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冬のSSシナリオ

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『Overflows』
 
 
 
 夜もふけて雪が降り始めた頃、ある家では守護天使がお酒を片手に愚痴を零していた。

「だからさ、結局オレは二の次なわけだよ」

 唇を尖らせていじけているのはレイス・アデレイド(れいす・あでれいど)
 その横で話を聞きながら同じく酒を飲む柊 美鈴(ひいらぎ・みすず)と、早くも眠りの国へと船を漕ぎ出した神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)の姿があった。

 数時間前。
 前日から出かけるのを楽しみにしていたレイス。嬉しそうに出かけて行ったのだが、そう時間を置かないうちにお酒を大量に買い込んで戻ってきた。たまにはみんなで飲もうと言うレイスに、これは何かあったに違いないと二人は察して付き合うことにしたのだった。

 翡翠がおつまみを準備し、美鈴はお酒やカクテルの準備をする。

「翡翠ぃつまみ持ってくるの後でいいからとりあえず乾杯しようぜ」

 台所に戻ろうとした翡翠をひっつかまえてレイスは強引にカクテルの入ったグラスを渡す。

「いきなりですねえ……自分あんまりお酒は強くないですよ?」
「大丈夫。そんなに強いの入ってないし、今はとりあえず乾杯しよう!」

 何かに、と乾杯してそれぞれがグラスを口に運ぶ。
 ほぼ一気飲みに近い形でレイスのグラスの中身はあっという間に空になってしまった。

「あらあら、最初から飛ばすわねぇ……」

 早速二杯目へと行こうとしているレイスを見ながら美鈴はふふっと笑う。
 翡翠は一口飲むと、おつまみを取りに台所へと戻った。

「たまにはいいだろ? ものすごく飲みたい気分なんだって。あるだろ、そういう時」
「まぁそういう日もあるわね」

 美鈴も立ち上がって台所から料理を運んでこようとしている翡翠を手伝う。
 翡翠から料理を受け取る際に、結構重症みたいよ、とだけ伝えて美鈴は何事もなかったかのように戻ってくる。

「マスター特製、おつまみコースですわ」

 から揚げやサラダ、枝豆にフライドポテト。だし巻きたまごにスナック菓子と定番のおつまみがテーブルに並べられる。翡翠も席へと戻ってきて、いよいよ宅飲みが本格スタートだ。

「作っておいてなんですが、これだけ食べて飲んだら太ってしまいそうですね」
「あらマスター、それは飲みの席では言ってはいけませんよ」

 わいわいと三人でテーブルを囲んで話をする。三人で食事することはあってもこうしてお酒を飲む機会は少ないので、いつも以上に話に花が咲く。

「そういえばレイスは酔わないわね」
「確かに。酔っ払っているのをみたことがありませんね」
「翡翠はすぐダウンするけどな」

 ふふんと笑ってグラスを再び開けるレイス。顔も赤くならず、酔っ払っているふうでもない。ザルと呼ばれるアルコール耐性が強い部類に入るレイス、反対にほんの数口飲んだだけで顔が赤くなり、ようやく一杯あけたところで早くも酔いが回っている翡翠。美鈴は中間くらいだろうか、ほんのりと頬が染まっていた。

「久しぶりですので、あるこーるが回るのも早いですねぇ」

 カシスソーダを置きながら、早くも世界が回り始めた翡翠は笑顔でテーブルに突っ伏した。

「まったく。ようやく二杯目に入るぞってくらいなのに。本当に弱いなぁ翡翠は」

 そんなことないですよぅ、と少しずつ呂律も怪しくなってきた翡翠。
 いつもより上機嫌でいろいろと答えるが、会話がかみ合わないところもちらほら出てきている。ついにグラスの中身をひっくり返したのを見て、レイスは翡翠を抱え上げた。

「ほら、テーブルで寝ないでちゃんとベッドで寝ようなー」
「はいー」

 上機嫌のままレイスに運ばれて、翡翠は早々にベッドで眠りについた。