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リアクション
「片方のスラスターだけを破壊すれば、バランスが崩れてコースが曲がるんじゃないでしょうか。空京を避けるのであればどちらでもいいでしょうけれど、他の場所にぶつからないようにするには、左側を壊した方がいいのではないでしょうか」
エレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)が、雲海の地図を見ながら提案した。
「そうですね。両方でなくて、片方だけ壊せばこんなコースをとるんじゃないでしょうか」
浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)が、地図上を指でなぞりながらコースを想像した。
「それはいいかもですぅ」
「うん、いいかも」
「なんとかなりそうですね」
撲殺天使たちがすぐに賛同する。
「そんな乱暴な……」
「いやですぅ、ただの言葉の綾ですぅよぉ」
ステラ・クリフトンが絶句するのを見て、あわててメイベル・ポーターがごまかした。
「やっかいだなあ。要はぶつからないようにすればいいんだろ。ここで全部ぶっ壊しちゃえばいいんじゃん」
ココ・カンパーニュ(ここ・かんぱーにゅ)が、現在は停止しているスラスターを睨みつけて言った
「とりあえず、目の前にあるあれを破壊すればいいんだったら、ぜひ協力するんだもん」
秋月 葵(あきづき・あおい)が、ココ・カンパーニュに賛同する。
「ストーップ……なの。壊しちゃ、だめ……なの!」
エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)が、ココ・カンパーニュにしがみついて止めた。
「ううっ、こら、しがみつかないでよ」
困ったように、ココ・カンパーニュがエリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァをふりほどく。
「たのむ、アルディミアクもココを止めてくれ」
このままじゃやばいと、トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)がアルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)に頼み込んだ。
「その通りですよ、お姉ちゃん。何でもかんでも壊したらだめです」
「ちぇっ」
アルディミアク・ミトゥナにまで注意されて、ココ・カンパーニュが思わず舌打ちする。
「では、スラスターを逆転させればいいのでは?」
浅葱翡翠が提案した。
「それがいい。だが、どちらに回転させるかを決めないと。お互い逆むきにしたって、多分、多少ブレーキがかかるだけだぜ。たいていは、メインエンジンの出力の方が大きいからな。さっきの回避コースをとらせるとしたら、こちらを逆転させて、むこうはそのままかな。うまくすれば、クルクルと回って、回転ジェットで上にあがって避けられるかもしれねえぜ」
「それじゃだめでしょうが」
レムテネル・オービス(れむてねる・おーびす)が、リア・レオニス(りあ・れおにす)に突っ込んだ。
スラスターを使って方向を変えるのは名案だが、やり過ぎればリア・レオニスの言うようにクルクルと回転してしまう。
「そうですねえ。ちゃんと何分噴射するか決めないとお」
チャイ・セイロン(ちゃい・せいろん)も、まずはちゃんと作戦を練ることを提案した。
クルクル回ったのでは、島にいる者たちがどうなるか分かったものではない。最悪振り落とされてしまうということも考えられる。
「やっぱり、元の周回軌道に乗せるのが一番だよね。だとしたら、四十五度以上右にむけないとだめかな。そして、そこで固定しなくちゃ。でも、そういったスラスターの制御だったら、朝野ファクトリーのこのあたしに任せて」
朝野 未沙(あさの・みさ)が自信満々で胸を張った。
「そうですね。各エンジンを利用するためには、その制御をこちらで奪い取る必要があります」
魯粛子敬が作戦のポイントを説明する。
「むこう側も、スラスターの奪取を計画しているとのことです。ここは作戦の同調を」
こちらの状況をローザマリア・クライツァールに逐一報告していたエクス・シュペルティアが、携帯電話片手に言った。
「それで、あれを、壊さないんなら、具体的にどうするんだい?」
マサラ・アッサム(まさら・あっさむ)が、あらためて訊ねた。
「スラスターを制圧しても、使えないのでは意味がないですね。どちらかというと、エンジンその物よりも、コントロール装置を手に入れる必要があると思います」
「その通りです」
魯粛子敬が、ペコ・フラワリー(ぺこ・ふらわりー)の言葉にうなずいた。
「どう見ても、あの装置は後からつけた物のようですから、すぐ近くに制御装置などがあるはずです。もちろん、すべてのエンジンを統括してコントロールしなければいけないですから、個別の制御装置とは別に、全部を一括してコントロールする装置もあるでしょう」
「ということは、その両方を押さえなければ意味がないというわけですね」
少しやっかいだと、ペコ・フラワリーが考え込んだ。
「なら、私は全体のコントロールを探して島の中央付近へ行きましょう。はぐれた人たちが未だに音沙汰がないというのは、すでに内部に突入している可能性がありますから」
本郷涼介が、別働隊を申し出た。
「涼介兄ぃの行く所なら、ボクもついてくよ」
空飛ぶ箒を用意して、ヴァルキリーの集落 アリアクルスイド(う゛ぁるきりーのしゅうらく・ありあくるすいど)が言う。
「お願いします。最低限こちらを制圧すれば、メインコントロールを切って独自に動かせると思いますが、すべてを一括してコントロールすることができれば、それに越したことはありませんから。それに、島に散らばってしまった人たちをまとめないと、後々困ることになるでしょうから」
魯粛子敬が頼んだ。
「なに、それ以外にも、ここに黒幕がいるかもしれませんからね」
本郷涼介としては、オプシディアンたちがここにいる気がしてならなかった。
「アンテナがあるということは、敵が通信を交わしている、あるいは空京からの誘導を受けている可能性もあるな。だとしたら、アンテナも放ってはおけないな」
テノーリオ・メイベアが、自分が発見した鉄塔のことを思い出して言った。
「それは島の中央にあったのですよね。司令基地のような物があるとすれば、そのあたりが怪しいとうことでしょうか」
本郷涼介は、とりあえずそこを調べてみようと考えた。
「なら、俺が案内するぜ」
「私も同行するわ。受信機を分解すれば、迅速に無効化できるでしょう」
ミカエラ・ウォーレンシュタットが、テノーリオ・メイベアと共に言った。
「じゃあ、こちらはスラスターの奪取ね。多分守っている敵がいるだろうから、それをやっつけなくちゃ。頑張るわよ」
過剰にやる気満々で、水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)が元気よく腕を突きあげて叫んだ。
「まあ、とにかく、目の前のことからこつこつとじゃな」
よく分からないが敵を倒せばいいのじゃろうと、天津 麻羅(あまつ・まら)が戦いの準備をする。
「せっかくの浮遊島探検を台無しにされて、私怒ってます」
ピクニック気分をぶち壊されて、エレン・バスカヴィル(えれん・ばすかう゛ぃる)はおかんむりだった。
「まあ、こうなってしまってはしかたないのだ。気分を切り替えて、悪党退治といこうではないか」
スナイパーライフルを点検しながら、霧島 悠美香(きりしま・ゆみか)が言った。
「みんな、あまり無茶はしないでよ」
守る身にもなってほしいと、機式魔装 雪月花(きしきまそう・せつげっか)が釘を刺した。
「さて、その肝心の制御装置はと……。近いな、どうやら地下にあるみたいだ」
レン・オズワルドが、トレジャーセンスでスラスターの制御装置を探ってみた。
「スラスターと繋がっているとしたら、スラスターを支えている柱がでてきた穴から中へ入れそうだな」
レン・オズワルドが、突入口の目星をつけた。スラスター自体は、地下からスライドしてでてきた物である。当然、今まで収納されていたスペースが地下にあるはずだ。
「参りましょう。私が道を開きます」
メティス・ボルト(めてぃす・ぼると)が戦闘態勢をとりながら、レン・オズワルドに言った。
「ノアは、ここで待っていてくれ。戦闘は、俺たちの仕事だ」
キッと、スラスターの基部を睨みつけたレン・オズワルドが、いつもよりも低い声で言った。この空京の人々を無差別に狙ったような理不尽とも言える敵の攻撃に怒っているのだ。
「よし、いっちょう暴れようぜ!」
「壊しちゃだめだからね、お姉ちゃん」
気炎をあげるココ・カンパーニュに、一言アルディミアク・ミトゥナがつけ加えた。
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