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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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 ■ 百合園の制服 ■
 
 
 
 亡き親友沢城 鈴の家を訪れる為に、ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)は夏に続き、冬の鎌倉にやってきた。
「すずちゃんのおうちに行く前に、お墓に寄っていくね」
「お墓に? でしたらお花を買っていきましょう」
 ネージュに同行して地球に来た常葉樹 紫蘭(ときわぎ・しらん)は、花屋で自分と同じ紫蘭を買い求め、鮮やかな紫の花束を抱えてネージュの後について行った。
 
「ここがお墓ですか?」
 『天使の杜・こども陵苑鎌倉』の建物の可愛らしさに、はじめてみる紫蘭は驚いた。
 建物だけでなく入ってみると、その内装もやさしいパステルカラーに彩られていた。
 ネージュは以前来たときと同じように、ペンダントを受付端末にはめ込んだ。 
「まあ……」
 カーテンの奥から出てきた、大きな桃色の卵が載った羽根飾りの厨子に、紫蘭が思わず声を上げる。水穂から話は聞いていたのだけれど、実際に見るとやはり違和感がある。
「機械で運ばれてくるお墓、ですか……」
「うん。あの中にすずちゃんがいるんだよ」
 そう紫蘭に教えると、ネージュは献花台に紫蘭を供えて手を合わせた。
 
 前に来たときには泣き出してしまって気が付かなかったけれど、よく見てみると参拝室の受付端末からは保管されているビデオメッセージを持ち出すことが出来るようになっていた。
 ネージュは鈴からのメッセージをスマートフォンにダウンロードすると、
「またくるね」
 今日は泣かずに笑顔で鈴に挨拶してこども陵苑を出た。
 
 
 お墓参りを終えると、ネージュは鈴の屋敷に向かった。
 ここに来るのは久しぶりだと脳裏で年数を数えてみれば、もう4年は来ていなかったということに気付いた。
 けれど、迎えてくれた鈴の母沢城 梨音も鈴の部屋の様子も、まったく変わっていなかった。白い肌に漆黒の艶やかなロングヘアをハーフアップにしてた梨音は相変わらず若々しかったし、部屋のものはまるであの時のまま鈴がここで暮らしているように置かれている。
「ネージュちゃん、本当に大きくなって可愛くなって……」
 梨音は目を細めてネージュを見た。まるでその上に、成長した鈴の姿を重ねてみるように。
 この窓辺から鈴がよく外を見ていた、このぬいぐるみをよく手にしていた、と時間の止まったままの部屋でネージュは懐かしく梨音と鈴の思い出話をした。
(お盆のときじゃないけど、すずちゃんがこの部屋にいるみたい……)
 にこにこと穏やかに笑って、鈴がすぐそこの椅子に座っているのが見えるようだ。
「これをすずちゃんに……」
 ネージュはきちんと畳んだ百合園女学院の制服を梨音に差し出した。
 梨音は知るよしもないことだけれど、その制服はお盆の時に鈴に着てもらった制服だ。
「制服は2着用意して、もう1着のほうはあたしの寮のお部屋に置いてあるの。これですずちゃんはいつでも百合園に来られるよね」
「鈴が百合園に……」
 娘の鈴がパラミタにいるのを想像してか、梨音はうるっと目をうるませた。
 そしてネージュと梨音はいっしょに、鈴の部屋にあったトルソーに百合園女学院の制服を着せつけた。鈴と同じサイズのトルソーに制服はぴたりと合う。
「鈴……良かったですわね……」
 梨音は慈しむように制服を撫でた。メディアマート・サワシロの社長をしている梨音も、この部屋で鈴を思い出す時にはすっかり母親の顔をしている。
「ネージュちゃんありがとう。あなたのような子が鈴のお友達でいてくれること、本当に感謝していますわ」
 まだ涙がにじむ瞳で梨音はネージュに微笑んだ。
(わたくしもこういうお母さんになれたらいいですわね)
 そんな様子を眺めつつ、紫蘭はそんなことを考えるのだった。