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リアクション
さて、一方。
空京に住むエンヘドゥ・ニヌア(えんへどぅ・にぬあ)は、盛り上がるイブを横目で見ながら、お祭りに参加するのもそこそこに切り上げ、部屋へと戻ってきていました。
彼女は今夜、サンタを待つルシア・ミュー・アルテミス(るしあ・みゅーあるてみす)とブリュンヒルデ・アイブリンガー(ぶりゅんひるで・あいぶりんがー)にプレゼントを届けることにしたのです。
サンタ衣装を買いにいくと、裾がやたらと短く胸がきついサイズしか売っていませんでした。
着替えると、かなりけしからんことになってしまっています。皆がじっと見ていますが、エンヘドゥは気にせずに出発することにしました。
「お待たせー! 時間的にちょっと早いかもだけど、行くわよ」
エンヘドゥがプレゼントを配ると聞いてルカルカ・ルー(るかるか・るー)が手伝いに来てくれました。
「まさか、歩いて行くつもりだったんじゃないでしょうね? 【サンタのトナカイ】セット持ってきたから、乗せて上げるわよ」
「まあ、ありがとうございます」
エンヘドゥは遠慮せずにソリに乗り込んで来ました。いや、それはいいんですけど衣装が短すぎませんか?
ルカルカが勧めるより先に、エンヘドゥはサンタ服を用意していたようなのですが、世間知らずもあってか、スカートの長さの相場を間違えている気がします。いくらなんでもミニ過ぎます。ほぼギリギリのラインだったのです。
「お揃いにするつもりだったんだけど、なんだか負けたわ」
ルカルカは苦笑します。
彼女も今夜はミニスカサンタの衣装で活動なのですが、さすがに着こなしも洗練されており、一番魅力的に映る長さになっています。
再度着替えるよう勧めましたが、エンヘドゥが気に入っているようだったのでそのままにしておくことにしました。
【サンタのトナカイ】にプレゼントを積み込んで、彼女らは空へと舞い上がります。眼下には、イルミネーションに飾られた空京の街並みが美しくきらめいていました。
それをしばらく眺めてから、ルカルカは笑顔で聞きます。
「ところで、ルシアの家ってどこ?」
「わたくし、ルカルカがご存知なのだと思っておりましたわ」
エンヘドゥは困った表情で答えました。
「え、もしかして、エンヘドゥも知らないの?」
「はい。全く」
どうやってプレゼントを持っていくつもりだったのだろう、と呆れながらもルカルカは、パートナーに連絡をとることにしました。こんなときのために彼女がいるのです。
「あれ? ケータイ忘れたわ」
今度はルカルカが困った表情になる番でした。ミニスカサンタの衣装に着替える時に家のテーブルに置いたまま忘れてきたのです。
「ま、いっか」
「そうですわね」
二人はいい笑顔で頷き合うと、【サンタのトナカイ】を彼方へと向けました。どこへ行くつもりなのでしょうか?
「お疲れー! 先にやってるわよ」
迷子になりかけていたエンヘドゥたちを見つけて助けに来てくれたのは、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)とパートナーのコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)です。
こちらも【サンタのトナカイ】を用意してきており、先にプレゼントを配り始めていたのです。
コハクが操縦し、美羽は配る役です。こちらもサンタ服が超ミニになっており、エンヘドゥといい勝負です。体型の分だけ、エンヘドゥのほうがキワドイですが。
エンヘドゥがルシアとブリュンヒルデにもプレゼントを持っていって上げることを知っていて、手伝ってくれるようでした。
「ところで、ルシアの家ってどこなの? 私知らないんだけど」
【サンタのトナカイ】を平行して走らせながら、美羽が笑顔で聞いてきます。
「心当たりもありませんわ」
エンヘドゥがビシッと答えます。そこはドヤ顔するところじゃないんですけど。
「ま、いいかー」
彼女らは、もう一度頷きあいました。やたらと楽しそうです。行き先不明ですが。
「とりあえず、適当に配っていけばいいんじゃないかな? そのうちたどりつくわよ」
美羽は気楽に言って、【サンタのトナカイ】を旋回させました。
「たぶんこの辺じゃないかしら」
それっぽい家に片っ端から潜入していくようです。
「こんばんわ。メリー・クリスマス!」
美羽は、玄関チャイムを鳴らします。
「サンタが玄関から訪問してどうするんだよ?」
コハクは言いますが、美羽はお構いなしです。出てきた家の人にプレゼントを手渡すと次へ行きます。
「さっきの家の人、唖然としていたよ」
「だって、鍵が掛かってるんだもの」
しかし、そこはそれ。美羽は、鍵の掛かった家の扉を鍵を開けずに外枠ごと外して中へと入っていきます。
「大胆すぎだよ。サンタの域超えてるよ!」
今夜のコハクは突っ込み要員らしいです。
「なんか変なのいたーー!」
反対側の部屋から忍び込んでこようとしていた“クリスマスツリー”男を発見して、美羽は即座に蹴りを放ちます。スカート短いですが、下はギリギリ見えません。
「ミニスカサンターーーーー!」
美羽は、男をボコボコに蹴り倒した後、街頭のクリスマスツリーに吊っておきました。
「全く、誰だよこんな悪戯したのは」
ゴミ収集車がやってきて、ツリーにぶら下がった“ツリー男”を回収して行きます。汚物と判断されたようでした。
それが合図だったように、美羽のミニスカを狙ってツリー隊が集まってきていました。戦いが始まります。
「ワーォ! やってるねぇ」
そんな彼女らの様子を物陰から伺い見ていたのは、マイキー・ウォーリー(まいきー・うぉーりー)をパートナーとするメンバーでした。
魚介類の臭いが漂っています。比喩ではなく、生臭さをぷんぷんさせているのは、彼らが大量のアワビを持ち込んできているからです。
「言われたとおりにアワビは用意しておいたが。それで…? このしこたまあるアワビはどうする気だ?」
アワビ軍団(?)のマスターを努めるセリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)は、面倒くさそうに聞きました。みんなこっちを見るくらい臭いも格好も目立っています。
「決まっているではないか」
パートナーのマネキ・ング(まねき・んぐ)が強い語調で語り始めました。
「生きとし生ける者は、平等でなければならない。このクリスマスという日ですら貧しい者は存在する! 故に我は、全ての者に平等なクリスマスプレゼントを配ることにした!」
「貧しい者たちにも平等に配るか。心掛けは感心するが、引っ掛かるよなぁ……」
どうせロクなことにならないのだ、とセリスはため息をつきました。
マネキの自称慈善事業の為に大量のアワビを準備し手伝いますが、詳細までは聞かされてもらえていません。
「マネキが、愛の為に愛があるアワビを配るだって!? なんてこった!? さっそくおめかしして街に繰り出さなければ!」
マイキーは、いたく感銘を受けたらしくムーンウォークでやる気を表します。
「普段は、愛の戦士として日々世界を救い続けるボクも今夜限りは、世界中のみんなにプレゼントを配るマイキーサンタ!!」
「というわけで、マイキーよ。お前にはサンタクロースとして クリスマスプレゼントに「愛」あるアワビを配る使命がある。やってくれるな?」
「ポウッ! もちろんだよ。クリスマスの朝を迎えた時、愛あるアワビのおかげでみんなの顔は笑顔満点だねっ!」
「始めようか」
このテンションの高さにいつも痛い目に合わされているセリスは、全然モチベーション上がっていません。ただ、後片付けはしかねればならないという義務感でついてきているのです。
アワビを振舞う彼らも、プレゼントを配ることにしました。何が始まるのでしょうか。
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