リアクション
左スラスター 「よかった。無事合流できたぜ」 メイドロボたちとの空中戦を避けてやってきたミカ・ヴォルテールが、三笠のぞみとの再会を喜んだ。 「ここには、沙幸や刀真はいないのか?」 武神牙竜が、周囲を見回して言った。 すぐ近くには、巨大なスラスターが見える。そのそばに、少数の者が集まっていた。 「反対側のスラスターの方にも、その人たちはいないようよ」 パートナー間通信でエシク・ジョーザ・ボルチェに確認をとったローザマリア・クライツァールが答えた。 「そうか。助かる。では、俺たちはコハクと一緒に島の中央へむかってみよう。どちらにもいないということは、美羽と一緒ということも考えられるからな」 ここまで案内してくれたことをミカ・ヴォルテールに感謝すると、武神牙竜と武神雅は、コハク・ソーロッドと共にその場を離れた。 「さて、どうするかだよね。破壊しちゃうのが手っ取り早そうだけれど」 「ココ・カンパーニュのようなことを言わないでよ」 ローザマリア・クライツァールが、ズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)に言った。言ってから、心配になって、パートナー通信でエリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァにココ・カンパーニュをちゃんと押さえるように言っておく。 「壊すのは最後の手段ですね。コントロールをこちらで奪って利用できればいいのですが」 ナナ・ノルデン(なな・のるでん)が、スラスターを見つめながら言った。 「そうだよね。うまく動かせれば、好きな所へ移動できるじゃん」 茅野 菫(ちの・すみれ)が、ちょっと妄想しながら言った。空京その物をぺちっと上からこの島で潰すというのも、ちょっと面白いような気もする。 「動かすとしたら、右方向だわよね。ほら、こういうルートを通れば、多分空京を避けて、元の気流に戻れると思うんだけど」 パビェーダ・フィヴラーリ(ぱびぇーだ・ふぃぶらーり)が、簡易マップを地面に描きながら説明した。 「そのためには、反対側と綿密な打ち合わせをとらないとうまくいきそうにないですね。コントロールさえできるのであれば、なんとかなりますが」 「それなら、多分あの部品は闇市とかで集めた地球製のエンジンだと思うから、大丈夫だと思います」 ナナ・ノルデンが、ランツェレット・ハンマーシュミット(らんつぇれっと・はんまーしゅみっと)に言った。 「下に落としちゃだめだよね?」 それなら、変にタイミングとか考えないでもいいのにと三笠のぞみが言う。 「こんな物が落ちたら、大波が起きて海京が大変なことになるであろうが」 「まあ、多分そうですね」 呆れたように言うグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)の言葉に、ランツェレット・ハンマーシュミットが一応うなずいた。だが、一応墜落さえさせなければ、上下移動も選択肢のうちではある。もっとも、雲海という物が、どれだけの上下移動を許し、かつ安定させてくれるかということだが。各島や大陸の海抜にあたる物はほぼ同位置であることからして、上に行くというのはさすがに無理そうではある。 「そう。分かったわ。聞いて、反対側のゴチメイたちは、スラスターを制圧して動かすことに決めたそうよ。島の進路を変えて、空京を回避させるって。成功させるためにはこちらとの連携が必要だから、こちらもスラスターを占拠してほしいって言ってきたわ。もちろん、異存はないわよね」 ローザマリア・クライツァールの言葉に、全員が即座にうなずく。 茅野菫の空飛ぶ魔法↑↑で密かにスラスターのフレームに降り立つと、一行は島の中へと入っていった。そこにも、多数の敵が何やら忙しそうに動いている。 だが、ココ・カンパーニュたちのいる方のグループとは違って、こちらは戦力不足であったのでかなり苦戦を強いられることとなった。 「ひかり在りて……」 三笠のぞみの祈りと共に、小ババ様の内部回路が焼き切れて停止する。そこを、ミカ・ヴォルテールがリカーブボウで射貫いて、背後のメイドロボにぶつけた。直後に、自爆したメカ小ババ様の巻き添えとなってメイドロボが壊れる。 「それ、いい方法じゃん」 茅野菫が、狼に命じて、素早く銜えたメカ小ババ様をメイドロボにぶつけさせた。破損したメカ小ババ様が、狙い通りに自爆してメイドロボを道連れにする。 「じゃあ、こっちも」 パビェーダ・フィヴラーリが、氷術で凍らせたメカ小ババ様を拾って、手榴弾よろしくメイドロボに投げつけた。メカ小ババ様の自爆までにはタイムラグがあるので、ほとんど手投げ弾の代わりに使えた。 それを見たズィーベン・ズューデンもまねをし、ナナ・ノルデンが素早い拳の動きで正確に目標めがけてメカ小ババ様爆弾を飛ばしていった。 そんな変則的な攻撃に頼ることなく、ローザマリア・クライツァールがグリントフンガムンガを投げてメイドロボを打ち砕いては、素早く拾い直して次の獲物を仕留めていく。 「一刀の下に切り伏せよう」(V) そのそばでは、両手に七支刀を持ったグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーが、あたるを幸いにメイドロボたちを斬り捨てていった。 どうも、スラスターを破損しないようにプログラムされていたらしく、角度によってはメイドロボたちは白兵戦しかしてこなかった。これは、ローザマリア・クライツァールたちにとって幸いだっただろう。 「ふっ、これでもうおしまい……ですよねっ♪」(V) ほとんど見学していたランツェレット・ハンマーシュミットが、ゆっくりと制御装置のコンソールへとむかっていった。 「ふむふむ、本当に地球製の機械のようね。メーカー名とかはうまく消してあるみたいだけれど、時間があれば後でじっくり調べてみたいものですね」 コンソールを調べながら、ランツェレット・ハンマーシュミットが言った。律儀に何の機能のボタンであるかまで明記してあるので、これなら操作を間違えようもない。 |
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