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リアクション
序章
シャンバラ大荒野の北部に位置する荒野の町、モコト。
荒野地方にも関わらず今年は珍しく大雪で、町にはどっさりと雪が積もった。雪は降るときは降るし、年に少なくとも一度は積もるのだが、現地の方いわく、家の扉が半分まで埋まるほど積もったのは非常に珍しいことらしい。
モコトの町や近隣の子供たちは大喜びで、一日中外ではしゃぎまわっていたり、雪合戦していたり、大量の雪だるまが生まれたりしていた。
しかし、住民たちにとっては畑仕事や商売に直接的な悪影響を及ぼすので非常に迷惑なため、町を挙げての除雪作業が行われた。
モコトの町周辺の居住区域及び畑の周りの雪をかき出しまくった結果、荒野に広大な雪原が生まれた。
「ふーむ、絶景だべや」
「んだ。まるで新しい世界が生まれたみたいだや」
「3メートルくらいはあるべ? どでっかい雪山がひい、ふう、みい……」
「たくさんだべや。たくさんって漢字で書けるか? 沢に山って書くんだ」
「知らねえべ、んなこと」
「だども、これどうするべ」
「どうもこうも、ほっときゃ勝手に溶けてなくなっちまうさ。何もする必要ねえ」
「ん〜、もったいねえな」
「もったいねえ?」
「いや、こんなに雪が降るなんて珍しいべ。せっかくだから何かに使えねえかなあって思ったべさ」
「ああ、まあな。といっても雪は所詮水分のカタマリだ。使えるって言ったって、風邪ひいた時に袋詰めにして熱冷ましにするくらいしかなあ……」
「だべなあ……もったいねえ」
「うお! 閃いた!」
「な、なんだべ! いきなりでっかい声出すなや!」
「ええから耳かせ、耳!」
「千切って渡せってか」
「そうじゃねえよ! ええか? ごにょごにょ……」
かくして、のほほんとした会話から生まれた幻のイベント、雪山大破壊祭り。
雪山をただ破壊して回るだけでは面白味が少ないので、三部門の賞を作って、田舎らしい景品も用意された。
この地方には携帯電話やタブレットのような文明の利器を持っている住民が少ないため、宣伝告知には非常に苦労したが、近隣の町の協力もあって多数の参加者が集まった。
「ええ、本日はお忙しい中、雪山ぶっ壊し祭りに……ん? ぶっ壊しじゃなくて大破壊? どっちでもええじゃろこの際! ええ、わが町のイベントに参加していただき、誠にありがとうございます、だべ!」
何やら怪しいセリフ回しで、町長がマイクで喋る。
「皆様には、ここに広がる雪山たちに、日頃の鬱憤をありったけ、力いっぱいぶっこんで壊していただきたく思います、だべ! 広告にもありましたが、皆様の活躍を審査させていただき、美しい破壊をした方にビューティフル賞とモコトの町を中心とする名産品詰め合わせ、もっともハデで激しい破壊をした方にアグレッシブ賞と二泊三日温泉宿無料招待券、これは一本取られたという破壊をした方にアイディア賞と無料お食事券十回分と、ささやかながら地元モコトならではの賞品を用意しました、だべ!」
おおお、と会場が湧いた。
「長ったらしい話はここまでにして、さっそく始めたいと思います、だべ! 武器やスキルの準備はよろしいですか、だべ?」
っしゃあ、と会場に気合が入るのが分かる。
「それでは、スターート、だべ!」
何度も何度もセリフの練習をしたが、語尾の『だべ』だけがどうしても取れなかった町長がマイクを持つ右手を振り上げると、空に花火が打ち上がった。
こうして、雪山大破壊祭りが幕を開けた。
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