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【ぷりかる】老婆とお姫様の贈り物

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【ぷりかる】老婆とお姫様の贈り物

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第二章 賑やかで楽しいお買い物


「さてと、行く前に林檎を元に戻さないと。確か眠りの毒だったよね」
「そうですね」
「始めるまふ」
 弾とノエルとリイムは引き受けた林檎の解毒化を始める。
 ノエルは『浄化の札』を使いリイムは『キュアポイゾン』で林檎の解毒化とグィネヴィアの眠り効果を消した。
「これで大丈夫だね」
 弾はほっと安心しながらまだ目を覚まさないグィネヴィアを見る。
「……あぁ、そうだな」
 宵一も少しだけ胸を撫で下ろしていた。なおもグィネヴィアの顔色は悪いが。
「んー、グィネヴィアおねえちゃん。おきるですよ〜」
 ヴァーナーはじぃとなかなか目が覚めないグィネヴィアの顔を覗き見た。
「あ、あの、もしかしたらグィネヴィアさんがかかっている他の魔法の影響でなかなか目が覚めないのかも」
 『博識』を持つリースが恐る恐る自分の考えを述べた。
「……それなら、もう一度、回復させたら、グィネヴィアちゃん、目が覚めるかも……でも目を覚まさなかったら……」
 日奈々がもう一度、解毒を提案するも悪い未来を想像し、言葉に確信は無かった。
「リーダー、もしかしてこれは王子様のキスで目覚めるのではないでふか?」
 リイムはこそっと宵一にとんでもない事を言っていた。
「え? キス!?」
 リイムの発言に大いに慌てる宵一。おとぎ話ではリイムの言葉通りだが、実際にするのはなかかな勇気がいるものだ。
 宵一はリイムの発言に困っていた時、
「……ボクが治すです。どくとかのろいとか飛んでけ〜」
 ヴァーナーは額に手を当てて『レストア』を使い、ぱっと手を離して悪い効果を遠くへ追い払った。
 ようやくグィネヴィアの重いまぶたが開き、目を覚ました。
「あっ、グィネヴィアおねえちゃん! よかったです〜!」
「……グィネヴィアちゃん、目が覚めて、良かった」
 喜ぶヴァーナーとほっとする日奈々。
「大丈夫か」
 ナディムはそう言いながらグィネヴィアを手助けし、ベンチに座らせた。
 グィネヴィアは声の出ない口を動かし、不安そうにみんなの顔を見回した。
「……すぐに良くなるわ」
 セリーナが笑顔を浮かべながら穏やかに言った。
 状態は悪いが周りに皆がいる事で少しだけグィネヴィアの心が落ち着いた事が目から感じられた。
「元気になるおまじないです〜」
 ヴァーナーはグィネヴィアの手を『キュアオール』を使いながらぎゅっと握り、ほんの少しだけ身を乗り出してほっぺに『アリスキッス』、ちゅーをした。
 そのおかげかほんの少しだけグィネヴィアの顔色が良くなった。
「えと、グィネヴィアさん、大丈夫だったらお買い物に行きませんか。イングリットさんから聞きました。本当は、どこかで休んでいた方がいいかもしれないですけど。あの、良かったらコレ、皆さんとお話しする時に使って下さい」
 リースがノートとペンをグィネヴィアに渡した。自分達が代わりに買い物をするよりもグィネヴィア自身が買い物をしたいだろうと思ったから誘ったのだ。
 早速、リースのお誘いの返事を書こうとするグィネヴィア。
「……」
 手に力が入らないのか紙に書かれた文字はぐにゃぐにゃでとても読めるようなものではなかった。その事にまたグィネヴィアは申し訳なさそうに伏し目がちになってしまう。
「グィネヴィアおねえちゃん、いいですよだったらマル、だめですよだったらバツ描いてくださいです〜」
 ヴァーナーがすかさずフォローを入れた。
「……」
 グィネヴィアは力を振り絞ってぐちゃりとしたマルを描いた。
「……えと、大丈夫ですか。私達がお手伝いします」
 とリースが皆の気持ちを代弁した。
 そこに目覚めるのを待っていた弾が
「……すぐに元気になるからそれまでみんなと買い物をしながらもう少しだけ待っててね。グィネヴィアさんの貰った林檎、とっても美味しい物だって聞いたよ。お菓子にしたらもっと美味しくなるよ」
 と言ってベンチに置かれたバスケットから一つ林檎を手に取りながらグィネヴィアを励ました。今回の事で林檎を貰った事を失敗だと思って欲しくないから。
「そうです。素敵なお買い物ですよ。絶対に助けますから信じて待っていて下さいね」
 ノエルも笑顔。迷惑なんか掛けられていないと示すように。
 グィネヴィアは弱々しくもこくりと二人にうなずいて感謝を表した。
 弾とノエルはすぐに小鳥捕獲に急いだ。

 弾達が去った後、
「……早速、お買い物に行きましょうか。その、マカロンなんかどうかなと思ったんですけど。クリームを挟まなければ保存も出来ますし、ま、混ぜるものによって色々な色のマカロンが作れて、か、可愛いかなと……」
「クッキーもどうですか? レーズンとかチョコチップとかおいしいですよ〜」
 リースとヴァーナーがグィネヴィアにお菓子について提案する。
「どれも美味しそうねぇ」
 セリーナは手を叩きながら賛成する。
「……マカロン、にクッキー、美味しそうだね、グィネヴィアちゃん」
 日奈々はリースとヴァーナーの素敵な案を聞いた後、グィネヴィアに言葉をかけた。
 グィネヴィアはマルを描いたページを皆に見せて賛成を示した。
「まぁ、世話になった奴等に礼をしたいってのは分かんねぇでもねぇけどさ……あんまり無理すんなよ。心配するからさ」
 グィネヴィアが賛成を示したのを見てナディムは無理が出来ない状態を心配した。
「ナディムちゃん、それは大丈夫よ。お買い物の途中に倒れたりしないように私の車椅子を使えば、心配無いわ。お買い物の間、私はレラちゃんとここでお留守番しているからナディムちゃんは、グィネヴィアちゃんのお手伝いをしてあげて。私の事は本当に心配ないから」
 セリーナは側にいる賢狼・レラの頭を撫でながらゆっくりと言った。
「……姫さん、一人にするのは心配だけど、そこまで言うなら」
 一人になるセリーナを心配するがナディムは強く言われ、買い物に同行する事にした。
「……一人で大丈夫ですか?」
 ヴァーナーは留守番のセリーナに言葉をかけた。自分達だけ楽しむ事に少しだけ気が引けている様子。
「レラちゃんがいるから大丈夫よ、楽しんで来てねぇ」
 セリーナはにこにこ笑いながらヴァーナーの頭を撫でた。
「うん」
 ヴァーナーは嬉しそうにこくりとうなずいた。
 宵一とナディムが力を合わせてセリーナとグィネヴィアを入れ替え、リイムに車椅子を押すよう言われた宵一が車椅子のグリップを握っていた。
「……私は」
 日奈々はどうしようかと考えていた。グィネヴィアの側で励ましてあげたいが、買い物に付き合うという事は苦手な人混みや騒がしい場所にも行かなければならない。
「日奈々ちゃん、行こうです。ボク達がいるからっだいじょうぶですよ〜」
 ヴァーナーは日奈々の白杖を持っていない方の手を握りながら声をかけた。
「あ、ありがとう、ヴァーナーちゃん……私も、グィネヴィアちゃんのお手伝い、したい」
 日奈々はヴァーナーの元気さに後押しされ、買い物に同行する事にした。
「グィネヴィアさん、大丈夫でふか」
 リイムはグィネヴィアの膝に座り、再び顔色が悪くなり始めたグィネヴィアのため『ナーシング』を使って症状が進行するのを緩和した。
「……早く、お買い物を、済ませて、グィネヴィアちゃんを休ませなきゃ」
 日奈々は慌ただしい様子にのんびり出来ないと言葉を洩らした。
「買い物はお菓子の材料だけか?」
 車椅子のグリップを握る宵一が心配そうにリースに訊ねた。
「えと、お菓子の材料とお菓子を包む物も必要です。買う物も量も多いと思います」
 とリース。作る料理は少ないが、様々な味のお菓子を作るとなると買う物も増えて贈る相手は多いはずなので大変な買い物になる。
「そうか……グィネヴィア保つか? 苦しくないか?」
 宵一はグィネヴィアの具合を聞いた。
「……」
 グィネヴィアは返事をノートで示さず、宵一に無理を押し隠した笑みで答えた。
「……だ、大丈夫ならいいが、我慢出来なくなったら言ってくれ」
 返事がノートで返って来ると思った宵一はグィネヴィアの予想外の返事に戸惑ってしまった。胸に湧き上がる想いが発する言葉を遅らせた。リイムは密かに見ていて原因も知っていた。
「……あの、お店に、着いたら二手に別れたらどうですか……材料を買う人と包装紙とかリボンを買う人に……そうしたら、少しはグィネヴィアちゃんの負担も軽くなる、はず」
 日奈々が時間短縮のための案をを思いつきながらも激しい人見知りのため発言する声は小さかった。
「日奈々ちゃん、名案ですよ〜!」
 ヴァーナーが嬉しそうに声を上げた。
「えと、そうですね。私達はグィネヴィアさんとクッキーとマカロンの材料を揃えます。いいでしょうか?」
 と買い物を最初に提案したリース。
「いいよ。じゃ、ボクはかわいいリボンとかステキな包み紙探すです。日奈々ちゃんとナディムおにいちゃんも一緒に行こうです〜」
 ヴァーナーは元気いっぱいに日奈々とナディムを誘った。
「……あ、はい」
 日奈々は誘いを受けた。同じ百合園女学院のヴァーナーがいれば、人混みの中の買い物でも精神的に安心出来るだろうから。
「……あぁ、いいぜ」
 ナディムは材料収集班を見て、グィネヴィアは大丈夫だろう確認してから受けた。

 リースは買い物に出掛ける事、事件の話はグィネヴィアが回復してから話す事を他の仲間に伝えた。その後、買い物組はなるべく火事から遠くてセリーナがいる場所から近い場所にある店を選んだ。それでも火事や煙に遭遇したが、宵一が『アイスフィールド』でグィネヴィアの身を守った。そして店に向かう間、みんなはグィネヴィアが不安や苦しみに負けないよう話しかけ続けた。とくに宵一は話しかける回数が多かった。
 店に到着するなり、材料収集班とラッピング用品収集班に分かれて買い物を開始した。