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リアクション
ユグドラシルにようやく到着した椎名、淳二、レキ、由宇たちの一行。
王宮前広場の混乱具合を見て、
「あーもう! 出遅れた! もういろいろ起こっちゃってんじゃん!」
と、椎名が悔しそうな表情。
アインからの情報で、脱獄したダイソウ達はこの広場を抜けてユグドラシルを脱出するルートを取っており、まもなくさしかかるとのこと。
「くっそー。オレがせっかく考えた『裸の王様作戦』ってのがあったのに、そんな悠長な作戦やってる場合じゃないぜ……何かできることを考えなきゃな」
そんなことを言っていると、難を逃れた終夏がふらりと広場の中央に立ち、またヴァイオリンをかまえる。
「親愛なるエリュシオンの皆さま。しばしのお耳汚し、どうかご容赦いただけますよう……」
と、終夏は何故か演奏を始める。
その曲を聞いてすぐにぴんとくるのは、さすがミュージシャンの由宇。
「この曲は! なるほどぉ〜」
彼女はアホ毛をくるくるさせて、急いで自前のフルートを取り出して構える。
終夏が演奏しているのは『幸せの歌』。
衛兵が動きまわる状態の中、幸福を広場にばらまき始める。
そこにさらに由宇の演奏が加わって効果は絶大に。
いつの間にか一般の人々は気分が落ち着き、終夏や由宇の周りに集まり始める。
「そっか、なるほどね!」
終夏と由宇の人心掌握にヒントを得て、椎名はソーマとアインに、
「よし、予定通りお店開くよ!」
「えっ、マスター、こんなときに営業して大丈夫なの?」
「いいからいいから!」
と指示を出して急きょ開店に取り掛かる。
「さー、移動喫茶エニグマ(仮)だよ〜。飲み物食べ物何でも来い! なんだったらこっそり情報も取り扱ってたりして」
『幸せの歌』の相乗効果で、多少の心理操作も可能なのだろうか、人々はエニグマに押し寄せ、ここにも人だかりができる。
そしてそこに、ようやくダイソウ達が猛ダッシュで通過してゆく。
通り抜けざまに、ダイソウと目が合った終夏は、パチリとウインクして見せ、ダイソウもそれに応えてうなずく。
フルート演奏中の由宇には、
「ご苦労!」
と声をかける。
「ダイソウトウにキャノン姉妹! 後でオレのスイーツ食ってもらうからな!」
「うむ!」
と、ダイソウ達はエニグマの脇を抜け、北へと抜けてゆく。
当然直後に龍騎士団と衛兵が追ってくるわけだが、ここからが終夏の作戦開始。
彼女の演奏と共に群衆が操られたように動き、ダイソウ達が抜けたルートを塞いでしまう。
由宇を囲む聴衆も同じく動き、さらにエニグマの客もわらわらと広場を埋める。
「なっ、これは一体? どけっ! おい!」
龍騎士団の声むなしく、エリュシオン国民によって、彼らは足止めを食ってしまうはめに。
「よし、では俺もしんがりにつきましょう」
淳二が、何故かハリセンとピコピコハンマーを構えてダイソウ達のしんがりを追う。
彼にはアレンが、
「オレも行こう……移動手段が足りてないようだしねぇ」
と、淳二と一緒に飛空艇を提供しに出る。
アレンは淳二の武器を見て、
「それ、大丈夫かい?」
「大丈夫だ。きっとなんとかなる。俺は俺のできる、ネタ戦闘をやるだけだ」
と、移動を開始。
しばらくその様子を見ていたレキとミアは、
「えーっと、追っかけた方がいいのかなぁ?」
「レキ。わらわは魔道具屋とワイバーンを見に行きたいんじゃがのう」
「そっか。じゃあワイバーン買って追っかける?」
「買ってくれるのか!?」
「え……ま、まあ見るだけ。とりあえず見るだけね」
と、結局ミアのわがままに付き合って、レキは街の方へと消えていく。
★☆★☆★
ぼこっ……
ダイソウ達が脱獄したあとの牢に穴が開き、そこからひょっこり司が顔を出す。
「ふう〜、着いた……まさかできるとは思わなかったけど、助けに来ましたよ、ダイソウトウくん」
なんと司が『アルテミス』からの脱出用地下道の開通に成功する。
シオンの傀儡「ツカサ1号・2号・3号」も、頼りなさげだったが、思ったより仕事をしてくれたようだ。
司から見て、ちょうど背中を向けた形になっているダイソウ、超人ハッチャン、クマチャン。
三人が全くリアクションを取らないのを見て、司は、
「もぉ〜、私結構頑張ったんですよー? 無視することないじゃないですか。そういうプレイ、シオンくんからの入れ知恵ですか?」
と、ちょっとしたツッコミ気分でダイソウの肩をポーンと叩く。
かちり
「かちり?」
直後、ユグドラシル監獄の地下が大爆発を起こし、エリュシオン軍はさらなる混乱の中、ダークサイズ追跡と爆発の処理で二重苦を負うことになる。
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