リアクション
事件からどれぐらいか経過した頃。
「ローザマリア様、グロリアーナ様」
紙袋を下げたグィネヴィアはローザマリアとグロリアーナを発見し、声をかけた。
「あ、グィネヴィア。どうしたの」
ローザマリアは突然の来客に驚き、喜んだ。
「大丈夫そうだな」
グロリアーナはグィネヴィアの元気な様子に安心していた。
「はい。皆様のおかげですわ。本当に迷惑をお掛けして申し訳ありません。これは今までご迷惑をお掛けしたお礼ですわ」
グィネヴィアは礼を言うなり、下げていた紙袋から凝ったラッピングを施した贈り物を二つ取り出し、ローザマリア達に差し出した。
「ありがとう。美味しそう」
「……早速、一口頂こうか」
ローザマリアとグロリアーナは受け取るなり中身を確認した。二種類のクッキーとカラフルなマカロンが入っていた。早速二人はマカロンを食べた。
「どう、でしょうか。ローザマリア様のパイには敵いませんが」
グィネヴィアは緊張しながら食べるローザマリア達を見守る。思い出すのは以前の親睦会で食したローザマリアが作った美味しいアップルパイやミートパイ。
「そんな事ない。とてもおいしいよ。どんな料理でも心がこもっているのが一番よ」
ローザマリアは笑顔で言った。味は当然最高だが、何より嬉しいのは自分のために作ってくれた事だ。
「なかなかの味だ」
グロリアーナはそう言うなりチョコチップクッキーを食べた。
「ありがとうございます」
グィネヴィアは本当に嬉しそうな顔で礼を言って他の人達へと配布に急いだ。
「マイト様!」
贈り物がたっぷりと入った紙袋を下げたグィネヴィアが現れた。
「グィネヴィア、今日は一人なのか?」
マイトはグィネヴィアの隣に誰もいない事に気付いた。
「はい。あの、ご迷惑をお掛けしたお礼を」
そう言ってグィネヴィアは贈り物をマイトに差し出した。
「あぁ、ありがとう」
マイトは礼を言って受け取った。グィネヴィアが命懸けで用意した贈り物を断るのは失礼だから。
「食べてみてもいいかな」
マイトは中身を開けた。二種類のクッキーとカラフルなマカロンが入っていた。
「はい。是非」
グィネヴィアはマイトの言葉に嬉しそうにしていた。
「あぁ……美味しいよ」
マイトはバニラ味のマカロンを食べて一言。
「ありがとうございます」
グィネヴィアは満面の笑みを浮かべ、礼を言った。
ここでマイトは
「グィネヴィア、もし何か起きて困った事が起きたら必ず誰かに話すんだ。迷惑を掛けてしまうなどと考えずに。君の周りにいる人は皆そんな事は考えない。この俺もね」
真剣な話を始めた。迷惑を掛けると気にするなとは言うが、それがグィネヴィアの性格なので言っても無駄だろうと知りながらも言わずにはいられなかった。
「……はい。マイト様、ありがとうございます」
グィネヴィアはマイトの心遣いに礼を言ってから次の配布相手へと言ってしまった。
「……一人だと危ないな。一応、連絡しておこうか」
去って行くグィネヴィアの背中を見ながらマイトはまた何か起きたらと思い、イングリットにグィネヴィアが一人で贈り物配達をしている事を伝えた。イングリットはすぐにグィネヴィア所へ行くと答えた。
「……今は安心と思っていいか」
連絡を終えたマイトはチョコチップクッキーを口に放り込んだ。
「……宵一様、リイム様」
紙袋を下げたグィネヴィアが宵一達の前に現れた。
「グィネヴィアさん、どうしたでふか?」
「……具合は大丈夫なのか?」
リイムはやって来た理由を訊ね、宵一は具合を気にかけた。
「……はい。皆様のおかげで大丈夫ですわ。それで今までご迷惑をお掛けしたお礼を」
グィネヴィアは元気に答え、贈り物を二人に手渡した。このためにわざわざ二人の元にやって来たのだ。ちなみに宵一の物はグィネヴィアが最後に自分で選んだ包装紙だったりする。
「あぁ。早速開けてもいいか?」
「ありがとうまふ」
受け取る宵一とリイム。
「……はい、是非食べてみて下さい。美味しく作れているといいのですけど」
グィネヴィアはうなずき、包装破り、中に入っている二種類のクッキーやカラフルなマカロンが入っている中、マカロンを選んで食べる二人を見守っていた。
「……とても美味しいよ」
宵一は感想を口にする。味だけ無くわざわざグィネヴィアがやって来た事も嬉しかったりする。しかも手伝いがあったとはいえグィネヴィアの手作りなので嬉しさは増す。
「……おいしいまふ。リーダー、チャンスでふ。言うでふよ」
リイムは感想だけでなく、宵一に今回の騒ぎの中、実行されなかった作戦を開始するよう促した。
「…………」
言うべきかと逡巡する宵一。
「……あの」
グィネヴィアは急に深刻そうな表情になった宵一が心配になった。
「リーダー」
こそっと小さな声で急かすリイム。その言葉を聞き、とうとう宵一は覚悟を決め、初めて会ってから湧き上がり続ける気持ちを言葉にした。
「……その、俺は君の事が好きだ」
宵一の告白に対するグィネヴィアの答えは
「はい。わたくしも宵一様の事は好きですわ。優しくて励ましてくれますもの。皆様にはご迷惑ばかりで」
笑顔で明るいものだった。以前の親睦会での仲良くして下さい発言と同じだと感じているようだ。実際、親睦会の時からいや初めて会ってから宵一はグィネヴィアが気になって仕方が無かったというのに。
「……」
天然なグィネヴィアの返事に言葉を失う宵一。
「……リーダー、言葉が足りないまふ」
ここで終わらせる訳にはいかないとリイムは必死に架け橋役を務める。
勇気を振り絞り、もう一度、
「……そう言う事ではなくて……何というか友達という事ではなくて……恋人にという事で」
宵一は言葉途切れ気味に理解し易く噛み砕いた告白をした。
「……あ、あの……あ、ありがとうござます……その」
宵一の二度目の告白にグィネヴィアは急にもじもじし始めた。思い当たる事はある。今回の事件では何度も気遣い励ましてくれたり、守ってくれたり、以前参加した親睦会の時は美味しい料理を自分のために作ってくれたり、仲良くしてくれたり、ダンスに誘ってくれたり。それが全て宵一の気持ちに繋がっていると知った途端、純真なグィネヴィアは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。どうすればいいのか分からないといった感じだ。
そんな時、
「……グィネヴィアさん、無事ですわね。渡しに行く際はわたくしも同行すると」
一人で皆に配りに行くと飛び出したグィネヴィアをマイトの連絡で知り、心配で追って来たイングリットが現れた。
グィネヴィアは救われたとばかりにイングリットの後ろに隠れてしまった。
「……グィネヴィアさん?」
訳の分からぬイングリットは後ろを振り返り、グィネヴィアの様子に首を傾げる。
「……贈り物はお渡しになったみたいですわね」
イングリットは宵一達の手にある贈り物を確認し、グィネヴィアに言葉をかけた。グィネヴィアはこくりとうなずいて答えた。
「……あぁ」
宵一はイングリットに答えるも気になるのはグィネヴィアの事だけ。
「……それでは行きますわ。残りは一緒に回りますわね」
イングリットは紙袋に入った贈り物の数を確認した後、宵一達に頭を下げ、グィネヴィアの手を引いて次の場所へと向かった。グィネヴィアの顔は真っ赤のまま、挨拶もままならない状態だった。
取り残された宵一とリイム。
「大丈夫まふ。嫌われていないでふよ」
「……そうだといいが」
リイムの励ましに宵一は何とも言えない顔で答えた。
参加者の皆様大変お疲れ様でした。
賑やかで素敵なアクションをありがとうございました。
今回で【ぷりかる】グィネヴィアシナリオ三回目となり、楽しいだけでなく少々のシリアスを含んだ話となりました。
皆様のおかげで老魔女は報いを受け、グィネヴィアは救われ素敵な贈り物を作る事が出来ました。
ティル・ナ・ノーグに帰省を決めたグィネヴィアを待つのは、フォリンと薬の答え、おそらく心楽しくない出来事でしょう。
そして、純真な彼女は巻き込まれてしまうのかもしれませんが、その際はどうかよろしくお願いします。
場面によっては表現が足りない部分があり本当に申し訳ありません。
最後に少しでも楽しんで頂ければ嬉しく思います。