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忘新年会ライフ

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忘新年会ライフ

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 その頃……蒼木屋の事務室では……。
「被告人セルシウス、何か言いたい事はある?」
「私は無実だ!!」
「セルシウス……楽になろうぜ、な? 人間、罪を背負って生きていくのは悲しいぜ?」
「ルカ……いや裁判長、被告人は犯行当時、額の傷のせいで精神衰弱の状態にあったと思われる。彼は無罪だ」
「そうだ! 私は無罪だ!!」
「静粛に!!」
 椅子に座るセルシウスを囲んで、ルカルカ、ダリル、カルキノスの三名が裁判中であった。
 容疑は、カルキノスから聞いた『エリュシオン人蜂蜜酒殴打事件』である。
「(くぅぅ……何故、私がこのような目に!)」
 セルシウスが唇を噛む。
 そこに、扉がバンッと勢い良く開いてななながやって来る。
「話は聞かせて貰ったわ! この宇宙刑事なななが来たからには、後は家のコタツでポテチ食べながらネット掲示板の不毛な議論をやっていても安心よ!!」
 ルカルカがなななを少し冷めた目で見つめ、
「ななな、お仕事終わったの?」
「まだまだ始まりよ! そのために、蜂蜜酒を頂きに来たのよ!」
「頂く? 買うの?」
「無料で強引に有無を言わさず持って行くつもりよ!」
「……堂々と強盗名乗らないでよ」
 ハァーと長い溜息をつくルカルカ。
 なななは店の端に置かれていた筒状の楽器に興味を示す。
「何、これ?」
「チャルメラよ。オーナーが移動式屋台でもやろうって買ってみたけれど、よく考えたら荒野で人間に遭遇する確率の低さに、即廃止になった遺物なの」
「なななが貰ってもいい?」
「別にいいわよ。どうせ捨てようと思ってたし……」
 なななはチャルメラを持って興味深そうに眺め始める。
「おまえら、忙しい中何やってるのよ?」
 客を見送ってきた女将の卑弥呼が入ってくる。
「私は無罪だ!!」
 卑弥呼にすがりつくエリュシオンの男。
「……知ってるよ」
「え?」
「さっき帰る際にブリジッタが言ってたよ。おまえが無罪だって」
 卑弥呼の言葉に、ガッツポーズを決めるセルシウス。
「(おお……神よ、感謝する! ようやく私は長い拘束と誤解を解かれました!)」
「卑弥呼ー、バラしたら面白くないじゃない?」
「む……?」
 苦笑したルカルカがセルシウスを見て、
「ごめんなさいね。大体そういう事だろうってわかってたのよ」
「き、貴公!?」
「でもね、止めるならもう少し上手くやらないと、自分もお店も疑われるわよって教えたかったの」
「そ……そうか。うむ! 良い勉強になった!!」
「店でトラブルはよく起こるものだ。だからそういう事は俺達に任せて欲しい、セルシウス」
 ダリルに言われ、セルシウスは頷く。
「よし、そうとなれば、私は私の仕事をしようではないか! 蜂蜜酒を売って売って売りまくって……」
 セルシウスが蜂蜜酒の在庫を置いてある倉庫に向かう。
「その蜂蜜酒だけど……」
 卑弥呼が言いかける。
「ぬ……無い! 無いぞ!? 私の蜂蜜酒が!」
 扉を開いて驚愕するセルシウスに、卑弥呼が告げる。
「今、なななとノーンが持っていったよ?」
「何ッ!? き、貴公黙ってそれを見過ごしたのか!?」
 卑弥呼が一枚の領収書をヒラヒラさせる。
「全部買い取りだって……おめでとう、セルシウス。おまえの蜂蜜酒は完売したんだよ」
「……」
 卑弥呼に渡された領収書には、ノーンのサインと「お代は全て御神楽 陽太(みかぐら・ようた)に請求」との言付けが示されているのであった。


「プップップププー!」
 荒野になななのチャルメラが響く。
「なななちゃん、段々上手くなってるね!」
「フッフッフ、これでなななはインスタントラーメンのパッケージ化になり、シャンバラの伝説になる道が確定したわね!!」
「そのためにはまずラーメンが先だと思いますわ」
「わたしも負けてられないなぁー! よーし、頑張って歌おう!!」
 ノーンがマイクを持って、【喜びの歌】を歌う。
「(警備員が自ら敵を呼びこんでよいのでしょうか……?)」
 エリシアがふとそう考えていると、トロールを探して歩くノーン達の前に、突如【恐れの歌】が聞こえてくる。
「何かな……?」
「さぁ? あの岩陰の奥から聞こえてきますわ」
 ノーンとエリシアが「様子を見に行く」となななに告げて向かう。

 岩陰では、大勢のトロール達を前に『卑弥呼の酒場のテーマ』を歌う竜司が、彼らに囲まれないように警戒しながら、距離を置いて歌を疲披露していた。
「ヒャッハー、オレが吉永竜司だ!! オレの歌を聴けェ!」
 【名声】で名乗り、トロールに宣戦布告した竜司。彼の従者であるヤンキー、狩猟採取民、キノコマン、更にはバカには見えない友人が一斉に竜司に応援のコールを送る。
「竜司、竜司、竜司!!」
「もっとだぁぁぁーーー!!」
「竜司、竜司、竜司!!」
「盛り上がって行こうゼェェェーーー!!」
 【ファンの集い】でもっと観客を集めようとする竜司。ひょっとするとノーン達がここにやって来たのはあながち偶然でないかもしれない。
 大きく息を吸い込んだ竜司が、武器を手に襲いかかるトロール達を睨み、歌を歌い始める。

『卑弥呼の酒場のテーマ』作詞作曲:吉永竜司
何杯飲めば飛べるのさ? ソフトドリンク飲み放題だからってそれは無理さ
君だってわかっているんだろう? 俺はミルクが飲みたいってこと
だけどミルクはもろ刃の剣 荒くれ者が殺気立つ 運んでくる店員は皆ちっぱい
食料調達は何だかヌルヌル 警備員は月夜に舞うし 隣にはライバル店が出来る
だけど酒場に行かなくちゃ 卑弥呼の酒場に行かなくちゃ 行かせてくれよ
ポーカーで裸になってもいいし 店員にシバかれるのも乙なもんだ 
※だから酒場に行かなくちゃ 卑弥呼の酒場に行かなくちゃ 行かせてくれよ
(※リピート)


 歌いながらも、トロール達に【その身を蝕む妄執】で幻覚を見せる竜司。
「隙だらけだぜぇぇ!!」
 怯んだ隙を見逃さず、【チェインスマイト】でトロールの武器を破壊していく。
「グオオォォォ!?」
「ツ、ツヨイ……!!」
「ヒャッハー!! てめぇら如きがオレに勝てるわけねぇぜ!!」