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学生たちの休日15+……ウソです14+です。

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学生たちの休日15+……ウソです14+です。
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リアクション

    ★    ★    ★

「終点でーす。皆様、忘れ物がございませんように……」
 鷽の巣に辿り着いた風森巽が、さっさとゴチメイたちを飛空艇から下ろした。逃げ場のない飛空艇の中よりも、早く外に逃げだしたかった。もっとも、これがココ・カンパーニュと二人だけであったならば、ずっと乗っていたいところではあるが。でも、この中型飛空艇では、中がかなり広いので、密着感が……。
「ほら、変な妄想していないで、さっさと下りる」
 なんだか風森巽の頭の中を見透かしたかのようにココ・カンパーニュが言うと、両手を後ろ手に組んで、その豊かな胸で風森巽を外へ通しだした。
「うえっ!? おおおおぬ?」
 予想もしていなかった成り行きに、風森巽がわけの分からない奇声を発する。
「うるさいなあ……」
 迷惑そうに、マサラ・アッサムが風森巽の方を見た。
「ミンチにする?」
「そうですね、そろそろいいかもしれません」
 さらりと怖いことを言うリン・ダージに、あっさりとペコ・フラワリーがうなずいた。
「えー、潰すと何か白い物が出てきそうで嫌ですわあ。ここは、後腐れなく焼き尽くして灰にするのがいいと思いますわあ」
 止めとばかりに、チャイ・セイロンが言った。
 体育座りで車座になりながら、ゴチメイたちが太腿が顕わになるのも構わずに相談する。ちょっと色っぽい……いや、かなりはしたない格好なのだが。
 それを見て、風森巽が思わず鼻筋を押さえた。次の瞬間、冷たい視線を感じて風森巽が総毛立つ。ジーッと、ココ・カンパーニュが風森巽を睨んでいた。
「こ、これは、なんでもないんです、本当ですよ!」
 風森巽が必死に弁明しようとした。さすがに、他のゴチメイたちに一瞬でも見とれたなんてことになれば、風森巽の命が危ない。ああ、なんて自分は女々しいのかと、風森巽が自己反省する。反省するが、その前に、この状況をなんとかしなければ……。
 そのときだ。どこからか、「変身! 魔法なんたらかんたら……」という言葉が聞こえてきた。
「何!? 変身!?」
 敏感に、風森巽が、変身という言葉に反応する。
「そうだ、戦いに備えて変身しなければ……」
 なんとか話題を逸らそうと、風森巽が言った。それに、変身してしまえば、仮面で表情が分からなくなる。
変身! 仮面ツァンダーソークー1たん!
「たん?」
 なんだかいつもと違う変身のかけ声に、ゴチメイたちが風森巽を振り返った。
「えっ、こ、これはあ!?」
 なぜか、ふりふりのドレスを着た風森巽が立っていた。
 変身ヒーローだか、魔法少女だか、ただの変態だか分からなくなって、風森巽が狼狽する。
 自分が女々しいと思ったのがいけなかったのだろうか、おっとこ前のココ・カンパーニュの前で萎縮したせいで、ナニも萎縮して消滅してしまったのか……。
「うわあ、ココさん、見ないでください」
「ふふふ、可愛いじゃないか」
「えっ!?」
 半べその風森巽が振り返ると、ココ・カンパーニュが凛々しいイケメンになっている。
「ああ、貴重なたっゆんが……」
 いや、残念がるのはそこではない。
「ははははは、よいではないか、よいではないか」
「きゃー、やーめーてー」
 なんだか、そこら中を走り回って風森巽とココ・カンパーニュが追いかけっこを始める。そんな騒ぎの中、中型飛空艇の中から何かが這い出してきて茂みに姿を消した。
「おい、ホワイトを探さなくてもよいのか?」
 ちょっと呆れて、ジャワ・ディンブラが他のゴチメイたちに訊ねた。
「いいんじゃないですかあ」
「楽しそうだなあ」
「もう、どーでもいいー」
「まあ、なるようになれですね」
 相変わらず車座にはしたなく座り込みながら、ゴチメイたちが言った。

    ★    ★    ★

「ここが鷽の巣か? 殺風景な所だな」
 マルコキアスIIのコックピットの中で、源 鉄心(みなもと・てっしん)が外に広がる鷽の巣を見渡しながら言った。
 モニタの範囲内を、レガートさんに乗ったティー・ティー(てぃー・てぃー)が横切っていく。
「うー。イコンの席、取られちゃいましたうさ……。レガートさん、慰めてほしいですうさ〜」
 レガートさんの首筋にしがみつきながら、ティー・ティーが言った。
「うさぎは嘘がきらいですうさ。嘘なんか生まれて一度もついたことないですうさ〜」
 鷽の巣につく前は、そんなことを言いながらケラケラ笑っていたティー・ティーであった。
 たしか、イコンのサブパイロット席に座っていたはずであったのだが、鷽の巣についたとたん、なぜか外でレガートさんに乗っていたのだ。
「ふふふふ、このLC1のわたくしこそが、この席にふさわしいのですわ」
 一方、イコンのサブパイロット席ではイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)が勝ち誇っていた。
「うさぎの席ねぇから、ですわ!」
 鷽の巣に入ったとたん、LC1の席次を手に入れたイコナ・ユア・クックブックの膝の上では、小さな水竜の形になったスープ・ストーン(すーぷ・すとーん)がパタパタとだかれていた。
「うーん、最高でござる。ただ、欲を言えば、もっと太腿がむちむちぷりんな方が……むぎゅうっ」
 よけいなことを言って、スープ・ストーンがイコナ・ユア・クックブックに絞め殺されそうになった。

    ★    ★    ★

「フフフフフ……。ここが新たなる我の養殖場……。さあ、皆の者、キリキリと働いて、アワビを養殖するのだ!」
 一面に広がる鷽の巣の銀砂を見渡して、マネキ・ング(まねき・んぐ)がどす黒い欲望に満ちた笑い声をあげた。
「それはいいんだが……」
 いや、本当はそこからが問題なのではあるが。
 セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)が、マネキ・ングの言葉に割って入った。
「どう考えても、人手が足りないだろうが」
 セリス・ファーランドが、周囲を見回して言った。二人の他にいるのは、マイキー・ウォーリー(まいきー・うぉーりー)と、カイザー・ガン・ブツを動かしてきた願仏路 三六九(がんぶつじ・みろく)だけだ。いくらなんでも、四人だけで、ここに大養殖場でも作るつもりなのだろうか。
「大丈夫なのだよ。まずは、ベントラー、ベントラー」
 マネキ・ングが祈ると、霧の中からアバロンの要塞ならぬ、生体要塞ル・リエーが降下してきた。ちなみに、アバロンとはアワビの意味である。アーサー王が眠る島……ではない。スペルが違うが、マネキ・ングがそんなこと気にするはずがない。
「だから、人手は……」
「海星など使わぬ。さあ、三六九よ、お前の出番だ。いたいけな鷽を嘘でアワビ教に入信させるがいい」
「お任せしなさい。もっとよくしてあげます」
 願仏路三六九が言うと、カイザー・ガン・ブツが目映い金色の輝きを放ち始めた。
「さあ、目覚めるのです。鷽たちよ、我が信者よ」
 願仏路三六九が言ったときにタイミングよく実体化をし始めた鷽たちが、カイザー・ガン・ブツの輝きに惹かれるようにして集まってきた。
「ポウッ! あれこそは、神聖なる御神体。そして、あの輝きこそは、アワビ後光だよ。さあ、みんな、愛のためにアワビを養殖しよう。キミたちも、今日からはアワビ教の仲間だよ!」
 鷽たちを先導するようにマイキー・ウォーリーが言った。
 その言葉に従うかのように、大小の鷽たちが列をなしてカイザー・ガン・ブツや生体要塞ル・リエーの周りに集まってくる。
「さあ、御神体についてくるのです」
 願仏路三六九がカイザー・ガン・ブツを移動させると、鷽たちが一緒に移動していった。
「さあ、皆の者、御神体にアワビを捧げるのだ。数は多ければ多いほどいいのだぞ!」
 マネキ・ングにあおられて、鷽たちがあっという間にアワビ養殖場を作り始めた。鷽たちの身体と同じく、銀砂を使って養殖場を作っていくので、ありえない早さで巨大アワビ養殖場が完成していく。
「はははははは、完璧だあ!」
 早くもアワビ販売による利益計算に悪酔いしながらも、笑いの止まらないマネキ・ングだった。