リアクション
* * * 「よし、あとは実際に起動しての確認だけだ」 ラグナル・ロズブローク(らぐなる・ろずぶろーく)が傍らのパートナー、エルフリーデ・ロンメル(えるふりーで・ろんめる)に告げた。 「意外とすんなりと終わりましたね」 「あぁ? こう見えても、案外手先が器用なんだよ。驚いたか?」 エルフリーデ達、海洋生物研究会――作戦時におけるダークウィスパー小隊は事前に校長経由で、試験導入を許可してもらったある「システム」を機体に組み込んでいた。 今回の作戦行動における小隊の目標、それは天御柱学院のイコン部隊として敵を退けることもそうだが、このシステムの有用性を証明することにもある。 「DW―C2もあとは調整だけだよ。他は大丈夫」 クローディア・アッシュワース(くろーでぃあ・あっしゅわーす)とシャーリー・アーミテージ(しゃーりー・あーみてーじ)の二人も、システムと機体の調整を行っていた。 とはいえ、コームラントはこの二ヶ月で大分整備方法が変わった機体だ。 「従来よりも欠点は減りましたが、その分整備が大変になりましたね」 シャーリーが機体を見上げる。 コームラントの大型ビームキャノンは、手持ち式のものであった。武器自体は変わらないが、現在はグリップを握るわけではなく、腕部に専用のアタッチメントを用いて取り付けられている。 これにより、それぞれの手に取り付けられたビームキャノンは従来以上の安定性を実現し、また移動時は邪魔にならないように後部にスライドさせ、マニピュレーターで何かを掴んでも砲身が邪魔になることはない。 汎用機関銃を装備出来るようになったのも、そのためだ。その分、機関銃からビームキャノンへの切り替えをどれだけ行えるかが重要となる。 「武装追加出来るくらいまでイコンの仕組みを解析出来たんなら、新型機も出来たりしないのかな? 二人だけじゃなくて、それ以上でも乗れるようなのが」 武装を変換しても機体が正常に起動出来るようになったということは、イコンに組み込まれたプログラムの書き換えに成功したという事実を示している。 あとはサロゲート・エイコーンの機体構造さえ完全に判明すれば、新しい機体が出来る日も訪れることだろう。 「部隊記章のマーキングはこれでよし、と。フェル、ミーティングは任せたよ」 「了解……仕上げ、よろしく」 十七夜 リオ(かなき・りお)はフェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)を集合場所へ向かわせ、残りの調整に取り掛かる。サブパイロットとして機体にも乗り込むが、彼女は整備科だ。優先すべきはあくまで機体の整備である。 「アルマ、こっちも三人で仕上げておくから、お願い」 「分かったわ」 天王寺 沙耶(てんのうじ・さや)もアルマ・オルソン(あるま・おるそん)を向かわせる。彼女自身は、クローディア、シャーリーと共に機体調整を行う。 「沙耶くん、システムの調子はどう?」 「起動はちゃんと出来てるよ。後はデータリンクのチェックかな」 「その辺は他の機体と合わせて確認した方が良さそうだね。出撃前に乗り込んだときにする事になりそうだよ」 そろそろパイロット科が本科の生徒はミーティングの時間だ。調整はいいペースで行われている。 イーグリットとコームラントではコームラントの方が整備に時間がかかるため、イーグリットの整備が終わったらコームラントの手伝いを行う。 整備科の生徒は両方の整備方法を学んでいるため、どちらでも対処出来るのだ。 「これを見る限りだと、敵のイコンに比べて学院のは性能的に上だよね」 「だけど、性能差はパイロット力量で埋まるものだよ。悔しいけど、前に僕はそれを味わってる」 タンカー護衛戦を思い出すリオ。今、かつてあったその敵との差はどれだけ埋まったのか。 そしてもしまた出てくるなら、今の自分の――いや、チームでどれだけ対抗出来るだろうか。 |
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