倍になって、かかることはありませんよぉ〜」
 呪い返しが失敗しても、それを仕掛けた本人が狙われた対象でなければ、倍返しなどはないと説明する。
 本来の威力のまま狙った対象へ、かかるということらしい。
「ほぅ…。通常のスキルなどでは、対処が出来ないということじゃな」
 彼らの扱う呪術に対抗手段として、クローリスの力で呪いにかかりにくくしてもらったり、ホーリーソウルで解除してもらったりするしかないようだ。
「ラスコット先生。…わ、私も…質問いいですか?」
 高峰 結和(たかみね・ゆうわ)はおどおどとした口調で、小さな声音で言う。
「―…うん、何?」
「うーんと、野生…という言い方も変ですけれど、今回のように暴れている魔性さんと和解して、協力してもらう契約をするようなこともできますか?」
「パートナー契約の意味じゃなければ、そういうこともあるかな」
「えっと…嫉みが原動力なら、グラッジさんも幸せに、えと、私がお友達になることができたら、うまく解決することができないかと思いまして」
「グラッジとか…例え悪さをやめさせて友達になれたとしても、協力してくれるとは限らないよ」
 中にはやっぱり人との共存は無理、という魔性もいる。
 元々の性格や生態系的なことなどを、簡単に変えることは難しい。
「(うぅ……相手によっては、協力してもらえない…ということでしょうか)」
 望みがないわけではないが、仲良くなれたとしても協力関係までには、至らないこともあるようだ。
「ねぇねぇ、私も訊きたいことがあるんだけど。“グラッジ”って表現しているけど、これは魔性に憑かれた人たちを示した言葉?それとも、不可視状態の魔性のことを指すの?」
 町に到着する前に訊いてみようと、セシリア・ノーバディ(せしりあ・のおばでぃ)も質問する。
「どっちも違うね。グラッジは、その魔性の名だよ。悪霊に分類される幸福を嫉む者だね」
「へぇ〜、名前なのね」
 憑依された者を示すわけでなく、不可視状態の魔性を示すものでもないようだ。
「先生、質問!魔性を発見したら何点ですか」
「点数ですかぁ〜?そうですねぇ、20点中、20点ですかねぇ〜」
「(うぅ、またしても…!)…発見したらラスコット先生の素性を教えて貰えますか」
 どちらも先生ということで、当然エリザベートも振り返る。
 校長が先に返答してしまったため、日堂 真宵(にちどう・まよい)はそのまま話しを続ける。
「それは、本人に聞いてみませんと…」
「聞かれる内容によるかな」
「…だ、そうですぅ〜」
「(ぅぐぐっ、そう返してきたわね)」
 何かを察したかのように返され、真宵はどう聞いてやろうか悩んでしまう。
「ぉ…俺も、…聞きたいことがあるんだが」
「なんかすごく疲れているみたいだけど、大丈夫?」
「―…あまり、大丈夫じゃない…。もう一種類の魔性についてだが、この魔性が使う呪いに対して、呪詛祓いや結界のようなスキルが多少なりとも有効か?」
「呪術は通常スキルだと効かないね」
「そういうものなのか…」
 呪いに対抗するには、宝石使いやクローリス使いと組んだり、連絡を取り合わなければいけないようだ。
「例えばグラッジは幸せを妬むんだろ?もう一つの魔性の呪術で不幸になった奴は、グラッジの対象から外れるのか?」
「外れないね、むしろもっと苦しめてやろうとするよ、ラルク」
「一切手加減なしってことか」
 悪霊は幸福な者が苦しめば苦しむほど、喜びを覚えるやつらしい。



「校長、俺にも被害者リストを見せてくれるかな?」
「はぁ〜い、エースさん」
「(青い髪の魔女って、まさかオメガさんじゃないよな?)」
 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は一語一句、見落とさずに見る。
「わぁーい!次の合宿場は、海があるんだね!臨海合宿だにゃん!きっと海の家とかあって、新鮮な海の幸もいっぱいあるはずだよ!!」
 真剣にリストを見つめているパートナーの傍ら、クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)のほうはうきうきモード全開だ。
「浮かれすぎだぞ、クマラ」
「え〜?だって、早く美味しいものたくさん食べたいし」
「(いいのか?こんな調子で…)」
 全力で楽しみたい♪と子供らしくはしゃぐ少年の態度に、エースは“頭痛がしそう…”とため息をついた。
「ねぇエース、何見てるの?」
「エリドゥでの被害者リストだ。この青い髪の魔女って、俺たちが知ってる女の子かもしれないんだ。万が一彼女だったら花持ってお見舞いに行かないとっ!!」
「お見舞いって、病院にいるリストじゃないんじゃ?」
「町にいる人々では、対象者を捕まえることも困難ですからぁ〜。病院にとどめることは厳しいですよぉ〜」
 魂を毒に侵食され凶暴化している者たちを、大人しく入院させることは無理だ。
 彼らに出来ることは、せめて被害者が自害しないように、止めようとする程度なのだろう。
「なので〜…その方々は、町や海で暴れている…ということですぅ〜。元々の人格が酷く変わって、もの凄く暴力的になっちゃう人もいるそうですぅ〜」
「リストにいる魔女がオメガちゃんだとしたら、そうなっている可能性がある…ってことだね」
「―…な!?そんなことをしでかす魔性を、放っておくわけにはいかないぞ」
 聞こえない程度に呟いたはずのクマラの声を、エースが聞き取ってしまった。
「う、うわ〜…エースが燃えてる。心配なのはわかるけど、怒っちゃいけないよ」
「あ…あぁ。分かってるって」
 エースはかぶりを振り、パートナーの声に怒りを沈める。



「今度は厄介な憑依をする魔性さんなのですね。呪いというのも気になりますが…」
 グラッジの能力でも厄介だというのに、正体不明の魔性が使う“不幸を招く呪い”とは、どのようなものか。
 フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)は歩きながら考え込む。
「やれやれ今度はリア充狙いの魔性かよ…。情報を聞く限り能力はネクロに近ぇし、嫌な予感しかしねぇな」
「ところでマスター。また”りあじゅう”って単語が出てきましたね?」
「そうみたいだな」
「私はリア獣ではありませんが、以前散々誤解されたので狙われないよう気をつけておきますね」
「(やっぱりそっち方向だと思っているのか。フレイが狙われないよう気をつけねぇと…、意味解ってないから大丈夫ってことはなさそうだし)」
 彼女の発音からして、何が対象だと理解してない。
 “リアルが充実している”のほうでなく“リアル獣”のことだと思っているようだ。
 お守りのように、大事に箱にしまっているレッドスターネックレスを、時折…箱の蓋を開けて見ては嬉しそうに、超感覚による狼の尻尾を振っている。
 プレゼントを大切にしてくれているのは、ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)も嬉しいのだが、そんなところを悪霊に発見されたら間違いなく標的にされるはず。
 ただ、嬉しそうな表情のフレンディスを見ると、“荷物に入れておけ”とも言いづらい。
「町が見えましたよ、マスター」
「ほー…。なんか、砂漠のオアシスみてぇだな」
 目を凝らして見るとレンガの建物が立ち並び、街路樹の姿もある。
「エリドゥに到着ですぅ〜!!宿までは引率しますけど、実戦は皆さんだけで行ってくださいねぇ〜」
 そう告げるとエリザベートは、生徒たちを宿泊する宿へ案内する。