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リアクション
「これはひどい」
サンタ姿の神条 和麻(しんじょう・かずま)が、遅ればせながらルシアの部屋へとやってきた時には、室内は荒れ放題になっていました。
パーティーで大騒ぎしたのか、散らかっています。
ルシアがコタツに入ったまま眠っていました。反対側では、人間姿のブリュンヒルデも、みかんを食べかけたまま顔を机に載せて気持ちよさそうに寝息を立てています。
和麻は、やれやれと肩をすくめます。
彼が来るのが遅くなったのは、ルシアのアパートの周辺をうろうろしていた不審者たちを一人残らず始末していたからだったのです。
奴らが自滅するのは勝手ですが、ルシアに迷惑を掛けるのは許せません。
ルシアの楽しい一時を乱さないように静穏に事を運んでいたため時間を取られましたが、おかげで彼女らは、何も知らずによいイブの夜をすごせたようでした。
それだけでいいのです。
「勘弁してくれよ。俺はプレゼントを持ってきただけなんだぜ」
ルシアの夢をかなえるためにサンタになってやってきた和麻は、ぶつぶつ言いながらも満更でもない様子でルシアの部屋を片付け始めました。
食器を洗い、床に掃除機を掛けていると、ルシアが目を覚まします。
「?」
「あ」
和麻は、思わずしまったという顔になりました。彼は今、サンタなのです。どうして部屋の掃除をしているのでしょうか。
「メリークリスマス。サンタさんじゃよ」
口調と声色を変えて、和麻は言いました。誤魔化しきれるでしょうか。
「本物なの?」
寝ぼけ眼のルシアは目をぱちくりさせながら聞いてきました。
「もちろんじゃよ。ほれ、よい子のルシアにプレゼントを持ってきたぞい」
和麻はルシアにマフラーを贈ります。外は寒いので気をつけて欲しいとの思いからでした。
「今夜、たくさんのサンタさんが来てくれたわ」
ルシアはぽつりと言います。
「そのようじゃな」
積み上げられたプレゼントを見ながら和麻は答えました。ルシア、どれだけ人気者なのでしょうか。
「ワシもその一人じゃよ。なに、ルシアが喜んでくれればそれで満足じゃ」
「うん、幸せ。ありがとう」
ルシアは、そう言うとすやすやと眠ってしまいます。
「これ、コタツで寝ると風邪を引くぞ」
仕方がない、と和麻はルシアを抱き上げ、ベッドへ運びました。布団を掛けてやりそっと呟きます。
「おやすみ。よい夢を見てくれよ」
ブリュンヒルデにも上着を掛けてやった和麻は、そっと立ち去ります。これだけで十分です。ルシアの幸せそうな顔がなによりでした。
彼女らの平穏無事な夜は保たれたのでした。
かくして、奇跡のプレゼント作戦は、無事に幕を閉じたのです。
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