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リアクション
間奏曲 〜双璧、立つ〜
――東シャンバラ某所。
「まさか俺がフリーゲに乗る時が来ようとはな」
男は眼前の機体を見上げ、呟いた。
シュバルツ・フリーゲは部隊の指揮を執る者が搭乗する機体だ。自分のような一介の兵士が一小隊の指揮を執ることになるとは、夢にも見てなかったのだろう。
「期待してるぜ、小隊長殿」
ちゃかすように、一人の青年が彼に声を掛ける。どことなく粗暴な雰囲気を漂わせる若者は、厳つく硬派な風貌の男とは対照的にさえ見える。
「オレらの部隊で、カミロ様以外でお前の右に出るヤツは一人しかいねーんだからよ」
「買いかぶり過ぎだ。所詮は俺も下っ端の一人でしかない」
むしろ、自分が選ばれたということは、それだけ戦力が減っている証拠だ。男は自分の実力などその程度だとしか思っていない。
「……それで、エヴァン。お前から見て俺の右に出るヤツってのは?」
「決まってんだろ――オレだ」
予想通りだ。この男――エヴァンは自信過剰なところがある。長い付き合いだが、どうにもこの性は変わらないらしい。
「じゃ、なんで指揮を執らない?」
「んな柄じゃねーことやってられっかよ。わざわざ聞くんじゃねえ」
ぶっきらぼうに言い放つエヴァン。
「で、カミロ様はなんで出撃しねーんだ?」
「『会議』で今シャンバラにはいない。ここ最近の状況で、上も事態を重く見始めたのだろう。場合によっては幹部陣が動くかもしれん」
もっとも、幹部の顔ぶれを知っているわけではない。
自分達はカミロ様の命令を聞き、それに従っていればいい。余計なことなど知る必要はないのだ。
世の中には知らない方がいいこともあるということを、この小隊長はよく自覚している。
「にしてもタイミングがわりーな。カミロ様はいない、総督もここから出るつもりはねーようだし」
「総督まで不在になったら、誰がこの要塞を守るというんだ? 地上から応援を呼んだところで、すぐに来れるわけではないのだからな」
「ち、しゃーねーな。んじゃま、ガキ共の相手をしに行きますか、と」
二人はそれぞれのパートナーと合流した。
他の小隊は順に発進し、自分の隊の者達も大体が機体に搭乗し終えているようだった。
「ダールトン隊長、ロッテンマイヤー副長、準備完了です」
隊員の一人に促され、機体に乗り込もうとする。
「んじゃ、指揮の方は頼むぜ、グエナ隊長」
グエナ・ダールトンは、地球支部に入る以前からの友人の声にただ頷くのみ。
目標はイコン製造プラントの確保。そのために天御柱学院の少年・少女と戦わなければならないのならば、敵として駆逐する。
躊躇する必要などない。戦場に出る以上、彼らにも覚悟は出来ているはずだ。
出来ていないならば教えてやればいい。生半可な気持ちで戦場に出ることは身を滅ぼす、ということを。
命令に忠実でも、自分達は確固たる意志を持ってサロゲート・エイコーンを駆っているのだと。
「――ダールトン小隊、出撃する!!」
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