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リアクション
5.平日
シャンバラ教導団、団長執務室。
バレンタインのこの日も、この部屋の様子は何も変わらない。
とはいえ、団長が受け取ったチョコレートや贈り物が、デスクの上にいくつか積まれてはいる。
「……これは」
ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は、贈り物の整理を行いながら、包装紙に目を留めた。
それは、地球の高級洋菓子店の包装紙であり、可愛らしい封書の手紙までついている。
(他にもあるな。本命と思われるチョコレートや贈り物が)
ダリルは贈り主を確認し、品物を確認して名簿に記していく。
「すまない。お前も仕事があるだろうに」
「いえ、構いませんよ。参謀長の補佐ができて、むしろ嬉しいくらいです」
ダリルはここ団長執務室で、金団長のパートナーの羅 英照(ろー・いんざお)の仕事を手伝っている。
無論、チョコレートや贈り物の整理だけではく、資料作成といった事務処理も手伝っていた。
「だが、こんなことをさせておくのはもったいなくも感じる。お前は見かけも良く、多芸多才だからな。今日は色々な誘いが入ってるんじゃないのか?」
「からかわないで下さいよ」
英照の言葉に、ダリルは軽く苦笑した。
「この後、予定はありますけれどね。貰う方ではなく作る方です」
ダリルはパートナーのルカルカに頼まれ、大量のチョコ菓子を作らされる予定だった。
「なるほど、バレンタインの特別任務か」
「まあ、そうですね」
言って、2人は軽く笑い合った。
「ところで団長は、今日はどう過ごされるのですか?」
「普通の1日に過ぎんよ」
「パーティなどに出席する予定はないのですね。
それにしても、この大量のチョコレートはどうするのでしょう……」
金団長は甘いものが苦手なのだが、知らずに贈ってくる者は多い。
「なんともいえぬ顔をしながら、少しずつ食べていくはずだ。全てとはいかない場合も、無駄にすることはないだろう」
濁しているが、食べきれない分については英照や側近に手伝ってもらっているようであった。
「参謀長は? 今日はバレンタインの特別任務、ないのですか?」
「ははは……そのようなものはない。私も普通の一日と何も変わらんさ」
ごく軽く笑い、英照は金団長のスケジュールを確認する。
ダリルが手伝ってくれたおかげで、団長が戻るまでに済ませておかねばならない仕事は、ほぼ片付いていた。
「団長と離れていた期間もそうでしたか?」
「……ん?」
「いえ、団長と離れて地球に居た頃、参謀長と団長が互いにどう過ごされていたのか気になりまして」
ダリルの言葉に、英照は軽く苦笑をして。
一人、思い起こすのだった――。
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