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リアクション
・せんせー、コタツに入った人は肉球つかないんですか?
ツァンダにあるショッピング街のとある大型家電量販店のテレビで、なぞの占い師の放送を聞いた夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)は、肩に乗っているルルゥ・メルクリウス(るるぅ・めるくりうす)と共に暖房器具コーナーへと戻ると深いため息をついた。
なぜならば……甚五朗のパートナーの草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)とオリバー・ホフマン(おりばー・ほふまん)もおまじないが掛かった炬燵に入ってしまい二人とも「うにゃ〜」と猫のように寛いでいるからだ。
同じフロアには、羽純達と同じように炬燵に入ってしまった者が何人か居る。
「あ……あの、助けて欲しい……のだが、その前にギャグを言いたいのだけどいいかな」
展示されていた小型の炬燵に入ってしまったアルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)は甚五郎に声を掛ける。アルクラントのパートナー完全魔動人形 ペトラ(ぱーふぇくとえれめんとらべじゃー・ぺとら)もアルクラントと一緒の炬燵に入っていて、助けてもらえる雰囲気ではない。むしろ、
「マスター、こたつぬくぬくで僕楽しいのにゃー」
と現在の状況を楽しんでいる。
黙ったままの甚五郎に、ルルゥが一言「どうぞ」とアルクラントが今やらんとした動作の続きを促した。
「ごほん。では……夏でもコート姿だったけど、それに違和感を感じた人は居るかい?」
「……わしはおぬしを知らないので答えようがないな」
アルクラントのギャグに真剣に突っ込みをする甚五郎だった。
「しまった! 初対面が多すぎてギャグにならない! ……油断もすきもにゃい……あ、にゃー」
「にゃー。マスターにも白い耳がついたのにゃー。僕の黒耳と一緒にゃー」
「にゃっ! くっつくんにゃにゃい! 暑いにゃ」
がたがたと炬燵が揺れるほど暴れ始めたアルクラント達は置いといて、甚五郎は羽純達の居るコタツをすり抜けて奥にある炬燵に近づいた。
奥にある炬燵には、レグルス・レオンハート(れぐるす・れおんはーと)とグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)が入っている。
「むっ、主のお顔が徐々に赤く……。もう少しご辛抱を。今方法を……主?! あ、主が俺の膝に! 主が頬を、主が……! 主、水分補給にみかんを剥きますのでお食べ下さいませ」
(可愛い。喉をくすぐった時の反応と頬擦りの仕草が特に。みかんのついでに指も食まれたが、それも可愛い。普段から触れられる事で安らぐ傾向はあるが……)
グラキエスに膝枕をし、炬燵の上に置いてあるみかんを剥き始めたアウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)と、グラキエスの猫耳が付いた頭を撫でまわしているウルディカ・ウォークライ(うるでぃか・うぉーくらい)の傍から見たら異様としか言えない人達が居た。
甚五郎とルルゥの視線にウルディカは気がつくと、二人向かってぐっ! っとサムズアップをしたのだ。
「ふぁー。そこのハイテンションになってる人、俺にもみかん剥いてくれよ」
寛いでいるレグルスがアウレウスに向かって言うと、アウレウスは
「なっ……これは主のために剥いているのだ。おまえにやるみかんは無い!」
えー……っと、言いながらもアウレウスを弄っているレグルスは楽しそうに見える。
「みかんならここにもありますよ」
甚五郎達が居る後ろから女性の声が聞こえたかと思うと、お手玉を投げるかのようなスピードでみかんが飛んで来た。
甚五郎が素早く振りかえると、そこには布袋 佳奈子(ほてい・かなこ)とエレノア・グランクルス(えれのあ・ぐらんくるす)が二組とは違う炬燵に入って居た。
「……ええっと、さっき見た時はそこに炬燵はなかったのだが」
「にゃんだっけ。あの緊急放送が放送されている間に炬燵に入ってしまい抜けだせにゃくにゃってしまったの」
ほんわかとした口調の佳奈子の言葉に甚五郎は盛大なため息をついたのだった。
「貴重な戦力が……」
「うわっ! みかんの汁が飛んで……この匂い……臭いにゃ!!」
佳奈子から受け取ったみかんの皮を剥いていたレグルスが突然そんな事を言ったかと思うと、剥きかけのみかんを炬燵の天板の上に置いたのだ。
臭いと言われ、猫化した人達が一斉に匂いを嗅ぐかのように鼻をひくひくさせる。
「確かに少し鼻の奥がすっきりするような匂いが漂っていますね」
鼻をひくつかせながら、エレノアが答えると、炬燵の上のみかんを食べ終わったオリバーが甚五郎を呼ぶ。
「もうみかんを食べ終わったのか。相変わらず大食いだな」
「ああ。だから今度は山盛りのみかんを買ってきてくれよ。ダンボール買いでもいいぞ!」
にゃはは。と笑うオリバーに冷たい視線を甚五郎は向ける。
「わかったよ。わしとルルゥしかこの場では動けないから、みかんのダンボール買いは無理だが買ってきてやる」
甚五郎は肩を竦めると、家電量販店から外へと向かったのだった。
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