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【終焉の絆】滅びを望むもの

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【終焉の絆】滅びを望むもの

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大樹攻略作戦 3


「頭のビッグな黒騎士に注意、デスネ」
「ええ、かなり高い技量を持っています。恐らく後方部隊のかく乱が目的ですので、注意してください」
「ナルホド……ところでそのビッグなヘッドというのは、こう、後頭部がだらーんと、後ろに伸びてる感じですかネ?」
 ロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)はたった今補足した黒騎士について、端的に説明した。素晴らしい事に、件の黒騎士もこちらを補足しているらしく、真っ直ぐにこちらに向かっている。
「そうですが、まさか?」
「エエ、三体こっちに向かっていますヨ」
 位置確認、ゴスホークもパンデジェリーロ達も、ユノーナ・ザヴィエートから見ればかなり前方に配置されており、すぐさま救援とはいきそうにない。それに、現状前線での動きは悪くない、ここで救援を呼べば、いい流れを失う可能性もある。
「こちらで対処するので、心配いらないアル」
 そう返事をして、通信を終了する。
「なるべくならワタシ達のとこまでは敵さん来ないでほしかったのコトあるアル」
 ロレンツォはそう零すが来てしまったものは仕方ない。
「コームラント隊は後退、本機の援護をお願いね」
 アリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)が小隊のコームラント達に呼びかける。彼らは本来真司に付き従うイコンだが、ゴスホークの行動に対して足手まといになるので、ロレンツォに預けられ後方からの支援を担当しているのである。
 コームラント達は素直に後退していくが、黒騎士達の狙いはむしろ彼らである。逃がすまいと速度をあげて接近する。
「やらせませんアル!」
 ソプラノ・リリコがウィッチクラフトライフルを構えて射撃。すると、三体は見事な散開行動でこれを回避した。
 間合いが詰まる。
「中央の狙って」
 散開に目移りしそうになるのを、アリアンナの言葉ではっとなって中央の黒騎士を狙う。それぞれ装備は槍のみ、盾はない。当たれば打撃は十分与えられる。
 一発が肩に命中、だがひるみもせず黒騎士は前進を続ける。
 間合いがほとんど無くなる。
「あ、殴り合いになったらまた板金修理とか費用かさむ……。アンビバレンツ、とてもとても悩ましいのことよ」
「修理費用……って、ロハでやってくれざるを得ないくらいの働きを見せつけちゃいましょうよ!」
 もはや回避をするには遅い間合い、電磁ネットも間に合わない。
 ソプラノ・リリコが氷獣双角刀を突き出す、黒騎士も槍を、互いの獲物が交差して、互いの装甲表面を削る。
「ああ、機体は直してもらえても、美しいフジヤマ、サクラの塗装はどうなるアルかっ!」
「あーもう、いいから今は敵に集中!」
 コックピット内では騒いでいても、黒騎士とソプラノ・リリコの戦いは続く。既に殴り合いの距離で、互いの武器を何度も打ち合わせていた。
「確かに、強いアル」
 一進一退、やや黒騎士の方が押しているか。そうしている間にも左右に分かれた残りの黒騎士がコームラント隊へと向かう。コームラントも砲撃で攻撃しているが、かすりもしない。
 援護にいきたいが、目の前の黒騎士はそうはさせてくれない。
 焦りが産まれる中、巨大な機影が唐突にその場に現れた。
 ポムクルさんスーパーDXだ。
「敵さんみっけ」
「救援要請はもっと前方の部隊だったはずですが、見てみぬ振りはできませんね」
 牡丹・ラスダー(ぼたん・らすだー)レナリィ・クエーサー(れなりぃ・くえーさー)が操るポムクルさんスーパーDXは、対INT用スタン装備からグレネードランチャーを取り出すと、前進する黒騎士に向かって放った。
 ぽんぽんと飛び出した榴弾が、黒騎士の周辺に着弾する。
「ちゃんと効いてるねぇ」
「対インテグラル用の武装の効果はてきめんですね」
 インテグラルとルーツを同じくするというダエーヴァも、この攻撃を受けてその場で転倒し、もがいている。効果は大きい。
 倒れてしまえば、錬度がそこそこのコームラント隊でも狙いをつけられる。砲撃がこの黒騎士を蹂躙した。
 すぐさま牡丹は次の黒騎士に狙いを定めるが、引き金は引かなかった。そこには既に、鳴神 裁(なるかみ・さい)テンペストが取り付いていたからだ。
 巨大なポムクルさんスーパーDXとは対照的に、テンペストはほぼ人間サイズのパワードスーツ、この戦場でもかなり珍しい存在である。
「ボクは風、風(ボク)の動きを捉えきれるかな?」
 黒騎士も、テンペストが肉薄している事には気付いているし、なんとか振り払おうとしているが、
「捉えたと思った? 残念、幻覚でした☆」
 サイズの差と、それを加味しても尋常ではない速度に翻弄されていた。
 この速さは、物部 九十九(もののべ・つくも)ドール・ゴールド(どーる・ごーるど)そして黒子アヴァターラ マーシャルアーツ(くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ)がそれぞれ、憑依し装着されテンペストのコアパーツとして裁を支えているからこそのものだ。
「なるほど、そうやって火力不足を補いますか」
 牡丹が納得する。
 背後に回りこんだ裁を槍で打ち払おうとした黒騎士の腕が、肩から外れて遠心力で飛んでいく。
 裁はただちょこまかと黒騎士の回りを飛び回っているのではなく、間接部に打撃を与え続けていたのだ。それはもちろん、片腕だけではなく、黒騎士はまるで積み木を崩していくかのようにばらばらに崩れ落ちた。
「……今の倒れ方、どうやら黒騎士には痛覚といったものはないようですね」
「綺麗にばらばらになったねぇ」
 もしも痛みを感じるのならば、バラバラになる前に動きが変化するだろう。偶然ではあるが、いい情報を得た。
「今後は、黒騎士は完全に破壊するようにと通達すべきですね」
 そうこうしている間にも、ロレンツォ操るソプラノ・リリコの方も、決着の時を迎えていた。
 美しい塗装が剥がれるのも厭わず、繰り出されたタックルで動きのいい黒騎士を捉え、その胸部にウィッチクラフトライフルの銃口を押し付ける。
 四発弾丸が叩き込まれ、黒騎士は停止した。
「や、やってやったアル」
「みんな、無事?」
 アリアンナの通信に、コームラント隊全機から返答が帰ってくる。
「機体は?」
「多少表面に傷がついた程度です」
 牡丹の問いかけにアリアンナが答える。
「了解、こちらはこれから救援信号を発している部隊の援護に向かいます」
「ボクも先行くね」
 裁の姿は既にそこになく、一言の通信だけが残された。
 ポムクルさんスーパーDXもまた、すぐさま前進を再開した。