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2024年ジューンブライド

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リアクション

「やっぱり、結婚式っていいわよね」
 とある結婚式場の来賓席で、隣に座る神崎 優(かんざき・ゆう)に、神崎 零(かんざき・れい)はそう言って微笑みかけた。
 今日は神代 聖夜(かみしろ・せいや)陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)の模擬結婚式だ。
 聖夜と刹那は、まだ本当の結婚式を挙げるには早いと考えていた。
 そこで、せめて模擬結婚式を挙げることにしたのだ。
「模擬でも、式を行う本人は幸せになれるでしょうし」
「もちろん本人は幸せだけど、周りの人も幸せになれるからな」
「そうね。本当に素敵なことだと思うわ」
 優と零は二人で話しながら、微笑み合う。
 今日、聖夜と刹那の二人が行うのは、和風の結婚式。
 巫女の先導に従って、聖夜と刹那の後を優と零は歩いていく。
 神聖な雰囲気に満たされた神社に、自然と気も引き締まる。
「私たちの時は洋風の結婚式だったけれど、和風な結婚式もいいわね」
 零が、周囲を見回しながら呟く。
「俺たちのときは、とにかく零のことしか見えてなかったからな」
「もう……っ」
 二人が微笑み合いながら結婚式を挙げた時のことを思い出しているうちに、聖夜たちの模擬結婚式が始まった。

 少し緊張した面持ちの聖夜と刹那が、お祓いを受ける。
(刹那のウェディングドレスが見たかったな)
 祭壇の前に立った聖夜は、ちらりと隣の刹那を盗み見る。
(……でも、和装も綺麗だ)
 白無垢姿の刹那は、なんだかいつも以上に魅力的に見えた。
 刹那は、聖夜が自分をじっと見つめていることに照れつつも、模擬結婚式を進めた。
 そうこうするうちに、神殿に向かって読み上げる誓いの言葉が終わった。
 玉串を捧げ、指輪交換になる。
「刹那」
 聖夜は、巫女から受け取った指輪を手に、刹那の左手を取った。
「……ふふ」
 刹那は指輪を嵌める聖夜の手付きの優しさに、思わず幸せな笑みを零す。
 今度は、刹那が聖夜の指に指輪を嵌める。聖夜も、何だか嬉しそうに微笑んだ。
「懐かしいな……」
 思わず、優が言葉を零した。聖夜と刹那の幸せそうな表情に、いろいろと思い出すところがあったのだ。
「結婚式の最中、ずっと幸せを感じ続けていた。あの二人も、きっとそんな気持ちなんだろうな」
「……あの時、優が急に抱き上げて来るから、嬉しかったけどビックリしたんだからね」
「そうだったのか?」
「でも……それもとっても幸せだった。」
 優と零が話している内容は、聖夜と刹那には聞き取れなかった。
 だが、二人がとても幸せそうであることは、確かだった。
 杯を交わせば、もう模擬結婚式はおしまいだ。
 退場したところで、聖夜と刹那の式は終わってしまう。
(幸せだったけど、あっという間だったな……)
 内心寂しく思う聖夜の心の中を読み取ったように、刹那が微笑んだ。
「……このまま本当の結婚式を挙げましょうか」
「えっ?」
 イタズラっぽく微笑む刹那に、聖夜は驚きの表情を見せる。
「ふふ、困らせてみたかっただけです」
 からかわれた聖夜が楽しそうに笑い、刹那もそんな聖夜を見て笑う。
 きっと、こういう感覚が幸せというのだろう。
 そう、聖夜と刹那は思いながら式場の外を見つめた。
「二人には、幸せになってもらいたいね」
「今から俺たちも幸せをもらえているんだ、きっといつまでも幸福でいられるさ」
 優と零は、刹那をお姫様抱っこした聖夜を見て、幸せそうに微笑んでいた。