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【ぷりかる】老婆とお姫様の贈り物

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【ぷりかる】老婆とお姫様の贈り物

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 買い物組。お菓子の材料班。
「……あの、マカロンとクッキーの材料を買いましょう」
「……あぁ、始めよう」
「グィネヴィアさんは僕に任せるまふ」
 リースの買い物開始合図に宵一は賛同し、リイムは回復係として準備万端。
「……グィネヴィアもいいか? 我慢出来ないぐらい苦しいなら少し休んでからでも」
 宵一はグィネヴィアに声をかけた。リイムがいるが、苦しければ少し休んでからでもいいと。大事なのはお菓子ではなくグィネヴィアなので。
「……」
 グィネヴィアはマルを描いたノートのページを見せて返事し、気遣う宵一に声の代わりに笑顔で礼をした。
「……えと、まずは」
 グィネヴィアを返事を見てすぐリースは買い物最初に手近にあったクッキーの材料の一つである薄力粉をショッピングカートに入れようと手に取った。
「……選ぶ必要の無い材料は俺が片付けるからグィネヴィアが選ぶ必要のある材料を取りに行ってくれ。その方が、グィネヴィアの負担も減らせるはずだ」
 宵一はちらりと顔色の悪いグィネヴィアを見た後、薄力粉を入れているリースに言った。
「……えと、そうですね」
 リースは宵一の案に賛成した。
「……それでいいかグィネヴィア? 本当は買い物をもっと楽しんで貰いたいが」
 と宵一。ただの食材調達となっているので少しでも買い物を楽しむ事が出来ればと思っての事。
 グィネヴィアはマルのページを見せて答えた。
「……えと、マカロンやクッキーに混ぜる物を選んで来ますね。グィネヴィアさん、行きましょう」
 リースはグィネヴィアに確認してから宵一とバトンタッチして車椅子を押してほんの少しだけ買い物に付きものの選ぶ楽しみを味わいに行った。

「……はぁ」
 ため息をつきながらクッキーとマカロンの材料を入れて行く宵一。頭の中には具合の悪そうなグィネヴィアの姿。
 そこに
「……リーダー、グィネヴィアさんの事が好きなんでふよね?」
 リイムがやって来た。
「いきなり何だ」
 リイムが突然現れた事と発言内容に驚く宵一。
「知ってまふよ。グィネヴィアさんが元気になったら恋人になって下さいと告白してみてはいかがでふか?」
 リイムは宵一の恋心を知っていた。以前開催された親睦会と今回の騒ぎでのグィネヴィアに対する宵一の様子から知った事だ。この事を話すためにほんの少しだけグィネヴィアの元を離れて来たのだ。
「馬鹿言うなよ。俺みたいなしがないバウンティハンターに釣り合う相手じゃないさ……」
 宵一は冗談だろと流してしまう。気持ちは冗談ではないが、告白にはなかなか踏み切れない。
「大丈夫でふよ。リーダーはいい男まふ」
 リイムは何とか告白させようと頑張る。
「……リイム、とりあえず心遣いは感謝する」
 諦めている宵一はリイムの心遣いに感謝の言葉だけを言って止まっていた作業を開始した。
「……リーダー」
 リイムはこれ以上言うのはやめてグィネヴィアの元へ行った。胸の内ではまだ諦めていない。何とかチャンスを見つけ、宵一に告白させようと考えていた。

「えと、グィネヴィアさん。バニラにチョコに苺、抹茶もどうですか。クッキーはチョコチップとレーズンと。えと、もちろん林檎も使いましょう。と、とても楽しいですよ」
 リースは一つ一つグィネヴィアに確認していくが、全部マルばかり。
「戻ったまふ」
 そう言ってリイムはグィネヴィアの膝の上に座り、『ナーシング』を使い、症状を緩和させていく。

 しばらくして
「……何とか揃えてみたが、足りない物はないか確認して貰えないか」
 すっかり仕事を終えた宵一が来た。
「あ、はい……グィネヴィアさんをお願いします。えと、大丈夫です。そ、それじゃ、グィネヴィアさん、先ほど選んだ物を入れますね」
 リースはグリップを宵一に譲ってから宵一が入れた物を確認した後、グィネヴィアと選んだたくさんの味をショッピングカートに入れて行った。
 それから四人はラッピング用品収集班の元へと急いだ。

 ラッピング用品収集班。
「日奈々ちゃん、ナディムおにいちゃん、これかわいいですよ〜」
 ヴァーナーはグィネヴィアが気に入りそうな可愛いくて綺麗な包装紙やリボン、入れ物を見つけるなりどんどんショッピングカートに入れて行く。
「……ヴァーナーちゃん」
 日奈々は控え目な性格のためか元気に動き回るヴァーナーに静かに和んでいた。盲目でも気配で分かる。ヴァーナーがグィネヴィアのために一生懸命動いている事は。
「……結構、あるな。あとでグィネヴィアのお嬢さんに選んで貰うんだよな」
 ショッピングカート押す係のナディムはたっぷりと入ったラッピング用品を見ながら言った。
「そうですよ。きっと気に入るですぅ」
 ヴァーナーは自信たっぷりに答えた。
「……私も、そう思う。ヴァーナーちゃんが、一生懸命グィネヴィアちゃんのために、選んでいるから」
「日奈々ちゃん、ありがとうですぅ」
 日奈々の優しい言葉に嬉しくなったヴァーナーは思わず抱き付いた。
「……う、うん」
 控え目な返事をする日奈々は落とさないように白杖を握っていた。
「……もうこれで終わりにするか」
 ナディムがヴァーナーに買い物について聞いた。
「まだですよ〜、次は……」
 ナディムに答えた後、ヴァーナーは可愛い箱を見つけたが、棚の一番上。ぴょんと一度二度ジャンプをして取ろうとするが小さいヴァーナーの手には届かない。
「……どうした?」
 見かねたナディムが声をかけた。
「ん〜、ナディムおにいちゃん。あれ、取ってですぅ」
 ヴァーナーが目的の物を指さした。
「あぁ、任せろ。これか」
 身長のあるナディムはあっさりと取ってヴァーナーに手渡した。
「ありがとうですぅ……日奈々ちゃん、楽しいですか?」
 ヴァーナーはナディムに礼を言った後、日奈々に声をかけた。自分ばかりが楽しんでいるだけで日奈々は楽しんでいないかもしれないと気になったのだ。
「……楽しい、ですぅ。グィネヴィアちゃんのために、一緒に買い物が出来て」
 日奈々は気遣うヴァーナーに柔和な笑みで答えた。
「……日奈々ちゃん、待ってるですよ〜」
 ふと何かを思いついたヴァーナーはととっとどこかに行ってしまった。
「……えっ、ヴァーナーちゃん?」
 日奈々は急に動き出したヴァーナーをどうする事も出来ず、その場に立ったまま。
「……どこに行ったんだ」
 ナディムは走って行く小さな後ろ姿を見送りながら言葉を洩らした。