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リア充爆発しろ! ~クリスマス・テロのお知らせ~

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リア充爆発しろ! ~クリスマス・テロのお知らせ~

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 さて。
 ヴァイシャリー郊外に【鋼鉄の白狼騎士団】という庸兵団があります。その支城である【黒豹狼の城砦】では、盛大にクリスマスパーティーが行われていました。
「騒がしいだけの街中へ出て行く必要もないでしょう。身内だけで盛り上がりましょうか」
 リーダーのセフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)は、ご機嫌で宴を楽しんでいました。今夜は大人の酒池肉林です。
 暖炉がある大広間に巨大なクリスマスツリーを飾られています。その下で、セフィーは配下の白狼騎士たちを労い、ワインを酌み交わすのでした。
 フカフカの白い絨毯を敷き、大量の酒類やご馳走を用意して持ってくるのは、パートナーの葛城 沙狗夜(かつらぎ・さくや)です。
 彼女は、セフィーがクリスマスを楽しめるよう隅々まで心を砕いていました。
「……」
 パーティー会場を、【鋼鉄の白狼騎士団】の本拠地ではなく、この支城にしたことにリーダーのセフィーは気分を害していないだろうか。少し心配になって、オルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)に視線をやります。
「気にすんな。俺は酒と肉と女が居れば文句はねぇー」
 オルフィナは闊達に笑って答えます。
 実のところ、沙狗夜は諜報活動でサマー・テロの因縁で、フリー・テロリスト一味の東須歩子がセフィーに復讐を企んでいることを知ったのです。
 どうしたものかと師匠のオルフィナに相談したところ、オルフィナがセフィーに進言しこの支城でのパーティーと相成ったわけです。イブを楽しく過ごしたいし、イブまで仕事したくないという理由で宴を名目にセフィーを本拠地から避難させることにしたのですが、セフィー自身も結構気に入っている様子でした。ひとまず安心、と沙狗夜はほっとしていました。
「まいどー、荷物届いてるよー!」
 運送業者が、プレゼントを配達してきてくれました。各所からセフィーたちに贈られてきたクリスマスプレゼントで、かなり大きな箱もいくつかあります。人が入れそうですが、何が詰め込まれているのでしょうか。
「ご苦労様であります」
 沙狗夜は、特に疑問も持たずに荷物を砦の内部へと運び入れました。台車に乗せて、セフィーたちが宴を楽しんでいる大広間まで持っていくことにしました。
「なんか、すごいの来たな。何が入ってるんだ?」
 オルフィナは目を丸くします。
 宴は無礼講ということで、彼女たちが女狼と呼ぶ白狼騎士たちと力比べのキャットファイトの余興をし、女狼を抱き寄せて豊満な胸を枕にして豪快に酒を呷り、大人の楽園を謳歌していたオルフィナでしたが、かなりの量のプレゼントに興味を引かれたようでした。
「誰か、開けてみな」
 オルフィナの台詞に頷いて、白狼騎士たちは箱の包装を外し、一斉にふたを開けます。そこには。
「こんばんは。メリー・クリスマス。動くと撃つよ」
 武装した男たちが、白狼騎士たちに大型の銃を突きつけていました。フリー・テロリストたちの中でも、凶暴なグループがプレゼントにまぎれて侵入してきたのでした。
 広間は、一瞬にして緊張に包まれます。
「東須歩子の差し金ですか?」
 セフィーはワインをくゆらせながら、静かに尋ねます。
 リーダーらしい男は、ニヤリと笑いました。
「はっ、あの臆病者の女がわざわざ出向いてくるかよ。傍観者気取りで、自分で手は下さねえ。今頃どっかでニヤニヤしながら、眺めてるんだろうさ」
「まあ、後ほど探して訪問するとしましょう。それで?」
 セフィーは、あくまで穏やかな態度でした。この程度の連中に本気で怒るだけエネルギーの無駄遣いです。 
「今夜のテロの趣旨くらいは噂で聞いてるんだろ? 下着類集めてるんだ。お前らも脱ぎな」
「ふざけんなよ。バカはやめてとっとと帰れ」
 オルフィナが怒ったように言います。
「そ、そうですよ。そんな要求に従う必要ありません!」
 人質に取られた白狼騎士たちは、セフィーに訴えました。
「私たちに構わず攻撃してください。お願いします」
「そんなことを言うものではありませんよ。あなたたちは、あたしたちの大切な仲間なのです」
 セフィーは、白狼騎士たちに微笑みかけながら立ち上がりました。
 純白のビキニアンダーに白大狼の毛皮の外套姿の彼女は、躊躇うことなくするりと下を脱いでおろします。
「投げてよこしな。変な動きするんじゃねえぜ」
 リーダーの要求にしたがって、セフィーは脱いだものを侵入者たちに投げ渡しました。
「ウッヒョー! こいつはすげえぜ!」
 侵入者の一人が、飛びつくように奪い取ります。
「マジか! 丸見えだぜ」
 デジカメで撮影している連中もいました。この映像が東須歩子の元へ送られているのでしょうか。
「……」
 漆黒のビキニアンダーに黒大狼の毛皮の外套姿のオルフィナは、何かを思いついたように下を脱ぎ始めました。セフィーに倣って投げ渡してきます。続いて、漆黒のTバックビキニアンダーに黒豹の毛皮の外套姿の沙狗夜も。
 それが合図でした。白狼騎士たちも一斉に下を脱いで侵入者たちに向けて投げます。
「来た来た来た! 大量だぜ!」
 非リアの侵入者たちは、奪い合いになりました。瞬く間に暴徒化し、人質の拘束が緩んだのです。
 その隙を逃すセフィーたちではありません。
「はい、終了」
 オルフィナや沙狗夜、そして白狼騎士たちは、あっという間に非リアの侵入者たちを鎮圧してしまいました。
「履き直すの面倒くさいですし、このままでいいですよ」
 セフィーがそんなことを言っている間に、オルフィナたちはテロリストたちの衣装を剥ぎ取り、亀甲縛りにしてツリーに飾って晒し者にしておきます。
「えっと、どこまでやったんだっけ?」
 オルフィナは、事件など何もなかったかのようにキャットファイトを再開します。
 キャットファイト。いい響きです。
 衣装の奪い合いで、ポロリも頻繁に起こります。オルフィナに勝てない白狼騎士たちは犯則技である集団でオルフィナに挑み、揉みくちゃの中、オルフィナのビキニアンダーを奪って下剋上を達成しました。
「やるねぇ。でも、ノー問題」
 体裁を気にしないオルフィナに直ぐに倍返で、全員をひん剥いたりしています。
 ツリーにぶら下げられた侵入者たちは、「お前らみたいな女がいるから、俺の所まで女が回ってこないんだ!」などと泣いています。
「いや、知らんし」
 オルフィナはニッコリ笑って、まだまだ続けます。
「……」
 酒池肉林が再開される中、セフィーはプレゼントの中に一つだけ開けられていない箱があるのに気づきました。
 ベコボコにへこんで傷だらけです。潰された後をガムテープなどで補強してあり、いかにも不良品っぽかったので、誰も開けなかったのです。
 他の箱とは違う、異様な雰囲気。内部からどす黒い瘴気がにじみ出ているのがわかりました。
 その箱は、騒ぎのあった空京から、他の荷物に紛れて運ばれてきたものでした。荷札がついていない上に、気を抜くと見失ってしまいそうです。
【歴戦のダンボール術】のスキルが掛かっています。誰かが中に入っていることは明らかでした。ですか、先ほどの侵入者たちとは明らかに違う、圧倒的な悪意と絶大な魔力を放っていたのです。
「パーティーはこの辺で切り上げて、本拠地へ戻りましょうか」
 突然そんなことを言い出したセフィーに全員が呆気に取られます。
「その荷物には触れてはいけませんよ。さあ、急ぎましょう」
 大胆不敵で高飛車ですが状況判断が鋭いセフィーは、箱の正体が何だかわかったのでした。
 戦ってはいけない相手もいる。いや、戦ってもいいですがリスクが大きすぎるし得るものがなにもない。そう考えた彼女は、この砦ごと放棄することにしました。砦など後からいくらでも修復できるのです。
 グゴゴゴゴゴ……。
 あの悪魔が箱の中から復活します。
 空京での戦いの後、【歴戦のダンボール術】で傷を癒していた、最悪のフリー・テロリスト葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が蘇ったのでした。
 セフィーたちの楽しそうな宴。女の子たちがたくさんいていちゃいちゃ戯れすぎです。破壊しつくしてやるべき憎いリア充たちに、吹雪の怨念は頂点に達していました。
「 リア充爆発しろ!  」
 ドドドドド! 黒いオーラと怒りの波動で砦が崩れ始めます。


「ま、こんなものよね。私は自分の手を汚さないの」
【黒豹狼の城砦】が崩れていくのを少し離れたところで見物していた東須歩子は、満足げに頷きます。
「あの女たちも、最強のフリー・テロリスト葛城吹雪には勝てなかったようね」
 空京で、【歴戦のダンボール術】で退却した吹雪のダンボールを荷物に紛れ込ませた甲斐があったというものです。運送業者も気づかずにそのまま運んでくれたのですから。
 あの暴力的な侵入者など彼女は最初から当てにしていませんでした。元々乱暴だったので切るつもりだったのです。処分できて結構でした。
「さて、帰ろう」
 東須歩子は鼻歌交じりに身を翻しました。少し歩きかけて。
「あ……」
「おや、もうお帰りですか? お楽しみはこれからなんですけど」
 セフィーたちが待ち構えていました。白狼騎士たちも全員無事です。
「ゆっくり遊んでいきましょう。イブの夜は長いですよ」
「いやーーーーーー!」
 夜空に東須歩子の悲鳴がこだましたのでありました。