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四季の彩り・FINAL~ここから始まる物語~

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四季の彩り・FINAL~ここから始まる物語~

リアクション

 
 第1章

 2024年、某日。レン・オズワルド(れん・おずわるど)は冒険屋ギルドの事務所で朝の光を受けながら物思いに耽っていた。それは、かつてのハロウィンの日に、パートナーの吸血鬼に告げられた事。
 ――自分の、死期について。
『……今までと同じように無理を重ねるというのなら、その時は命を削るしか』
 そう言われても、レンは日々を事務仕事一辺倒に変えたり隠居するという事はしなかった。魔族や光条世界での戦いなど、契約者を求める戦場は幾つもあった。
 その度に、レンは自分の命を削る戦いを続けてきた。
 そしてあの『魔王』との決戦の日
 老騎士がレンに話そうとしていた事――遮ってしまったが、彼女の態度が何を表しているのかは聞かなくとも解った。
(……元々、俺はそんなに強い契約者ではなかった)
 契約者になる際も、死にかけの状態だった。
 それがノア・セイブレム(のあ・せいぶれむ)に助けられ、彼女に大量の魔力を与えられて生き残り、その魔力を一種の起爆剤にしてこれまで数々の冒険を切り抜けてきた。だが――
『何だか懐かしい感覚ですねー。これが、智恵の実の効果ですか……』
 大廃都で、智恵の実を食べたノアはそう言った。彼女の身に、魔力が戻ったのだ。レンもその時、ノアの魔力が自分から抜け出た事を実感していた。
 この時、彼は――普通の契約者に戻った。
 本来ならこの時、前線から身を引くべきだったのだろう。
 しかし時代は、平穏を望まず――
 身体は既にボロボロだ。限界を迎える日は、もう、そう遠くない。
 だが、それでも構わない。
(こうして穏やかな日常を、皆と一緒に迎えられたのだから……)
 そう、これからは、愛する人と大切な友人達の為に生きるのだ。『自分』という物語がいつどこで終わるかなんて誰にも判らない。それなら、今を精一杯生きることだけを考える。
 だから、別に……悲観することなど何も無いのだ。他の誰もと、何も変わらない。
「レンさーん! 何してるんですか行きますよー!」
 感傷的な気持ちになったところで、ノアの声がした。現実に引き戻され、振り返る。そこでは、ノアとザミエル・カスパール(さみえる・かすぱーる)がそれぞれ荷物を持って彼を待っていた。今日は、アクア・ベリル(あくあ・べりる)の機晶工房「アクアのアトリエ」の完成披露パーティーだ。
 時計を見ると、時刻は朝10時。
(少し早い気もするが……行くか)
 スタッフとしても働くつもりだし、早すぎるということもないだろう。

「……随分と、変わったな」
「アクアのアトリエ」の前に立って、レンは呟く。ここは、元は彼が格闘式飛空艇 アガートラームの格納庫として使っていた倉庫だ。見違えるように可愛らしくなっていたが、あの頃に使っていた倉庫の面影も残っている。
 飛空艇の整備に何度も足を運んだ場所に、友人の家として訪れる。
「どうしたんだ? レン」
「いや……」
 ザミエルに応えながら、そこに少し不思議な感覚を覚えて、自然と口元に笑みが零れる。
(……そういえば、飛空艇を見せる為にフリューネを呼んだりもしたな)
 その時に、アガートラームの塗装の色を決めてもらったりもした。
 そんな事を懐かしく思い出し、ふと思う。
 今、自分は彼女とは違う女性と結婚したが、まだ、彼女と殆ど出掛けることが出来ていない。お互いに忙しく、自身の仕事を優先してしまうのがその理由だが、もっと彼女を誘い、色々な場所へ赴きたいと彼は思った。
(折角だから、電話で呼んでみるか)
 彼女が来れる、と言ってくれたら。
 ――俺の大切な女性を、皆に紹介しよう。

 ――その少し前。
「アクアさん、工房完成おめでとうございます。これは私とモーナさんからのお祝いです」
 工房に着いたメティス・ボルト(めてぃす・ぼると)は、アクアにモーナ・グラフトンと共に選び、揃えた工具セットをプレゼントしていた。モーナは今日も、ヒラニプラで忙しく働いている。
「……ありがとうございます」
「モーナさんから言伝があります。『おめでとう。これからはライバルだね』、だそうです」
「ライバル……そうですね。まだ手探りな事が多いですが……」
 真新しい工房を見渡すアクアに、メティスは思い切って言ってみる。
「これからアクアさんがこの工房で何を生み、何を直すのか……。同じ技術者として、興味があります。もし差し支えなければ、しばらく逗留して見学させてもらってもいいですか?」
「逗留……ですか?」
 アクアは再び工房を見渡し、脳裏に建物の見取り図を思い浮かべた。ファーシー・ラドレクト(ふぁーしー・らどれくと)は通いであるし、スカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)もそうだろう。彼女が泊まる部屋くらいは空いている。
「いいわよ! いくらでも見ていって、メティスさん!」
 考えている内に、先にファーシーが返事をした。何となくジト目を彼女に向けてから、改めて答える。
「構いませんよ。よろしくお願いします」
「ありがとうございます。では、今日は客ではなくスタッフとして働かせてもらいますね」
「え、あ、それは……」
 微笑みながら2人の遣り取りを見ていたメティスの申し出に、アクアは戸惑う。こちらとしては、彼女を迎えるつもりだったから。
「アクアさーん、おめでとうございますー!」
 押戸を開けて、その時ノアがレン達と一緒に入ってきた。ノアは、工房の中を見て「やっぱり」と言う。
「飾りつけとかはしてないみたいですねー。せっかくだから、ぱーっとパーティーっぽくしちゃいましょう! 実は、準備もしてきました!」
「手伝いますよ、ノア」
 メティスはノアに声を掛け、まだ戸惑っている様子のアクアに言った。
「今日は、多くの人が工房を訪ねてくると思います。動ける手はあって、困ることはないでしょう」
「そ、それはそうなんですが……」
 ノアは早速、折り紙やハサミをテーブルの上に出している。メティスも彼女の向かいに座って、準備を始めた。

              ⇔

 出迎えたアクアの視界一杯に入ったのは、色とりどりの花で作られたフラワーアレンジメントだった。それを渡し、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は、彼女に心からの祝いを言う。
「アクアさん、おめでとー!」
「あ、ありがとうございます。ファーシーに……?」
「うん、ファーシーに誘われたんだ」
 彼とエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)、赤子2人を連れた(アクアは少しびっくりした)リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)を中に案内する。歩きながら、アクアは手元のフラワーアレンジメントに目を落とす。
「綺麗ですね……いい香りがします」
「花束だと後の世話が大変だけれど、これなら霧吹きでシュッシュと水吹きかけるだけで大丈夫だからね」
 説明しつつ、これはアクアよりファーシー向きな贈り物だったかもとエースは思う。それが伝わったわけでもないだろうが、部屋で待っていたファーシーが花を見て明るく言う。
「わー! じゃあ簡単なのね」
「与える水を少なめにすると、そのままドライフラワーになっていくからね」
「それも、悪くないですね」
 ドライフラワーの雰囲気は、アクアのアンティークな趣味と合致して好ましい。ファーシーは、連れてきた2人の子供にわくわくとした目を送っていた。それに気付いて、エースも2人に目を遣った。
「……と、この子達を紹介しないとね。メシエとリリアに子供が生まれたんだ。双子の男の子と女の子だよ」
「メシエさん達に?」
 妊娠したと伝える機会がなかったこともあり、ファーシーは目を丸くした。アクアも驚いているようだ。にこにこと、リリアが報告する。
「9月の末に生まれたのよ」
「9月……じゃあちょっと早いのかな? お正月に会った時はまだ出来てなかったわよね?」
「花妖精って妊娠期間短いの。生まれてからも成長が早いのよ」
「花妖精は3歳ぐらいまでは一気に育つようだね。そこからは、ゆっくりと育つ。それまでは何の花の子かはっきりしないらしい」
「実質2ヶ月だけど、見た目1歳半ぐらいだからね。年末にはイディアに見た目は追いついてしまうかも」
 父であるメシエに続いてエースは言い、子供達に穏やかな目を向けた。明るい金髪で青い目をした男の子がフォルト、オレンジ色のふわふわな髪をした、金色の瞳の女の子がレイリーアだ。フォルトはメシエに似て聡明な瞳をしていて、何となくく思慮深い子に育ちそうだった。レイリーアは、今何にでも興味を持っている好奇心の塊だから、まだまだ目が離せない。
 子供達を見て、メシエが言う。
「2人とも、とっても可愛いよ」
「歩けるようになって、娘のレイリーアは喋り始めた所よ。息子のフォルトはパパママ程度だけれど」
 叔父さんのような空気を醸し出すエースの隣でリリアが言う。
「子供達にも友人を増やしてあげたくてね、連れてきたんだ」
「あっ、そうよね! イディア、ちょっとこっち来て」
「なあにー?」
 遊んでいたイディアがとてとてと歩いてきて、ファーシーとリリアは互いの子供同士を引き合わせる。その様子見ながらメシエは思う。成長具合が違うから、ファーシーとママ友といっても子育てについての話はあまり噛み合わないだろう。
(どうなのかねぇ。相談相手とかになるのかねぇ)
 まあ、楽しそうならそれでいいのだが。
 リリアは子育てに全く不安を感じていないようで、それを、メシエは内心で驚愕していた。度胸があるというか何というか。
「……成長の目まぐるしさに驚きの連続の日々だよ。それがまた楽しい日々だけれどね」
 同じように2組の親子を見ているアクアに話しかける。こちらを向いた彼女は、無言ではあるが少しばかり興味を引かれたようだった。
「数年前には想像もしなかった日常を、今送っている」
 話しながら、何となくしみじみとした気分になった。これも、リリアと結ばれる前にはあまり抱くことのなかった感情だ。
「アクア達も、未来を楽しむといい」
「……そうですね」
 アクアは真っ直ぐとした目で工房を見て、自然な笑みを浮かべた。
「ここで、少しずつ楽しんでいこうと思います」

              ⇔

「よぉ、久々だな」
「やっふー! アクア様、ファーシー様、『アクアのアトリエ』完成おめでとうございます!スカサハもとっても嬉しいでありますよ!」
「おめでとう、アクア、ファーシー」
 次に元気に工房を訪れたのは、ブラッドクロス・カリン(ぶらっどくろす・かりん)とスカサハ、、椎堂 朔(しどう・さく)満月・オイフェウス(みつき・おいふぇうす)だった。スカサハは、どこかにキャンプに行くような――否、それよりも大きいかもしれない――荷物を持っていた。何だか、とっても重そうだ。
「スカサハさん、その荷物どうしたの?」
「こちらにお引越しする為の荷物でありますよ!」
「……ここに住むつもりですか?」
 てっきり通ってくると思っていたアクアが驚くと、スカサハは「そうであります!」と全開の笑顔で言った。
「朔様と離れ離れになるのは寂しいでありますが、工房のメンバーとしてやはり寝食を共にしなければと!」
「そうですか……」
 寝耳に水ではあったが、それならそれでアクアとしても悪くはなかった。
「もちろん、ご飯などの家事も……」
「それはしなくていいです」
 だが、そこには即答する。「えっ」と鳩が豆鉄砲食らったような顔をしたスカサハは、「……はぁ」と少し残念そうにした。そこで、満月が彼女も含めた工房のメンバーに言う。
「でも、本当にアクアさんにファーシーさん、師匠も工房完成おめでとうございます。こちらの世界に来て色々ありましたが……ふふ、早いものですね……師匠達の工房完成に立ち会えるなんて……なんだか、不思議な気分です」
 未来でスカサハ達に機晶技術の色々を教えてもらっていた満月にとっては、師匠の工房が新しい、ということが変な感じだ。
「頑張ってくださいね」
 にっこりと微笑む満月に「はいであります!」と応え、スカサハはアクア達に言う。
「これからも一緒に頑張っていきましょうであります!」
 一先ずは、イディアやブリュケが成長した時に彼女達に伝授する技を磨くのが目標だろうか。彼女はそうして、連れてきた機晶犬のクランと調律機晶兵のウアタハを撫でた。
「目指せ、ミンツ君作成でありますよ!」
 元気に言うと、スカサハは上階に上がっていった。沢山の荷物を、空き部屋に置いてくるつもりなのだろう。彼女の背を少しの間見送ってから、朔はアクア達に向き直った。
「スカサハの事……よろしく頼むよ。これは、ささやかながらプレゼントだ」
 包装された大きな箱を、アクアに渡す。
「工房職員に共通の白衣が入ってる。良ければ使ってくれ」
「ありがとうございます」とお礼を言うアクアの隣で、ファーシーがわあ、と嬉しそうな顔をする。
「これでわたし達も白衣デビューね!」
「着てみたかったんですか……?」
 ミーハー的なファーシーにアクアが突っ込みを入れると、朔は「ふふ」と笑った。それから、右に左に立つ我が子を見る。
「今日は葉月と未月も連れてきたんだ……ほら、2人ともご挨拶だ」
 繋いでいた手で朔が頭を撫でると、子供達はファーシー達を見上げて舌足らずな言葉で挨拶した。
「こんにちはー」
「こ、こんにちはっ」
「こんにちは! 大きくなったわねー」
 身を屈めてファーシーが笑うと、2人も嬉しそうに人懐こい笑顔を浮かべた。
「ふふ、2人ともイディアちゃん達と遊んでおいで」
「「うん!」」
 同時に頷くと、葉月と未月はノアが飾り用の花を作っているテーブルに行って折り紙で遊んでいるイディアの名前を呼び、初対面のレイリーアとフォルトにも挨拶をした。ちょっとたどたどしげだ。レイリーアは「ぶ」と、フォルトも「こんにちは」と挨拶する。5人は、好きな紙を取って時に話しながら遊び始める。
「おおお可愛い! 折り紙で遊ぶみんな可愛い!」
 たまらず、朔はデジタルビデオカメラで子供達の姿の撮影を始める。リリアとメシエもそれを微笑ましく見守っていて、その中で、カリンは改めてアクアに言った。
「アクア先輩、とにかくまあ、おめでとさん」
「あ、ありがとうございます……」
「とりあえず、これは俺からの餞別だ。受け取ってくれや」
 四角い箱を机に置いて蓋を開けると、現れたのは大きいフルーツケーキだった。工房と職員メンバーがデコレーションされていて、デフォルメされた人形が可愛い。甘い匂いが気になったのか、子供達が振り返って近寄ってきた。
「ケーキだよー」「おいしそう……」「これ、かわいい」「たべたいな」
「こーら! イディア、まだ食べちゃだめよ!」
「レイリーアももう少し待っててね」
 リリアも手を伸ばしてケーキに触れようとする彼女を抱き上げる。
「私もお手伝いしますね」
 わいわいとしたその中で、満月はノアの隣に座って飾りつけを作る手伝いをする。それを見ながら、カリンはアクアに話しかけた。
「まあアレだ、お互いに嫌な過去持ってるが……お互い夢見て生きて行こうぜ? 偶に飯ぐらい作ってやるよ。後、スカ吉の事よろしくな」
「え、ええ……」
 アクアはからりとした彼女の言葉に、困惑気味に答える。寺院に関連した先輩呼びだったり何だりで、アクアは彼女につい意地になってしまったりもするのだが……カリンはもうさっぱりしたものらしい。
「……しっかし、先に先輩に店もたれるとわな……こっちはこれから物件探しだってんのに。なぁ、いい物件あったら教えてくれよ」
「……私がここを見つけるまで何件見て回ったと思ってるんですか。自分で探してください」
「ケチだな、まあいいや」
 そこで、カリンはにやりとした笑みを浮かべた。
「アクア先輩、風の噂で聞いたが俺に料理の腕を見せてくれるらしいじゃねーか……」
「はい!?」
「お手並み拝見、ミートパイでも作ってもらうか?」
「ちょ、ちょっと……そんな約束した覚えは……」
「ファーシーと一緒にしてほしくねーんだろ?」
「! あ……!」
 その言葉で、アクアは心当たりを思い出した。ほらほら、とカリンに煽られるように背中を押され、やむをえずキッチンに入る。そこでは、エオリアが料理を作っていた。彼は、彼女達を笑顔で迎える。
「あ、アクアさんも何か作りますか?」
「つ、作る……みたいですけどレシピを見ないと……」
 ミートパイなんて難易度が高い。慌てた口調で言う彼女に、エオリアは「そうだ」と棚の上に置いてあったワインを手に取った。そこそこ値が張りそうである。
「これを置いていきますね。クリスマスの時か年末年始に、大切な人と開けてみるのもいいですよ。3月でも良いですけど」
「3月……?」
「誰と、とかは言いませんけど」
 自分の名前由来でだろうか、と思ったが、エオリアのやけににこにことした笑みでアクアは気がついた。それは、まだ未来での『現象』の原因が判らず、調査結果を待っていた頃――
『アクアちゃん! 今日おにいちゃんの誕生日なんだよ! おいしいもの沢山買ってパーティーしようよ!』
 そう言ったピノの笑顔を思い出す。気が進まなかったが、落ち込んだ顔を見せる時間の多いピノが少しでも楽しめれば、と参加したのだ。つまり――
「………………………………」
 アクアは慌てて、少し顔を赤くしてエオリアに言った。
「あ、あの、だから、私は……」
「何を乙女な顔してんだよ先輩。ほら、作るぜ」
「あ、待ってくださいレシピを……って、乙女って何ですか違うんです!」
「あー、はいはい。じゃあまずはパイの材料な。薄力粉と……」
「本当に違うんですよ! し、信じてませんね!?」
 ますます顔を赤くして否定しようとするアクアを見て、エオリアは内心でにこにこしつつ話題を変える。
「アクアさん、僕が作っている料理のレシピも置いていきましょうか。簡単ですから」
「は、はい……」
 身を縮めながら、アクアは頷く。あの『魔王』が来た日に2人の中では話がついていたのだが、もちろん、そんな事は彼等は知らない。お互い誰にも言わないように、その話題を避けてきたからだ。
 ――フッた側として、何だか恥ずかしいような申し訳ないような気になりながら、アクアは料理を始める。

「あっ! 何やってんだよ先輩、そこは……」
「まだ火は止めない! これじゃべちゃべちゃだろ!?」
「だ、黙ってください! 今やってるんですから!」

 その後暫く、キッチンからは喧々囂々とした声が聞こえていた。