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フューチャー・ファインダーズ(第2回/全3回)

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フューチャー・ファインダーズ(第2回/全3回)

リアクション


【15】


 その頃、昌毅は北門近くにある見晴らしの塔にいた。
 塔からは第6地区とそして大神殿が見渡せる。厳重な警備体制の北門の向こう、大神殿をライフルスコープで見る。神殿前の広場も、大きなガラス窓から覗く中の広間も確認する事が出来た。絶好のスナイプポイントだ。
「ここならどこにメルキオールがいても鉛弾をぶち込むのに支障はねぇな」
『……あれはなんだ?』
 カスケードが言うほうを見ると、氷雪比翼で祥子が飛び去るのが見えた。
「……あ、消えた」
 光学迷彩を使ったのだろう、姿が見えなくなった。
 そこに塔の神官がやってきた。素敵な眺めでしょう? などと気さくに世間話をしてくる彼に、昌毅はひとつ質問してみた。
「……”イコンに代わる対空防衛”ですか?」
「今はもうイコンって使われてないだろ? だったら、防衛ってどうなってんのかなーって。ほら、万が一ここに地球の奴らが攻めて来たら大変だろ」
「グランツミレニアムの周辺海域には3つのメガフロート要塞がありますから、万に一つもここに地球の兵器が来ることはありませんが……例え攻め込まれても迎撃は可能です」
 実はこの第6地区を含め、大神殿の四方を囲む教会地区は都市も防衛の要でもあるという。今、昌毅がいるこの塔もそのひとつで、緊急時には高射砲塔になるらしい。教会地区にある塔は全てそういう迎撃装置を兼ねているそうだ。
(……ガーディアンの話が出るかと思ったけど出なかったな)
『むぅ……もしかしたらこの神官は知らんのかもしれんぞ』
 実際、彼はガーディアンのことは知らなかった。まだ試作品を造っている段階のガーディアンは、教団内部でも極秘のプロジェクトのひとつなのだ。
 その時眼下に、大きな装置が運ばれて行くのが見えた。装置は”時の聖堂”と呼ばれる立ち入り禁止の施設に入って行った。
「あれは……」
 その瞬間、記憶がフラッシュバックする。
 ここに来る前、大文字博士のいた研究室に同じものがあったような……。

 騎沙良詩穂と清風青白磁、セルフィーナ・クロスフィールドは”守護者の聖堂”への侵入に成功した。
 一応、立ち入り禁止施設となっているところだが、第8地区にいるようなクルセイダーが終始監視しているわけでもなかった。2、3人神官が門に常駐している程度で、目を盗んで忍び込むことは十分可能だ。
 聖堂の中は吹き抜けになっていて、地下に螺旋階段がどこまでも続く。はじめは神を護る戦士の壁画や彫像が聖堂を飾っているのだが、階段を下りていくと、だんだん無機質な金属壁に変化していった。
 円柱状の空洞の壁には窪みがあって、そこにデスクやモニター、端末が並べられ、研究室のようになっている。窪みはところどころにあった。
「……随分、変わったところじゃのぅ」
「あ、待って。誰かいる……」
 そこに居たのは、高天原鈿女博士だった。
「……誰かと思えば、あなた達も情報収集ですか」
 細女は、窪みにあった端末にインプロコンピューターを繋ぎ、情報を引き出しているところだった。以前の事件で教団はグランガクインを探していた。なら、この時代の彼らはグランガクインのデータを所有してるはず。そこからこの時代のグランガクインの情報を得られれば大きな力となる。
 ただ、出てきたものは期待に沿う内容ではなかった。それは”G計画”の企画書だった。ところどころ虫食いになっており、グランガクインの名前も形状もよくわかない状態で、ただ超兵器の開発資料ということしかわからない。
「……空振りかしら?」
 それも当然で、思い返せば2023年に現れたクルセイダーは超兵器の名前も形状も知らなかった。だからこそ、彼らは海京をしらみつぶしにしてグランガクインを探していたのである。
「……なんだろう、あれ?」
 詩穂が足元を指差した。
 そこは最下層、床一面に敷き詰められた硝子板の向こうに巨大な生き物が見える。それは七つの首を持つ巨大な白竜だった。竜は眠っているらしくピクリとも動かなかった。その首には輪が嵌められている、制御装置の一種だ。
「あれが”ガーディアン・ナンバーゼロ”……」
 詩穂は端末にアクセスし、ナンバーゼロの情報を漁った。
 ガーディアンはG計画にあったグランガクインのデータを参考に、機械的にではなく魔法的に生物的に融合させた結果、生まれた巨大生命体である。そのベースとなっているのはドラゴン種の遺伝子情報で、そこに各種モンスターの遺伝子を合わせることによって強大な戦闘能力の獲得に成功したのだ。
 一点、我々の知るガーディアンと違うのは、そこに”人間”の要素が入ってないということだ。海京に出現したガーディアンは人間をベースに他の生物の遺伝子情報を組み合わせていた。
「……でも、凄く強そう……」
「これは何かしら?」
 セルフィーナは画面に映ったナンバーゼロの全身図を指した。各頭部に光る点が表示されてある。これはナンバーゼロの肉体を支える核、絶えずこの核が肉体の再生を促すため、ナンバーゼロは死に至る事がないようだ。
「記録しておきましょう」
 セルフィーナは描画のフラワシを出現させ、画面の情報を正確に写し取った。
 その時、青白磁は他の窪みに並んでいる培養槽を発見した。ナンバーゼロ制作過程で生まれた実験体を収める培養槽のようだ。
「……む、この培養槽だけ空じゃ」
 6番の培養槽だけ空っぽだった。
 調べると、この培養槽の実験体は既に廃棄処分になったようだ。薬殺後、地下に廃棄したとある。死体の写真もある。
「……ん?」
 詩穂はその写真に違和感があった。
「どうしたんじゃ眉間にしわなんぞ寄せて、虫でもくちに入ったんか?」
「違うよ、この写真がなんか……」
「ガーディアンの実験体の”死体”じゃろ?」
 詩穂ははっとした。
「そうだよ。ガーディアンの死体なんて変なんだよ。だってガーディアンは死んだら、煙になって痕跡を残さず消えるんだから……」
「となるとこの実験体は……?」