リアクション
地下施設 「これは、中に大切な物がある匂いがプンプンしますね」 カモフラージュが解けて顕わになった地下への入り口をのぞき込んでクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)が言った。今のところは、敵が出てくる気配はないようだ。 「どうするのだ、クロセルぅ」 マナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)が訊ねる。 「当然、入ります」 クロセル・ラインツァートが即答した。そこに墓穴があるならば、万難を排して入らなければなるまい。 「はははははは、敢為の遺跡荒らし、クロセル・ラインツァート、穴があったら入ります!」 そう高らかに叫ぶなり、クロセル・ラインツァートが中へと飛び込んでいった。 「私たちも行くのである」 「しばし、お待ちください、マナ様」 すぐに続こうとするマナ・ウィンスレットを、シャーミアン・ロウ(しゃーみあん・ろう)が引き止めた。 「まずは、あの馬鹿者がすべての罠に引っかかるのを待ってから、悠々と進むのが得策ではないかと」 シャーミアン・ロウが容赦のないことを言う。だが、確かに、誰かが罠に引っかかるなり解除した後に悠々と進む方が楽だ。 「私たちはどうしましょうか」 その場にいた白河 淋(しらかわ・りん)が、三船 敬一(みふね・けいいち)に聞いた。 「すぐに入ろう……と言いたいところだが、敵の本拠地に乗り込むには戦力不足というところだな」 周囲を見回して、三船敬一が言った。さっき飛び込んでいったクロセル・ラインツァートを入れても、この場にいるのはたった六人だ。何度か妨害に遭っているのだから、この島に敵がいるのは間違いないだろう。だとしたら、そこにある施設はまず敵の物だと見た方がいい。 「こんなとき、連隊のメンバーがいてくれたら助かるんだが……」 つぶやきつつ、三船敬一が悩んだ。彼らなら、事件を知れば絶対に飛んできそうなものだが、いかんせん、状況はあまりよろしくない。通信兵として両方のグループにパートナーをおいてやりとりができれば、合流も連携も思いのままだろう。だが、一切連絡をとる方法がない現状では、勝手にあてにするのは危険であった。確実でない戦力をあてにすることなど、ともすれば肝心な局面で戦力不足となって全滅するのが落ちだ。最初から戦力として数えなければ、もしも援軍として現れたときは状況を打破する要因ともなるだろう。 セオリーとしては、準備を整えつつ斥候を出して、戦力が揃ったところで突入が得策である。 「可能な限り、間違いなく奴らは来る。だが、タイミングが分からない以上、無駄に時間を浪費するわけにも……」 「誰か来たようであるぞ」 考えあぐむ三船敬一に、コンスタンティヌス・ドラガセス(こんすたんてぃぬす・どらがせす)が言った。見れば、清泉 北都(いずみ・ほくと)とクナイ・アヤシ(くない・あやし)の乗ったワイバーンが、こちらへむかってやってくる。 「こんな所で何をやっているんだい? おお、その怪しい入り口は……、みんなとはぐれて酷い目に遭ったけれど、どうやらツキは失っていなかったみたいだねえ」 上陸のときに流されて迷子になっていた清泉北都が、ニヤリとほくそ笑んだ。 「んじゃ、やりますか。みんなは中に入らないのかなぁ?」(V) 清泉北都が、不思議そうに聞いた。 「馬鹿なら一人、もう入りましたよ」 シャーミアン・ロウが、素っ気なく答える。 「それは大変だ。先を越されないうちに僕たちも行くよ、クナイ」 「お供させていただきます」 何の躊躇もなく、清泉北都たちが中へと入っていった。 「おい……。しかたない、俺たちも斥候部隊として先行するぞ」 そう言うと、三船敬一たちもその後を追った。 「そろそろいいですかしらね。では、マナ様、参りましょう」 「うん」 男たちが先に入るのを確認して、シャーミアン・ロウたちも中へと入っていった。 中は、古びているが、近代的な研究施設の通路という感じで整備されていた。はたして、いつの年代の物かは分からないが、この島を研究しようとしていた者が存在していたことは確かなようだ。さすがに昨日今日作られた物ではないようなので、オプシディアンたちがこの施設を再利用したのは間違いないと思っていいだろう。 |
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