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ゴチメイ隊が行く5 ストライカー・ブレーカー

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ゴチメイ隊が行く5 ストライカー・ブレーカー

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「なんか、やばい雰囲気がしませんか? 島の動きが変わったのではないでしょうか」
 突然の衝撃と、吹き荒れる風と流れ込む雲に、紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が注意をうながした。
 ビチビチビチ。
 突然、何かの跳ねるような音と、咆哮がその場に響き渡った。
「今のはなんでしょう……」
 プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)が紫月唯斗に訊ねる。
「分からないが、調べてみる必要はありますね。みんな、敵に備えてください」
 紫月唯斗にうながされて、小型飛空艇に乗ったエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)紫月 睡蓮(しづき・すいれん)がうなずいた。
 進んでいくと、周囲が酷く荒らされている場所に出た。何かを叩きつけたように木々が倒れ、地面が少しえぐれている。
 悲痛な咆哮が響いた。
「あ、ジャワさんです。みんなの所に戻ってこられた……。あれ? 違います。野生のワイバーンでしょうか。なんだか、怪我をしているみたいですけれど」
 広げた翼を地面の上で力なくばたつかせているワイバーンを見つけて、紫月睡蓮が言った。
「行ってみましょう」
 臆することなく紫月唯斗がワイバーンに近づいていく。さすがに、ワイバーンが威嚇するように紫月唯斗たちを睨んで吼えた。
「怖くない、怖くない……」
 そう言いながら紫月唯斗がなおも近づいていったとき、突然霧の中を何かが突進してきた。
「マスター!!」
 即座にプラチナム・アイゼンシルトが魔鎧化して紫月唯斗と一体化した。
「危ない!」
 暴れるワイバーンを恐れもせずに、紫月唯斗がその前に立って、跳ね飛んできた巨大サンマを白金の籠手を装備した鳳凰の拳で大きく頭上へと殴り飛ばした。紫月睡蓮が、サイコキネシスでサポートして、みんなの背後へと巨大サンマを投げ飛ばす。
「怪我をしています。エクス、早くこちらへ」
 紫月唯斗がエクス・シュペルティアを呼んだ。
「なんで、こんな所にサンマが……」
 ちょっと驚いて、紫月睡蓮が言った。
「おそらく、島の進路が変わって、サンマの群生地に突っ込んだのであろう」
 ワイバーンの傷をヒールで治しながら、エクス・シュペルティアが言った。
「よしよし、もう大丈夫ですよ」
 紫月唯斗たちに敵意がないどころか、味方だと理解したワイバーンがすりすりと紫月唯斗に頭をすりつけてきた。
「合流を急ぎませんと」
 紫月唯斗と一体になったままで、プラチナム・アイゼンシルトが進言した。
「ならば、いったん上空から……」
 紫月唯斗が言ったとき、ワイバーンが大きく羽ばたいて翼を広げてから、静かに身を伏した。
「乗れということでしょうか」
「そのようであるな。ちょうどいい、乗せてもらえばいいではないか」
 わずかに戸惑った紫月唯斗に、ルシェイメア・フローズンが言った。
「よし、じゃあ、ココたちを捜しに行きましょう」
 ワイバーンの背に飛び乗ると、紫月唯斗が叫んだ。
 
 

地下施設

 
 
「これは、中に大切な物がある匂いがプンプンしますね」
 カモフラージュが解けて顕わになった地下への入り口をのぞき込んでクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)が言った。今のところは、敵が出てくる気配はないようだ。
「どうするのだ、クロセルぅ」
 マナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)が訊ねる。
「当然、入ります」
 クロセル・ラインツァートが即答した。そこに墓穴があるならば、万難を排して入らなければなるまい。
「はははははは、敢為の遺跡荒らし、クロセル・ラインツァート、穴があったら入ります!」
 そう高らかに叫ぶなり、クロセル・ラインツァートが中へと飛び込んでいった。
「私たちも行くのである」
「しばし、お待ちください、マナ様」
 すぐに続こうとするマナ・ウィンスレットを、シャーミアン・ロウ(しゃーみあん・ろう)が引き止めた。
「まずは、あの馬鹿者がすべての罠に引っかかるのを待ってから、悠々と進むのが得策ではないかと」
 シャーミアン・ロウが容赦のないことを言う。だが、確かに、誰かが罠に引っかかるなり解除した後に悠々と進む方が楽だ。
「私たちはどうしましょうか」
 その場にいた白河 淋(しらかわ・りん)が、三船 敬一(みふね・けいいち)に聞いた。
「すぐに入ろう……と言いたいところだが、敵の本拠地に乗り込むには戦力不足というところだな」
 周囲を見回して、三船敬一が言った。さっき飛び込んでいったクロセル・ラインツァートを入れても、この場にいるのはたった六人だ。何度か妨害に遭っているのだから、この島に敵がいるのは間違いないだろう。だとしたら、そこにある施設はまず敵の物だと見た方がいい。
「こんなとき、連隊のメンバーがいてくれたら助かるんだが……」
 つぶやきつつ、三船敬一が悩んだ。彼らなら、事件を知れば絶対に飛んできそうなものだが、いかんせん、状況はあまりよろしくない。通信兵として両方のグループにパートナーをおいてやりとりができれば、合流も連携も思いのままだろう。だが、一切連絡をとる方法がない現状では、勝手にあてにするのは危険であった。確実でない戦力をあてにすることなど、ともすれば肝心な局面で戦力不足となって全滅するのが落ちだ。最初から戦力として数えなければ、もしも援軍として現れたときは状況を打破する要因ともなるだろう。
 セオリーとしては、準備を整えつつ斥候を出して、戦力が揃ったところで突入が得策である。
「可能な限り、間違いなく奴らは来る。だが、タイミングが分からない以上、無駄に時間を浪費するわけにも……」
「誰か来たようであるぞ」
 考えあぐむ三船敬一に、コンスタンティヌス・ドラガセス(こんすたんてぃぬす・どらがせす)が言った。見れば、清泉 北都(いずみ・ほくと)クナイ・アヤシ(くない・あやし)の乗ったワイバーンが、こちらへむかってやってくる。
「こんな所で何をやっているんだい? おお、その怪しい入り口は……、みんなとはぐれて酷い目に遭ったけれど、どうやらツキは失っていなかったみたいだねえ」
 上陸のときに流されて迷子になっていた清泉北都が、ニヤリとほくそ笑んだ。
「んじゃ、やりますか。みんなは中に入らないのかなぁ?」(V)
 清泉北都が、不思議そうに聞いた。
「馬鹿なら一人、もう入りましたよ」
 シャーミアン・ロウが、素っ気なく答える。
「それは大変だ。先を越されないうちに僕たちも行くよ、クナイ」
「お供させていただきます」
 何の躊躇もなく、清泉北都たちが中へと入っていった。
「おい……。しかたない、俺たちも斥候部隊として先行するぞ」
 そう言うと、三船敬一たちもその後を追った。
「そろそろいいですかしらね。では、マナ様、参りましょう」
「うん」
 男たちが先に入るのを確認して、シャーミアン・ロウたちも中へと入っていった。
 中は、古びているが、近代的な研究施設の通路という感じで整備されていた。はたして、いつの年代の物かは分からないが、この島を研究しようとしていた者が存在していたことは確かなようだ。さすがに昨日今日作られた物ではないようなので、オプシディアンたちがこの施設を再利用したのは間違いないと思っていいだろう。