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リアクション
★ ★ ★
「これって、何かおかしくはありません?」
迷子になっていたクレア・シルフィアミッド(くれあ・しるふぃあみっど)が、ちょっと地面しゃがみ込んで言った。島自体が、何か大きく動いているような気がする。
「うーん、確かに。島の動きに変化が起きたみたいですが……」
怪訝そうに、安芸宮 稔(あきみや・みのる)も同意した。
そこに、何か金属を殴りつけているような音が聞こえてくる。
「行ってみよう」
安芸宮 和輝(あきみや・かずき)が、二人をうながした。
「だあから、むやみに見つけた物を壊そうとするから持ち主が怒るんだよ」
「ははははは、構いませんとも。ここでなら、敵が殴れます。私は満足です!」
豪快にメイドロボにむかって鉄拳を叩き込んで楽しそうにしているルイ・フリード(るい・ふりーど)にむかって、シュリュズベリィ著・セラエノ断章(しゅりゅずべりぃちょ・せらえのだんしょう)が叫んだ。その近くには、半ばこじ開けられた扉があり、その隙間から、メイドロボとメカ小ババ様が外に出てこようとしていた。ルイ・フリードが戦っているのは、戦いの喧噪に気づいて周囲のパトロールから戻ってきた敵たちだ。
「こんな所で、何を戦っているんだ」
安芸宮和輝たち同様に物音を聞きつけてやってきた御剣 紫音(みつるぎ・しおん)が叫んだ。同様に、この戦いの音を聞きつけて、近くにいた久世 沙幸(くぜ・さゆき)と樹月 刀真(きづき・とうま)も駆けつけてきた。さすがに、これだけ派手に戦っていたのでは、気づかない方がおかしい。
「いや、何か入り口を見つけたので、喜んで開けようとしたら敵の巣だったんだよ」
ひきつり笑いを浮かべながら、シュリュズベリィ著・セラエノ断章が言った。
「あんなところに入り口が……。きっとその先にロボットたちの基地があるんだもん」
久世沙幸が決めつけた
「むう、ここに牙竜がいてくれば、戦力としては十二分なんだが……」
ただの探検のつもりが、またしてもメイドロボに襲われる事態になっている。これは、絶対に何かが起こっていると樹月刀真は確信した。もしそうであれば、あの男、武神牙竜であれば、是が非でもこちらへむかっているに違いない。できれば合流したいところだった。
「とにかく、私たちも加勢します。クレア!」
「はい」
安芸宮和輝に呼ばれて、クレア・シルフィアミッドが胸の前に合わせた両手で、光条兵器の柄をつかみ取る。
「アマツヒカリヤエハ!」
剣の名を叫ぶなり、クレア・シルフィアミッドが、その柄を安芸宮和輝にむけて投げた。
右手を挙げてそれをつかみ取った安芸宮和輝が、そこに左手を添えて勢いよく振り下ろした。その勢いのまま、二メートルを超す光条の青白い刀身が現れる。
「月夜、こちらも光条兵器だ」
樹月刀真が、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)の方に手をのばした。思わず、反射的に漆髪月夜が身を引く。
「いや、事故は起こさないから……」
「自分で……出す。んっ」(V)
漆髪月夜が、自分で光条兵器黒の剣を取り出して樹月刀真に渡した。
「どうしてこうなった!」
樹月刀真が、攻撃してきたメカ小ババ様を一刀両断にして叫んだ。
「二人とも、いったんこっちへ来い!」
御剣紫音が、綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)と共に、敵を狙撃しながら叫んだ。
いったん下がるみんなに、アルス・ノトリア(あるす・のとりあ)とアストレイア・ロストチャイルド(あすとれいあ・ろすとちゃいるど)がパワーブレスをかける。
「ありがたい、いただきます。……みなぎってまいりました!!」(V)
空中戦でまったく何もできなかった鬱憤を晴らすかのように、ルイ・フリードが大暴れする。
「刀真さん、おまじないです。御武運を」
封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)が、樹月刀真に禁猟区をかけた銀の飾り鎖を渡すと、彼にパワーブレスをかけた。
「沙幸、沙幸、わしの出番じゃ」
再びメイドロボたちとの戦いに飛び出す仲間たちと一緒に行こうとする久世沙幸の袖を、ウィンディ・ウィンディ(うぃんでぃ・うぃんでぃ)が引っぱった。
「ちょっと、ウィンディさん、あなた何か企んでませんこと?」
藍玉 美海(あいだま・みうみ)が、不信の目でウィンディ・ウィンディを見て言った。
「何を言う。戦いのときに、魔鎧であるわしを着ないでどうするというのだ。沙幸の身体はわしが身をもって守ってやるのじゃ」
言うなり、ウィンディ・ウィンディが自分の身体を解いて布に変化し、久世沙幸の身体に巻きついていった。
「あっ、また……。そこはだめだよぉ」(V)
久世沙幸が小さく悲鳴をあげる。なぜか、ウィンディ・ウィンディは、自分に装着するときにわざわざ着ている服の下に潜り込んでゴスロリ着物型の魔鎧になる。そのとき、邪魔なそれまでの着物を目にも止まらぬ速さで剥ぎ取ってしまうのだ。そのときの着物は、几帳面に足許に下着ごときちんと畳まれておかれるのだった。
「また、そんな装着のしかたを、許せませんわ!」
そう叫ぶと、藍玉美海が、その怒りをサンダーブラストに乗せて、近くにいるメカ小ババ様たちにぶつけた。
「ふふふふふ、嫌ならこのわしを引っぺがして……あ、こら、本当に脱がそうとするではない」
減らず口を言ったウィンディ・ウィンディであったが、本当に藍玉美海が自分を久世沙幸から脱がそうとしたので無茶苦茶あわてた。
「もう、ねーさまもウィンディも、いいかげんにして。今は戦いの最中なんだもん!」
さすがに怒鳴ると、ようやく久世沙幸が樹月刀真たちの援護に走っていった。
「まったく」
まだ暖かい久世沙幸の脱ぎたてを回収しながら、藍玉美海がつぶやいた。
「やれやれ。それにしても、いったい、あれは何の入り口なんです?」
後方サポートとして待機しながら、安芸宮稔がアルス・ノトリアに訊ねた。
「多分、この島をコントロールしている施設の入り口じゃろう」
「コントロールですか?」
何のことだろうと、クレア・シルフィアミッドがアルス・ノトリアに聞き返した。
「島自体が誰かの意図の下に動いたのは確かでしょう。南にむかっていたはずが、今は東にむかっています。このまままっすぐ進んでいけば……空京です」
綾小路風花が、様々な情報をまとめて出した結論を述べた。
「つまりは、早くなんとかしないと、ドッカーンと大衝突というわけなのじゃよ」
アストレイア・ロストチャイルドが、分かりやすく補足した。
「それって、大変じゃないですか! すぐに止めないと。もしかして、あそこから中には入れるんでしょうか」
安芸宮稔が、メイドロボたちがつっかえている扉をさして言った。隙間からは、小さい身体をいかして、メカ小ババ様たちが這い出してきている。
「しかし、あれでは入りようがないんじゃが」
困ったように、アルス・ノトリアが言った。
「セラ、やってしまいなさあーい!」
扉の正面に立って、ルイ・フリードが叫んだ。むかってきたメカ小ババ様のティザーガンのプローブが、ルイ・フリードの完成された肉体に弾き返される。
「はははは、そんな物は私には効きません!」
「よいのか。やってしまうぞ。セーフティ解除、行動開始……」(V)
待機していたリア・リム(りあ・りむ)が、左右の六連ミサイルポッドを一気に開放した。
「全弾発射なのだよ!」
十二発のミサイルが、一点にむかって飛んでいく。
大爆発と共に、近くにいたメイドロボと共に扉があっけなく吹き飛んだ。爆風に、中にいたメイドロボたちが全滅する。
「さあ、今のうちです!」
鉄拳でメカ小ババ様を叩き潰しながら、ルイ・フリードがうながした。
「よし、突入するぞ!」
御剣紫音が、扉の中へと駆け込んでいく。
「制御室を目指しましょう。なんとかして、地球の海にこの島を降下させれば衝突は避けられるはずです」
安芸宮和輝たちが、それに続いた。
「おっと、ここは通しません。セラ、リア、派手にいきましょう」
最後に入った樹月刀真たちの後を追いかけようとする敵の前に、ルイ・フリードが立ちはだかった。
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