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リアクション
(・転送)
「全員集まったようですね」
天御柱学院超能力訓練所には、今回出動する超能力部隊の生徒達が揃っていた。
彼らの前には二人の人間がいる。
肩くらいまである銀色の髪を後ろで縛り白衣を纏った、研究者然とした眼鏡の少女。
スーツ姿で清潔感の漂う長身の男。
生徒達、特に強化人間は男の方をよく知っている。
(風間……!)
天貴 彩羽(あまむち・あやは)は集団の中から、その人物をキッと睨んだ。
彼こそが、天御柱学院で志願者に強化人間手術を施すための決定権を持っている、強化人間管理課長の風間だ。
一部の生徒にとっては確実に憎むべき対象だ。彼の決定によって強化人間となり、人格を壊された者も少なくはないのだから。
「今回の作戦は今後の情勢を大きく左右します。敵よりも早くプラントを確保して下さい」
生徒達に、風間は静かに告げる。
これは重要な作戦であると同時に、天御柱学院の強化人間、超能力者の優秀さを見せ付けるいい機会でもある。
大陸に渡って戦い続けてきた契約者達と天学生では、潜在能力に大差はないのかもしれないが、「経験」の面において大きな開きが生じている。
逆に言えば、その経験さえカバー出来れば、生身でも大陸の契約者と並び立つことが可能となるはずだ。
「では、始めるぞ」
転送術式の発動。パラミタ先進技術機構――PASDから来た術者、ノイン・ゲジヒトにより、生徒達は直接現地へと送り込まれる。
「座標確認。推定誤差0.001%――転送開始!」
次の瞬間には、もう超能力部隊の生徒の姿はなかった。
「ちゃんと無事に送り込めているのでしょうか?」
風間が訝しげにノインに問う。彼は魔法というものに、あまり信頼を置いていないようだ。
「大丈夫だ、問題ない。PASDに送られてきた座標と、転送先の座標にはほとんど誤差はない」
「遠く離れているのによく分かりますね。まあ、いいでしょう。貴女のことはユカギール校長も認めているようですし」
ノインを一瞥し、訓練所から去ろうとする。
「座標移動による転送装置でも出来れば、我々にとっては一番ベストなんですが……ね。空間跳躍の原理は未だに分かってませんので」
「そんなに不安か?」
「不安? 違いますよ。とはいえ、貴女には説明したところで分からないでしょう」
地球の最先端技術が集う街、海京。
その中枢に近い部分にいる男にとっては、魔法などというものは、信用するに値しない、実にいい加減なものだとしか認識していないのだ。
「それでは。ああ、これから海京分所に行かれるんでしたね。ドクトルにはよろしく言っておいて下さい」
風間は管理棟に、ノインは極東新大陸研究所海京分所に。
それ以上の言葉をかわす事もなく、訓練所を後にした。
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