天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

フューチャー・ファインダーズ(第3回/全3回)

リアクション公開中!

フューチャー・ファインダーズ(第3回/全3回)

リアクション


【15】


「……まずい。もうパイロットがいないぞ」
 撃墜されたグランガクインは海底に沈んでいた。
 そして同じように、パイロット全員、マットの上でダウンしていた。
「万事休すか……」
 大文字博士は頭を抱えた。
「……いや、まだ残っているぞ、熱い魂を持つ者が」
 そこにハーティオンと細女博士、ラブが現れた。
「大文字博士、ご無沙汰しております」
「ご無沙汰? 誰だね、君は?」
「?」
「……ハーティオン、この世界は私達のいた世界とは違うのよ」
 細女博士は言った。
「……そうなのか?」
「ええ、だからここにいる博士は、私達の知ってる博士ではないわ。私達と出会わなかった平行世界の大文字勇作博士よ」
「むぅ、何だか知らんが実にイイ身体をしている……」
 こっちの世界の博士もハーティオンを気に入ったらしく、ペタペタと勝手に触り出した。
「……って今はそんな場合ではない」
 ハーティオンはかぶりを振った。
「大文字博士、細女博士、頼む。私をグランガクインに繋いでほしい」
「な、なに?」
「私に”心”が目覚めたように、彼の心も目覚めさせたい!」

 ……プツッ

 ハーティオンの意識が、グランガクインの中枢に沈んだ。
 そこは数字と情報に埋め尽くされた海だった。
「聞いてくれグランガクイン。私はハーティオン。遙か過去から仲間達と共にやってきた。
 今、私達は最後にして最大の戦いを行おうとしている。心強い仲間達とこの時代の友たち……そして大文字博士と力を合わせて。
 だが、それだけの力を合わせてもなお足りないかもしれない。君の……君自身の力も必要なのだ!
 グランガクイン! 君にも判るはずだ! 鋼鉄の体の中に心は無くとも、人々がくれる熱きエネルギーが! 君の中に渦巻く人々の想いが!」
 電子の海は変わらず静かだった。
「答えてくれ、グランガクイン!」
 その時、どこからか機械が唸るような音が聞こえた。
 それからまわりの数字や情報がぐるぐると渦を巻いたのだ。
「グランガクイン!」
 ハーティオンは言った。
「今こそ共に戦おう、誰でもない君自身の意思で! 私たちの大切な世界を! 素晴らしき人々を守るために!」
 音は更に大きなった。
「ハーティオン!」
 細女博士の声で、目が覚めた。
 司令部は鳴動していた。電子の海で聞こえたあの唸るような音はこれだ。
「これは……!」
 誰もコクピットにいないのに、タマムスビドライブが起動している。
 30%、40%、50%……魂の力はみるみる増大していく。
「ほら、あんた達もいつまで寝てる気?」
 雅香はグロッキーのパイロット達から毛布を剥ぎ取った。
「今立ち上がらなくて、いつ立ち上がるの! 休むのは全てが終わってからにしなさい!」
 ルカルカも皆に呼びかける。
「今の皆の心の火は一人一人じゃ小さいかもしれない。けど二人集まれば炎に、大勢集まれば活火激発する! 皆もう一度起きて! ガクインと一緒に戦って!!」
 すると、和希とミュウが立ち上がった。
「あーもう、うるせぇぜ。お前らに説教されなくったって……」
「まだまだやれるぜ!」
 リオとフェルも立った。
「ボク達だって同じさ、心の炎は消えてないよ……!」
「……まだ戦える」
 レンも立った。
「決着はこの目で見届ける。それがこの戦いに参加したものの使命だ……!」
 桂輔、煉、アルマも立ち上がった。
「……って言うか、全然活躍してないっつーの! もう一回だ! もう一回!」
「俺なんてコクピットに座っただけだぞ、まだ! 今度こそ見せてやるよ、俺のマジを!」
「がんばります」
 8人の魂がタマムスビドライブを介して、グランガクインの力となる。
 90%……120%……180%……!! 無限に力が湧き上がる!!
 ちなみに、ブルタには寝ててもらった。

 海の底からグランガクインが現れた。
 腕を組んで仁王立ち、堂々たる様でその目を光らせた。
 ナンバーゼロはイコン隊と交戦しているところだ。
 その中にあって一機、戦闘空域のぎりぎりのところに、ジェファルコン特務仕様の姿があった。攻めるでもなく守るでもなく逃げるでもなく、チャンスを待っている。
 メインパイロットは生駒、サブパイロットはジョージ・ピテクス(じょーじ・ぴてくす)だ。
 生駒のモニターには、友軍イコンの名前が一覧になって表示されていた。その内、バイパーゼロにだけハナマルがついていた。
「みんな、押さないもんだねぇ」
 この一覧、各機に生駒が勝手に付けたドクロスイッチの使用状況を知らせるものだ。
「そんな得体の知れないものスルーするに限るわ!」
 ジョージは言った。
「でも良いこと起こるんだよ?」
「……そう思えんが」
「例えば、ゴスホーク。これはスゴイよ、押すと機体の色がショッキングピンクに!」
「……何のために?」
「いやビックリするかなと思って……」
 ちなみに、他の機体にはこんなものが組み込まれていた。

 アガートラーム ピンポーンって鳴る。
 バイラヴァ ロケットパンチ。
 黄山  芳香剤のいい匂いがする。
 フィーニクス・NX/F 明日の天気を教えてくれる。
 ゾフィエル ホットコーヒーが出てくる。
 ジェファルコン モニターにスクリーンセーバーが起動する。

「なんという糞ラインナップ……」

「レーザービット展開!」
 ゴスホークは、ナンバーゼロの向かって右の頭を目標に定めた。
 射出したビットで集中砲火を浴びせる。
「うおおおおおっ!!」
 途切れることなくファイナルイコンソードを一閃。
 ブシュウウウ!! とゼロの頭から紫の煙が噴き上がった。
 アガートラームもそこに続いた。
「どんな怪物だろうが、どんな再生力だろうが……撃ち貫くだけだっ!!」
 リミッターを解除して、ドージェの鉄拳を再生の隙を与えない勢いで叩き込む。
「あと少し!」
 ゼロの頭に亀裂が走った。紫の煙が噴き上がる。
「もう一発……!」
 しかしその瞬間、敵は頭を鞭のように振り回して、周囲のイコンを薙ぎ払った。
「……くっ!」
「うわああああああああああっ!!」
「柊! 榊!」
 唯斗は叫んだ。
「よくも……! 次はこの魂剛が相手になってやる……!!」
「なぁ唯斗唯斗」
 エクスが言った。
「ちょっと待って。今、怒りに震えてるから」
「なぁなぁ唯斗ぉー」
「う、うるさいな。なんだよ?」
「コクピットにドクロマークのスイッチがあるんだが、これ何だ?」
「はぁ? そんなもの付いてるわけないだろ?」
「でも現に……」
 ポチッと押してみた。
 その途端、魂剛からもくもくと煙が上がった。
「ぬあー? 何故急に煙を噴く!?」
「ど、ど、ど、どうした! どこかに被弾でもしたのか!」
「ええい、唯斗! 一旦下がれ!」
「え……? ああ、わかったよ。くそ! これからって時に!」
 魂剛は退いた。
 煙が上がったことで撃墜されたのだと思ったのか、ゼロもわざわざ追っては来なかった。
「……む? 煙が出ただけで機体に異常は無いとな?」
「はぁ?」
「ま、紛らわしいモノを!!」
「誰だよ、こんな無駄なもんつけたのは……でも、待てよ……使えるかもな」
 実際、ゼロに”撃墜された機体”と認識されたのだ。
 魂剛は煙を上げながらフラフラと、今にも墜落しそうな機体を装って、攻撃を回避しつつ超高高度まで上昇、ゼロの真上をとった。
 それからグランガクインに通信を送る。
「こちら魂剛! 数秒でいい、奴の動きを止めてくれ! 特別な一撃を喰らわせる!」