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リアクション
まえおき
「いっぱい殺したんだね〜。怖い怖い。まぁソイツをこれから捕まえにいくわけだけど」
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)はそんな事を呟きながら手元の雑誌のページをめくる。
時刻は夜の6時前。場所は空京、シャンバラ国軍の駐屯地。その一角にある研究棟の一室だった。
彼女が読んでいる雑誌は、すぐ近くにある本屋で購入したものである。巻頭特集には巷で噂の『切り裂きジャック』が取り上げられていた。『次の犠牲者は貴方かも……!?』などと、記者による勝手な考察がたらたらと述べてあり、殺人現場などの写真も載せられている。
「次の犠牲者……ねぇ? こんな禍々しく書かれても、誰も自分が襲われるとは思ってないよね。一般人にとっては『死』の実感が沸かないんだもん。……やられた人は運が悪かっただけーってね」
そうして、被害者の詳細な情報などを見て、ただの記者がよくもまぁこんなに調べられたねーなどと物思いにふけっていると、不意に男の声がした。
「ルカ、結果出たぞ。見ろ」
ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)はそう言って紙の束をルカルカに渡す。
「えぇと、何の結果だっけ? DNA鑑定?」
そうだよ、と適当に相づちをうつダリル。
ダリルは研究棟の施設を利用して、今回捕獲しようとしている人物、通称『切り裂きジャック』のものと見られる毛髪のDNA鑑定をしていた。被害者現場から回収できた白い毛髪を、法医学的な観点から見て何か得られる情報がないかと思い、鑑定していたのだった。
「ふむ? まずこの毛髪は人工物ではなく、生物であると。んで人間。年齢は10〜20代? 若いね」
ダリルは続けて、別の紙束を渡す。
「被害者状況をまとめたレポートな。こんな雑誌なんかより、ずっと正確に記録されてるぜ」
「ふぅん? ……あらぁ、こりゃまた派手にやったんだね」
ルカが目を通していたレポートには、現場状況から被害者の人間関係まで事細かに記してあった。
「狙われるのは女限定ってのが本家に似てるところがあるね。死体の状況もただただ身体を切り裂くだけじゃなくて、身体の一部分を截断して持ち去られていることがある、と」
「そうだな。そして、6人の被害者全員の殺害状況を照らし合わしてみたのだが、何の関連性も出てこなかったんだ。死体の『切り方』、『切除された身体の一部分』、その他諸々。さらに人間関係を見ても関連性無し。関連してることは『若い女』ってことだけ。女限定の無差別殺人ってことだ」
「つまりは、犯行のパターンを読むことはできず、次の被害者候補を絞ることもできない、と。了解。じゃ、その情報をまとめて、今回の作戦に参加してる契約者達にメールか何かで送っといて。私達は引き続きジャックについて調べるから、判明したことから順次情報拡散できるようにしておいて」
「もう情報は送ってあるが……。調べるって何を調べるんだ?」
「法医学的な捜査は済んだし、とりあえず、これまでの殺害現場に行こう。実際に見てみないと分からないこともあるだろうしね」
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