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人狼と神隠しとテンプルナイツ

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人狼と神隠しとテンプルナイツ

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 第1章 調査とトラップ
〜町中調査〜


「神隠しが起こるようになったのは、いつ頃?」
「んー、城から指輪がなくなってからだからーえーっと。うーんっとー」
「そんなにはっきりしないのでありますか!?」
 清泉 北都(いずみ・ほくと)の問いかけに呻吟(しんぎん)するパン屋の娘に、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は思わずツッコミを入れた。
 マリアは後ろでこのときのやりとりを静聴していたが、ここまでは特に新しい情報はなかった。
 それからようやくして、パン屋の娘は何かを思い出したようだった。
「思い出しましたっ! 先月ですよ。先月の20日くらいに」
「ちなみにどんな人が神隠しにあってるかも分かる?」
「んーとね……えーっと?」
 また、パン屋の娘は思い出そうと頭を抱え込み始めた。
 
「これだと、情報を全部聞けるのに相当な時間がかかりますな」
「そう……ですね」
 半分呆れたように、吹雪はつぶやいた。
 吹雪は密かにマリアに、確認しようと思っていたことがあった。
「マリアは、人狼の指輪を回収してどうするつもりでありますか?」
「え? その……一応テンプルナイツで保管しておこうと思います」
 マリアは少し詰まりながら答える。
 それを見た吹雪は表情を変えずに「何のために?」と聞くがマリアはこれもまたすぐには答え無かった。
「一応、危険な指輪だから……」
「指輪は本来なら博物館とかのほうが良いではないでありますか? テンプルナイツの方が少し不安がありますが」
 歯切れの悪い答えに、吹雪はしっかりとした答えを聞くまでは納得いかなかった。
 ようやくしてマリアは小さく頷いた。
「……」
「まあまあ、でも、危険な指輪だしね。ちゃんとどうするか考えておかないとね」
 マリアを睨む吹雪の間に、割り入るようにしてコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が明るい声で入ってきた。
 そこでマリアはようやく2人が、指輪を持って帰るのではと疑われていることに気がついた。
「……仕方ないですよね」
 マリアは弱気で話す。
 これまでのグランツ教が関わってきた事件のこともあり、はっきりと指輪の事を問題ないとは言えなかった。
 それでも、どうしてもマリアはある考えを遂行するためにも、命令された指輪を手に入れる必要があった。
「私は、指輪をしっかりと安全な場所を避難させます。どんなことがあろうとも……」
 突然、強い口調でマリアは言い切る。
 吹雪とコルセアは、少し驚きながらも顔を見合った。

「誰でもかまわず……ねえ」
 そのころ、北都はパン屋の娘からあまり的を射た答えがもらえず考え込んでいた。
 しばらくすると、クナイ・アヤシ(くない・あやし)に北都は肩を叩かれた。
「あちらで、なにやら不穏な動きが……」
「不穏な動き?」
 北都、吹雪、マリア達は、パン屋の娘と別れ、クナイが”禁猟区”により不穏な動きを感じ取った場所へと向かった。