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リアクション
● エンディング 2
真青な空にぽっかりと白い雲が浮かんでいた。
「一体、何なの? ベア」
コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)は少しうさんくさそうに眉をひそめながら自分を先導するベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)に従って歩いている。
「ふふっ。いいですから、コハクくん」
「本当にこんな所に美羽がいるの?」
コハクは半信半疑といったふうだ。何か騙されてるんじゃないだろうか? そう言いたげな表情をしている。
それでもベアトリーチェにうながされるまま、なだらかな坂道を上った。
昨夜は雨だった。
道の両脇に生えた青くさい草の高さと強い土のにおいが、暑い夏の訪れを感じさせる。
周囲の景色に目を配りながら歩いていると。
「コハクくん。ほら、美羽さんですよ」
「えっ?」
美羽の名を聞いて、コハクは草たちから目を離した。ベアトリーチェの指した指の向こうにはたしかに美羽がいる。
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)はツァンダの街が見える小高い丘の頂上に立って、草原を渡る風をほおに受けながら目を閉じていた。
口元には満足そうな笑みが浮かんでいる。
「美羽さーーーん。コハクくんを連れて来ましたよーっ」
ベアトリーチェが口元に手をあて呼びかける。
その声に、美羽は2人の方を向いて笑顔でぶんぶんと手を振って見せた。
「美羽ーっ!」
コハクも振り返す。これから何が起きるか知っているベアトリーチェはそっと背を向け来た道を戻って行ったが、コハクにそれと気付いた様子はなく。美羽の元へ走ろうとした瞬間、それは起きた。
「わたし、小鳥遊 美羽はー、コハク・ソーロッドのことが、だいすきでーーーす!!」
胸いっぱい息を吸い込み、大きな声で叫ぶ。風に乗って、ツァンダの街まで届けとばかりに。
全てが終わったら世界じゅうに向かって叫ぶ。美羽はそう決めていた。この気持ちに偽りや後ろ暗いところはない。みんなに知られたって全然かまわないと。だがコハクがそれと知るはずもないことで。
その告白を耳にした瞬間。コハクはカチーンと凍って、動きを止めた。
はたして美羽が何を口にしたのか、理解したとたん、頭の先からぼんっと湯気が出るくらい、真っ赤に染まる。
「美羽……あ、あの……あの…」
どぎまぎして、言葉がのどにつかえた。
いくらすると決めていたとはいえ、美羽だって、この告白にドキドキしないわけがなかった。だけどコハクの見せた反応に、不思議なくらい胸のなかで幸せな気持ちがふくらんで、はちきれそうになる。
「大好き! 大好き、大好き、大好き!!」
あははっと笑ってコハクにとびついた。
「み、美羽…っ!?」
あせり、うわずった声であたふたするばかりのコハクだったが、やがて唇を噛み、美羽をそっと引き離した。
「美羽……ごめん」
「えっ?」
「何があったか、ベアから聞いたんだ。……美羽や……彼方に……僕が何をしたか…」
途切れた記憶の行方を知りたがるコハクからの問い詰めに、ベアトリーチェも最初ははぐらかしていた。「もうすぎたことですから」と。けれど真剣な表情で知りたがるコハクに根負けし、かいつまんで話した。
微に入り細を穿って聞いたわけではないが、それでもコハクは蒼白した。いまも罪悪感に胸が重い。
「ごめん」
うつむいてしまったコハクをじーっと見つめて、美羽は言った。
「なーんだ、そのことか。てっきり「好き」って言ったことに対する返事かと思っちゃった」
「えっ?」
「それで、コハク。返事はくれないの?」
無邪気に覗き込んでくる美羽に、コハクはまたもカーっとほおを上気させる。
「あっ、あのっ……それは……そのぅ…」
どきまぎ、あたふた、おろおろ。
コハクが「僕も美羽のこと、好きだよ」と言えるまでに、それからさらに数分を要した。
「よかったぁ。うれしい。ありがとう、コハク」
夏のひまわりの花のように笑顔をほころばせ、礼を言う美羽に息を飲む。そして意を決すると、彼女の肩を引き寄せた。
「美羽、好きだよ。僕は世界で一番、美羽のことが好きだ」
そっと顔を近づける。
コハクが何をしようとしているか悟っても、美羽は避けようとせず、黙って目を閉じて受け入れた。
2人の周囲で吹き渡る風がザザザと草を鳴らす。
それはまるで海のなかにいるよう――――……。
* * *
うっそうと茂る緑の海。密林のなかに、ぽっかりと穴が開いたように開けた場所がある。
かつて遺跡があった場所。
今となっては瓦礫の山でしかないその場所へ、小さな鳥のような影が落ちた。
影はだんだんと大きくなり、くっきりと色濃く瓦礫の上にその形を成す。
それは鳥ではなかった。
緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)――真夏の炎天下であろうとも決して溶けない、美しい氷でできた4枚羽
氷翼をはためかせ、彼は静かに舞い降りる。
明日。
この地での調査が開始されると聞いて、彼はやって来た。
数日前にここを離れたときと同じで、ただの瓦礫の山にしか見えない。それでも、もしもという考えが頭の隅から離れず、こうして来てしまったのだった。
感傷だろうか。
そうかもしれないし、違うかもしれない。
突き詰めたところでもはや意味はない。それなら、いっそこのままにして眠らせておくべき思いなのかもしれない。
はじめて石のことを知った日から起きた一連の出来事を思い出しながら、遙遠は瓦礫のなかを歩いた。
だれの仕業か不明だが――それともこうなるように設計されていた?――遺跡の崩壊はみごとだった。元が何であったか知らなければ想像すら困難なほど、徹底的に破壊されていた。
やはりここに何も重要なものは残っていない。
かなりの時間をかけ、細部まで見て歩き、そう結論づけそうになったとき。
彼はそれを見つけた。
瓦礫に半分埋もれた小さなモニター。0と1で埋もれた画面の一番下で、カーソルが点滅していた。
ルドラの片鱗もない、残滓と呼ぶことすらおこがましいようなものだったけれど。彼はケーブルを目でたどり、本体を見つけると、我は誘う炎雷の都で破壊した。
念のため、周辺一帯全て炎雷で焼き尽くす。
そしてモニターが完全に沈黙しているのを確認すると、再び氷の翼を広げてこの地を去った。
二度と振り返ることなく。
『Perfect DIVA 了』
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担当マスターより
▼担当マスター
寺岡 志乃
▼マスターコメント
こんにちは、またははじめまして、寺岡です。
このたびはリアクションの公開が大幅に遅延してしまい、参加者さまをすっかりお待たせすることとなってしまいました。
本当に申し訳ありません。
何もかも実力不足の不肖の身ですが、1本シナリオを書くたびに少しずつ成長できたらと思っています。
長い目で見守っていただけたらと願っています……。
さて。
今回で『Perfect DIVA』は終了いたしました。ご参加いただきました全参加者の皆さま、ありがとうございました。
おつかれさまでした。
今回のアクションの結果としまして
1.ドゥルジは師王 アスカ(SFM0023620)さんと契約することになりました。
2.葉月 可憐(SFM0008807)さんの放校が執行猶予付きの限定解除となりました。
どちらも後日手続きをさせていただきます。もう少々お待ちください。
それでは、ここまでご読了いただきまして、ありがとうございました。
次回『よみがえっちゃった(仮)』でもまたお会いできたらとてもうれしいです。
もちろん、まだ一度もお会いできていない方ともお会いできたらいいなぁ、と思います。
それでは。また。