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平行世界からの贈り物

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平行世界からの贈り物
平行世界からの贈り物 平行世界からの贈り物

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 校長室。

 入室するなり白銀は『超感覚』で双子とエリザベート達以外の匂いは無いかと探った結果、
「……時間経過で随分薄くはなっているが何かの香水か?」
 誰かが入室した気配を嗅ぎ取った。
 その時、
「重要な人物を発見したから連れて来たよ」
「……その……」
 北都が大人しそうな女子生徒を連れて現れた。『禁猟区』で警戒しながら目撃者捜して見つけた重要な人物である。
 女子生徒を見た途端、
「……その匂い、この部屋に入ったのか?」
 白銀の鼻が反応した。五人目の入室者が目の前にいると。
「は、はい。校長宛の手紙が廊下に落ちていて……それで……届けたんです。机に置いておけば気付くと思って校長には言わなくて……拾った時間は、上映会をすると言った後です。私が校長にきちんと伝えておけば……本当にすみません」
 女子生徒は手紙を置いた場所を指し示しながらおどおどと話した。
「気にするな。しかし手紙、か。机には何も無いぞ。読んだ感じも無かったし、どこかに落ちているのかもな」
 白銀はもしかしたらと狼姿となり人では見落としがちな場所を探し回った。
 そして、
「……あったぞ。机の下だ」
 白銀は机の奥の隙間に落ちている事を見つけて見事に救出し、北都に渡した。
「きちんと宛名が書かれているね。当然、差出人は無いみたいだけど」
 北都は隅々まで確認したが、手掛かりらしき物は無い。
「とりあえず、持って行くか」
 獣人姿に戻った白銀はさっさと退出した。北都は先に情報を銃型HC弐式・Nで拡散しておいた。そうすれば、戻った時に話が早いので。
 女子生徒とはここで別れた。

 大図書館。

「資料を探しに来たのだが」
 グラキエスがゴルガイスとウルディカを連れ、入館。
「はい。アーデルハイト様からの知らせは聞いております。いくつか資料を集めてみました。どれが必要かは分かりませんが」
 アーデルハイトから連絡を受けた女性司書がグラキエス達を快く迎えた。しかも机には用意したと思われる書物がいくつか置かれていた。
「……助かる」
「ここにあるものが全てか?」
 グラキエスは司書に礼を言い、ウルディカが念のためにと訊ねた。
「いえ、さらに奥に行けば、まだあるかと思いますが、連絡を受けて用意出来たがここにあるもので……」
 司書は申し訳なさそうに答えた。知らせを受けてからそれほど時間はなかったのだから当然と言えば当然の事。
「……棚にある場合もあるという事か。手分けをした方が早そうだ」
 グラキエスはは多くの本が眠る棚の方に目をやりながら言った。
「俺は他にあるか探したいんだが」
 グラキエスは他の書物捜索を願い出るも机の書物が気になるらしくちらり。
「これは俺が確認しておく」
 察したウルディカが処理を申し出た。
「あぁ、頼む」
 グラキエスはウルディカに任せ、最奥へと向かう。
 そのお供に
「我も手伝おう」
 ゴルガイスを連れて行く。見た目とは裏腹にインテリでもある。
「私も本を探すお手伝いをしましょう」
 二人では大変だろうと司書も手伝うべくグラキエスの後について行った。
 それぞれの場所で調査が始まった。

 しばらく後。
「……違うな」
 確認終えたウルディカは最後の書物を閉じ、息を吐いた。

 最奥。

「グラキエス、見つかったか」
 『博識』を有するゴルガイスは手際よく書物を確認していたが、今のところは発見出来ていないためグラキエスの案配を訊ねた。
「……あぁ」
 グラキエスが発見したのは割と薄い本で題名や筆者名が無い物であった。数ページ確認したところで『博識』を持つグラキエスは求める物だと察した。字もカードと同じだった事もあるが。
「……こんな本があったんですね。ここで仕事を始めてから見た事がありません。あ、でもここは量が多いからそういう本は他にもありますけど」
 司書は見覚えのない書物に首を捻った。
「確認してみた方がよかろう」
「そうする」
 ゴルガイスに促され、グラキエスは『サイコメトリ』で情報を読み取る。
 そして、読み終わると
「この本を棚に置きながら貴方達がこれを見れば自分について知る事が出来るだろう、発見されてもされなくても構わないのだが、とつぶやくのが見えた。視点はやはり送り主だった。そして、映像が届く前だ」
 とグラキエスは先の読み取り調査と似た結果をゴルガイスに報告した。
 この後、ウルディカの元に戻り、三人で少々話し込んだ。
「書物に必要な事が書かれていなかったのは、読み取る事で判明すると知っていたからだろう。本を置きに来た手段で今回の映像を送りに来たと考えるべきだ」
 とウルディカ。
「一度来たとするとこちらの事を知っていても何ら不思議は無いと言う事か。こちらの事は知っているが、相手が自分の事を知らないというのに不公平でも感じたのか、平行世界を知って貰うには自分を知って貰う必要があったのか……いずれにしろ必要な情報と捉え残したと考えるのが妥当であろう」
 とゴルガイス。
「……しかし、送り主が俺達に与えるべきだと思う情報しか残っていないんだな。もう少し余計な情報が残っていてもいいと思うんだが」
 『エセンシャルリーディング』を有するグラキエスはこれまでに収集された情報を振り返り、見え隠れする要点に目を向けた。
 それを聞いたゴルガイスは
「つまり、上手く調整された情報を与えられ、我らは利用されようとしていると」
 グラキエスの言葉を上手く形を変えて聞き返した。
「……そんな気がする。本当に気がするだけだが」
 グラキエスは確信が無いためあくまでも仮定だと主張した。
 この後、報告のためアーデルハイト達の元に帰還した。