リアクション
* * * 「さすがに乗っていくわけにはいかないが、このくらいなら……」 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は、小型飛空挺オイレを使い、内部の索敵を行った。 さすがにプラント内部を飛空挺で飛ぶわけにはいかないが、その機能を使うことで、例え不可視の敵がいたとしても見抜くことは出来る。 「近い範囲では、三か」 しかし、ダークビジョンを持たない彼には、敵の居場所を正確に把握するのは難しい。 「エヴァルト、もう近くまで来てるよ」 「ああ、分かってる」 ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)が殺気看破で敵の気配を察知する。エヴァルトもまた、それを感じ取り、襲撃に備える。 「来たか!」 姿は見えない、だが、気配でどこにいるかは大体把握出来る。 エヴァルトは軽身功で跳び、三方からの攻撃をかわす。直後、ロートラウトが敵の気配がする場所へ向かってミサイルを放った。 「……不気味な連中だ」 黒い装甲服にフルフェイスヘルメットを被った姿が露になる。迷彩の効力が失われたようだ。 どうやら相手は超能力の使い手らしい。 しかも、決して弱い相手ではなさそうだ。三人はそれぞれ別の場所に跳び、エヴァルトを翻弄しようとしてくる。 その中の一人に狙いを定め、彼はドラゴンアーツで攻撃を加える。 背後からは複数のナイフが飛んでくる。それらを、ロートラウトがミサイルで撃ち落として、当たるを防ぐ。 「――――!!」 エヴァルトは雷光の鬼気で、鳳凰の拳を撃ち出した。 敵はサイコキネシスとフォースフィールドによって、それを防ごうとするが、間に合わずに吹き飛ばされる。 「まずは一人」 が、そうしている間に敵の気配は消えていた。 「逃げたみたいだよ」 「闇雲に向かってくるわけではないか。手強い連中だ」 敵もこちらを倒すよりも、プラントを確保することを第一優先として動いているらしい。ならば、と彼らも敵に対抗するため、プラントの深部を目指す者達との合流を図る。 エヴァルト達から離れていった装甲服達の姿を、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)達が捉えた。 「来たよ、メイベル!」 セシリア・ライト(せしりあ・らいと)、メイベル共にダークビジョンを会得している。彼女達に迫る人影は二つ。 「この先は下のフロアに通じています。ここで止めませんと」 下の階でも戦いが始まっている。今、自分達に迫っている敵がここを突破して応援に駆けつけるとなると、かなり不味い。 なにやら超能力と高い身体能力を持っているということは無線で伝わってきている。光学迷彩らしきもので姿を消すことが出来るとも。 ただ、目の前の二人が姿を消さないということは、既に自分達以外と戦った可能性がある。 やられたのか、それとも勝てないと踏んで退いてきたところなのか。どちらにせよ、戦わざるを得ないことに変わりはない。 「二人相手ならわたくしたちで何とかなりそうですわね」 フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)が剣を構え、敵を見据える。 殺気看破で感じ取れる範囲では、眼前の二人以外に敵はいない。 次の瞬間には、敵が動いていた。一人は壁を、もう一人は天井を走っている。 「軽身功、ではなさそうですね」 やはり無線で伝わってきた通りだ。 黒の兵士はその体勢から飛び掛ってくる。それに対し、フィリッパがエクスカリバーを斬り上げた。 敵はリーチの短いナイフでそれを受け止め、宙で一回転して着地する。そのまま攻撃態勢を維持し、もう一人の装甲服と連携して再び三人に向かってくる。 「――速いッ!」 二人のコンビネーション攻撃に、防戦一方になる彼女達。 だが、一瞬でも隙があればこちらが攻撃に移ることは可能だ。二体三、彼女達も決して弱いわけではない。 セシリア、フィリッパが敵の攻撃を受け流した瞬間、メイベルはランスバレストを敵のうちの一方に繰り出した。さすがに、これは避けられない。直撃し、そのまま壁に叩きつけられる。 それが突破口となった。続いて、フィリッパが轟雷閃を放つ。どうやら敵の装甲服は電撃に弱いらしく、かなりのダメージを受けているようだ。 ふらふらと立ち上がるが、もはやそれが精一杯であるようにも見える。もう一人の方は、倒れたまま起き上がらない。 ここで、メイベルはヒプノシスで立っている敵を眠らせようとする。それが効き、敵は膝をつくが―― 「……下がって!」 敵の身体から煙が上がる。メイベルらは即座に退避し、身を伏せる。 直後、敵が爆ぜた。自爆したのである。それに巻き込まれ、もう一人の黒の兵士も原型が残らないほどになってしまった。 もし、あのまま眠りに堕ちていたら、そのまま捕縛して捕虜に出来ただろう。だが、敵はそうなるくらいなら死を選んだのだ。 かつて、天学校長護送タンカーの襲撃者達も、捕縛を恐れて自爆している。そうまでして、彼らが知られまいとしているのは果たして何だろうか。 |
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