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【ぷりかる】老婆とお姫様の贈り物

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【ぷりかる】老婆とお姫様の贈り物

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 フレンディスがポチの助が見つけた記事を確認しようとした時、木枯と稲穂が現れた。

「ポチの助くんだ。獣人姿だねぇ」
 木枯は嬉しそうにポチの助に声をかけた。
「……本当ですね。皆さん、事件解決に協力しているんですね」
 稲穂は木枯にうなずき、フレンディス達に挨拶をした。
 契約書破棄に奔走中ににフレンディス達を発見し、声をかけに来たのだ。

「えっと……犬違いですよ!」
 獣人姿のポチの助は木枯達を見るなりもじもじとフレンディスの後ろに隠れてしまった。言動も先ほどと違って控え目だ。
「……ポチの助くんだよねぇ。その可愛い尻尾はポチの助くんしかいないし」
 木枯はフレンディスの後ろからぴょこんと見える尻尾を見て言う。
「……違いますよ!」
 隠れたまま否定するも木枯の褒め言葉に尻尾を嬉しそうに振っているポチの助。

 じっと隠れたままのポチの助を見た後、優しい稲穂と木枯は
「……木枯さん、犬違いですよ」
「そうだねぇ。そっくりだったから間違えたよ。それじゃ、頑張ろうねぇ」
 分かっていても追求せずポチの助が主張する犬違いを受け入れ、フレンディス達に挨拶をしてから行った。
「はい、頑張りましょう」
 フレンディスは元気に手を振って見送った。

「……ご主人様、これを調べればいいですよ!」
 木枯達が消えたのを見計らってポチの助は姿を現し、記事を見せた。
「そうですね。お疲れ様です。どうですか? マスター」
 フレンディスは記事を確認した後、ベルクに訊ねた。ポチの助が見つけたのは、この街の住人が少し前に可愛がっていたペットが目を離した隙に消えてしまったというもので首輪には住所も書いてあり、病気持ちではなかったと綴られていた。
「……それについては住人に聞き込みをしてみるか。関係あるかどうか怪しいが、気にはなるな。グィネヴィアの国については図書館に文献としてはあるかもしれねぇが今は確認する時間は無いな」
 ベルクはこれからの方針を考え決定した。
「ご主人様、この僕が必ずや犯人を捜しますよ」
 いつもの豆柴に戻り、強がりな言動に戻っていた。尻尾は先ほどフレンディスの労いで嬉しそうに揺れていた。
 三人は犯人退治の手掛かりに記事について聞き込みを始めた。

「……子供を使ってグィネヴィアさんを酷い目に遭わせるとは卑劣な犯人だね。きっと心が腐敗しているよ」
 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は怒りながら言った。
「……少年の方にも何か事情がありそうですね。そちらは他の人達が何とか調べてくれるでしょう」
 エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)はイングリットから聞いた少年の様子が気になっていた。
「まずは情報だ」
 エースは早速、『人の心、草の心』で植物に話しかけた。
「エース、話し込まないようにお願いしますよ」
 エオリアは女性が被害者となり怒っているので植物どころではないだろうと思いながらも念を押したが、とっくに聞き込みを始めていた。
 エースが情報収集をしている間、エオリアに重要な連絡が入って来た。
「……? はい」
 エオリアはシリウスの情報を含んだ弾からの老魔女についての情報だった。
 情報入手後、
「エース、どうでしたか?」
 エオリアは聞き込みを終了させたエースに訊ねた。
「若い女性を見かけたそうだよ。それが声が違っていたと。グィネヴィアさんを知っていたみたいでね。見かけた若い女性がグィネヴィアさんの声をしていておかしいと思ったそうだ」
 エースは老魔女の目撃情報を話した。ここはヴァイシャリーなので植物がグィネヴィアの姿を知っていてもおかしくはない。
「そうですか。先ほど連絡がありまして」
 エオリアは手に入れた情報をエースに話した。
「……人体実験、か。更正するつもりは全く無さそうだね。しかし、助かったという事で安心したよ」
 老魔女の実験の被害に遭い、何とか救う事が出来た人々、老魔女の言動についてエースは他の仲間と同じように不愉快に思っていた。
「ただ、グィネヴィアさんを知っている様子でしたから確実に狙ったものですね。少年を騙したと明言し強烈な攻撃を受けても平気だったそうですよ。おそらく契約書のせいでしょう。それさえ処分すれば」
 とエオリア。
「……何もかも解決という事だね。とりあえず、俺達は犯人捜しだね。見つけ次第、それなりの対処をするよ。たとえ相手が女性でも。シヴァ、頼むよ」
 エースは手伝いにとロシアンブルーで左耳にタグのある使い魔:ネコに先頭を歩かせ、自身は『ディテクトエビル』で邪念や害を持っているだろう犯人を感知出来るようにしてから植物への聞き込みをしつつ捜索を続けた。

 ネットで見つけた情報を片手に聞き込みを始めてしばらく。
 『捜索』を持つフレンディスとポチの助の頑張りで記事に関連ある人物に遭遇した。
「その記事、私の友人が書いたんだよ。もう戻って来ないと思うんだよねぇ。だって、散歩中にあの魔女のおばあさんに吠えたんだから。それから二週間ほど友人は寝込んでペットは消えた。噂だけど、何か妙な実験をしている事があるってそれの犠牲になったのかも。この街のどこに住んでいるかは知らないよ」
 と心当たりのある若い女性から情報を得る事が出来た。
「そうですか。ありがとうございました」
 フレンディスは情報を提供してくれた女性に礼を言って見送った。
「……話からすると今回の犯人でもおかしくないな」
 とベルク。
「マスター、もし犯人に会って寝込んでしまっても心配ありません。私が守ってみせますから」
 フレンディスは証言の一部が気になっていた。ベルクやポチの助に同じ事が起きるのではないかと。
「……そうか。まぁ、そんな事は起きねぇと思うが」
 ベルクは気持ちだけ嬉しく頂いた。証言と今回の事件との関連性有無は不明な上に事実ならフレンディスも守るどころではないはず。むしろベルクが守っているだろう。
「ご主人様、心配ありませんよ。何が起きようともこの僕が必ず守って見せます!」
 ポチの助はいかなる時でもフレンディスのために役に立とうと胸を反らして言った。
「頼りにしてます。私も守りますね」
 フレンディスは嬉しそうに言ってポチの助の尻尾を喜ばせた。
 三人は他の仲間と情報のやり取りをしながら犯人と思われる老魔女捜索を街の端から端まで捜索を続けた。

 情報収集組。他の仲間が消火と少年や犯人の捜索に忙しい時。
「姿を確認したところ普通の少年に見えるが」
 夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)が舞花が念写した少年の姿を確認しながら言った。
「そうですよね。イングリットさんが言っていたように悪い事をするようには見えないですよね。会話はしどもどろで目が泳いでいたそうですし。何か火の手も上がっていますよ」
 とホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)はあちこちで発生している火事が気になる様子。
「人の良さそうな感じは確かですが、だからこそ疑われず簡単に隠れ蓑として利用された可能性があります。そう考えれば、会話中の挙動不審にも説明がつきます」
 ブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)は手持ちの情報を整理し、判明している事を言葉にした。
「利用した者として考えられるのは火事を起こしている者じゃな。悪人が秘密を簡単にペラペラと話すとは限らんからのぅ。こちらが探りを入れた方が早かろう」
 草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)は忌々しそうに遠くに見える火事をにらみながら言った。
「そうですね。無関係とは思えませんよね」
 ホリイは羽純の言葉に同意した。
「まずは、聞き込みをして少年が誰かに利用されただけか協力者なのか推測を確信に変えるしかないな。ついでに犯人のアジトも突き止めるか。もしかしたら何か良くないものが出て来るかもしれないが」
 甚五郎は今後の方針を決めた。
「もしアジトに犯人がいたとっちめてやるのです!」
 ホリイは力の入った声で言った。グィネヴィアや街に酷い事をした事が許せないのだ。
 とりあえず、犯人退治に他の皆が頑張っている間、甚五郎達は犯人、少年、グィネヴィアを繋げるものを探さなければならない。その繋がりによって良くないものが出て来たとしても。
 甚五郎達は少年と犯人について情報収集を始めた。